接着歯学
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15 巻, 3 号
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  • 山下 敦
    1997 年 15 巻 3 号 p. 201-210
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    歯科医療の終極の目標は「健全な歯と歯列を保全し国民の全身健康に寄与することにある」とされる。その為最近では8020を掲げている。しかし、現実は8005とその効果は至って貧弱である。効果が上がらぬ理由は種々あるが、疾病の原因の排除やコントロールすることなく、早期発見、早期治療を旗印に治療歯の数を増やす治療志向中心の対症療法が行われ、学部教育は予防が弱体のまま、対症療法を基盤にした教育がなされ、さらに出来高払い制度の行政はそれに拍車を掛けていることが主因と考えられる。医科大学では徐々にカリキュラムの改正や講座制の改革が行われている。このような現状にあって、真に国民の健康に寄与するためには学部教育の改変こそが必要と考え、POSを基盤にした教育に改革し、その内容も健全な歯の保全と傷ついた歯の延命に役立てることのできる接着技法を取り入れた新しいカリキュラムを試みている。
  • 早川 徹, 菊竹 一代, 根本 君也
    1997 年 15 巻 3 号 p. 211-220
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    カルボン酸系モノマーである4-メタクリロイロキシフタノレ酸 (4-MPA) のセルフエッチングプライマーとしての有効性について調べた。
    4-MPAをエタノール、35%エタノール水溶液、ジメチノレスルホキシド、35%ジメチルスルホキシド水溶液、または35%HEMA水溶液に溶解して研磨象牙質に作用させ、37℃水中一日後の引張接着強さを測定したところ、35%エタノール水溶液の方がエタノールより、また、35%ジメチルスルポキシド水溶液の方がジメチルスノレポキシドより接着性向上に効果があることがわかった。また、35%HEMA水溶液に溶解した時が最も良好な接着強さが得られた。
    次に溶媒として35%HEMA水溶液を用いて、4-MPAを4-METAと比較した。4-METAは処理時問60秒で4-MPAでは処理時間120秒で良好な接着強さが得られた。
  • 井上 勇介, 福島 忠男, 鶴田 勝久, 宮崎 光治
    1997 年 15 巻 3 号 p. 221-228
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    近年、光重合型コンポジットレジンの接着性の向上や、接着操作の簡易化を目的としたセルフエッチングプライマーを含む接着システムが開発されてきた。本研究では、2-acry-10yloxyethyl hydrogen maleate (2AEM) を含有する試作セルフエッチングプライマーが光重合型コンポジットレジンの研磨エナメル質、象牙質への接着性に与える影響について検討した。
    試作セルフエッチングプライマーは光重合型コンポジットレジンの研磨エナメル質、象牙質への接着強さを有意に向上させたが (p<0.05)、その効果はセルフエッチングプライマー中のモノマーの濃度やボンディング剤の種類によって異なっていた。象牙質においては、PBでは、15.4±2.8~21.4±3.9MPa、MPでは6.5±2.9~12.0±2.3MPaの接着強さを示した。しかし、処理象牙質を水洗すると処理効果は減少した。エナメル質においては、PBでは13.5±3.1~22.7±3.OMPa、MPでは13.4±4.0~21.4±4.OMPaの接着強さを示し、水洗による接着強さの低下は認められなかった。これらの結果から、試作セルフエッチングプライマーは光重合型コンポジットレジンの研磨エナメル質、象牙質への接着強さの向上に有効に働くことが判明した。
  • 加藤 喜郎
    1997 年 15 巻 3 号 p. 229-239
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究では、接着性レジン系材料のみを使って直接歯髄覆軍して良好な転帰をたどった場合の露髄創面の治癒過程を光学顕微鏡を使って病理組織学的にまとめたものである。
    すなわち、臨床条件が整った状態で接着性レジン系材料によって直接歯髄覆軍を行うと歯髄は安静な環境下に置かれ、露髄部の修復性変化を開始する。
    病理組織学的には、炎症の消退、基質形成、石灰化、象牙質橋の形成の順序で治癒が進行する。これらの変化は露髄の周囲から始まって中央部に進展するがしばしばそれより離れた部位に小点状や島状として発現し、日時の経過に伴って相互に連結し発展して完全象牙質橋を形成し治癒する。
  • 中林 宣男
    1997 年 15 巻 3 号 p. 240
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
  • 嶺崎 良人, 中島 由佳, 南 弘之, 梶原 浩忠, 鬼塚 雅, 田中 卓男
    1997 年 15 巻 3 号 p. 241-246
