企業のマーケティング活動の関係性構築において、財の消費を促すコミュニティの創造と強化の重要性が高まっている。コミュニティにおける成員間の相互作用が財の消費を促進させることは多くの研究で検証されてきたものの、そうしたコミュニティの規定要因は社会的コミュニティと心理的コミュニティという、コミュニティの種類によって異なる理由がこれまでに明らかになっていなかった。本研究では社会心理学における知見から、成員間の相互依存性の高い社会的コミュニティにおいては一般的互酬性仮説に基づく互恵性期待手がかりによってコミュニティ意識が生起し、成員間の相互依存性の低い心理的コミュニティにおいては社会的アイデンティティ理論に基づく外集団脅威手がかりに基づきコミュニティ意識が形成することを仮説として設定し、実証実験によりそれらを検証した。その結果、コミュニティの性質によってコミュニティ意識の形成過程が異なることが、限定的ではありながらも実証された。
消費者の記憶を説明するための最も主要な理論の1つとして知られているのが、ネットワーク理論である。この理論に依拠した多数の先行研究は、焦点広告に関する消費者の記憶に対して競合広告は負の効果を有するということを見いだしてきたのに対して、近年に発表された先行研究は、焦点広告に関する消費者の記憶に対して競合広告は正の効果を有するということを見いだした。そこで本研究は、ネットワーク理論によって負の効果のみならず正の効果をも説明できるように、理論の拡張を試みる。より具体的にいえば、まず、記憶課題の容易性に着目することによって、ネットワーク理論に改良を施す。そのうえで、負の効果あるいは正の効果が発生する条件をそれぞれ識別した仮説を導出し、その仮説を経験的にテストする。
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