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    従来のクラウン・ブリッジ修復では、修復物の維持力確保が優先するあまり、歯質の保存、保護に対する配慮が不足しがちであったことは否めない。クラウン・ブリッジ修復時に健全な歯質をできるだけ保存することが、二次騙蝕の抑制や歯髄保護などにきわめて重要とされ、この目的にかなった修復物として、歯質や修復材料に対する接着技法を応用して装着を行う、接着性補綴装置が各種考案されている。
    本稿では、健全歯を対象にすることが多いブリッジ症例における修復の進め方について、歯質保存の立場から考えてみた。さらに、接着ブリッジや接着嵌合ブリッジ治療における歯質保存の状況を述べるとともに、歯質の削除量をさらに少なくすることが可能と考えられている接着ポンテック・ブリッジについても言及した。
  • 長谷川 篤司, 伊藤 和雄, 久光 久, 和久本 貞雄
    1997 年 15 巻 3 号 p. 247-254
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    臨床的に繁用されている4種歯冠修復法の窩洞形成時あるいは支台歯形成時の歯質切削量を検討するために、人工歯上顎中切歯に陶材焼付前装鋳造冠 (メタルボンドクラウン: MB) 支台およびポーセレンラミネートベニア (PLV) 窩洞を、人工歯上顎第2小臼歯にMODメタルインレー窩洞 (MI) および全部鋳造冠支台 (FCC) を形成し、形成前後の重量から歯質犠牲量を計量した。その結果、各修復法のために切削された歯質はメタルボンドクラウンで52.1体積%と、ラミネートベニア14.9体積%の3.5倍、さらに全部鋳造冠では31.3体積%と、 MODインレー窩洞の13.7体積%の2.3倍であった。すなわち、これら4種歯冠修復法のうちでも、全部被覆または審美性やクリアランス確保を優先する支台歯形成では歯冠の半分の体積を超えるような大量の歯質が犠牲となることが明らかになった。これらの修復法は歯質切削量を減少させ、生体保護を最優先するという接着修復の目的にかなった修復法とは考えられず、接着性材料を活用した、より歯質切削量の軽減を目的とする新しい修復法の確立が急務である。
  • エナメル質残存状態との関係
    山口 泰彦, 内山 洋一
    1997 年 15 巻 3 号 p. 255-261
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    クラウン辺縁部のエナメル質残存の程度と二次齲蝕の進行形態の関連性を明らかにするため、ヒト下顎小臼歯の健全抜去歯にリン酸亜鉛セメントでクラウンを合着した後、乳酸ゲラチン (pH4) を用いて人工二次齲蝕を作製し観察を行なった。
    その結果、 1) 辺縁付近のエナメル質を全て切削し、セメント質または象牙質に辺縁を設定した場合には、合着用セメントの溶出部位や辺縁漏洩部に脱灰像が認められた。 2) 辺縁および支台歯形成面がエナメル質の場合には合着用セメントが溶出し形成面が露出しても辺縁付近の一部を除いて明らかな脱灰像は認められなかった。3) 辺縁はエナメル質であるが、セメント溶出により象牙質形成面の一部が露出した場合には、露出象牙質形成面に相当する部分に脱灰像がみられた。これらの特徴から、エナメル質の削除量を減らし、可及的に辺縁付近のエナメル質を保存することは二次歯齲蝕の発生、あるいは進行の防止のために有効であることが示唆された。
  • 佐藤 亨, 梅原 一浩, 中澤 章, 腰原 好
    1997 年 15 巻 3 号 p. 262-272
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    接着歯学の進歩により歯質の削去量を最小限にした歯冠補綴法が日常臨床において行われている。この際なるべくエナメルへの接着を用いた方が得策であり、エナメルに限局した支台歯形形成を行うよう努力すべきと考える。
    そこで上下顎前歯の支台歯形成に遺漏がないよう、従来の唇側エナメルの厚さの検討結果に加え、前歯舌面のエナメルの厚さについても詳細に検討をおこなった結果、以下の結論を得た。
    1. 上下顎前歯のエナメルの厚さは、唇面において歯頚部0.2mm~0.5mm、中央部0.5mm~1. 2mm、切端部0.9mm~1.6mm、舌面において歯頚部0.1mm~0.4mm、中央部0.4mm~1.0mm、切端部0.4mm~1.0mmであった。
    2. 上下顎前歯の唇面、舌面のエナメルの厚さを比較すると、唇面より舌面のほうが薄い結果であった。
    3. 歯冠の中央部から切端側にかけては、唇面では中央、隅角、隣接面のエナメルの厚さはほとんど変わらない傾向であった。しかし舌面では中央部から切端側にかけては、舌面中央より隅角のエナメルのほうが厚く、また隅角より隣接面のエナメルのほうが厚くなる傾向が認められた。
    4. 舌面のエナメルの厚さにおいて上顎犬歯は他の前歯と異なり舌面中央部が厚くなる傾向が認められた。
  • 高橋 英登, 遠山 佳之, 今村 健, 新里 朗, 山瀬 勝, 酒井 利幸, 砂田 徳保, 岩部 弘昌, 島田 勝之
    1997 年 15 巻 3 号 p. 273-288
    発行日: 1997/09/20
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    接着歯学の進歩により、我々は支台歯の削減量を大幅に減少させることが可能となった。今回は、その例としてレジンダイレクトボンドブリッジと新しいポーセレンジャケットクラウン等を紹介する。
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