接着歯学
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26 巻, 2 号
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  • 杉崎 順平, 森上 誠, 宇野 滋, 山田 敏元
    2008 年 26 巻 2 号 p. 77-86
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジンの歯質との接合界面の様相は, ボンディングシステムによって異なる. 今回, サイブロンデンタルから市販されている比較的成分の似ている2種のボンディングシステムOptiBond Solo PlusTM (OS), Opti-Bond All-In-One® (OA) を用いて, その歯質との接合界面を観察し比較検討した. すなわち, ヒト新鮮抜去臼歯歯冠部の健全エナメル質, 象牙質, う蝕除去後の象牙質を被着面として接着試片を作製し, 従来から行っている方法によって, アルゴンイオンエッチング後にFE-SEMを用いてレジン-歯質界面を観察した. その結果, OS, OAの2種のシステムはともに歯質との接合状態は良好であったが, その界面の様相, 特にその脱灰効果の面で差が認められた.OSにおいて象牙質表層に約1μmの幅でハイブリッド層が観察されたのに対し, OAではその幅は狭く, 0.2-0.3μmであった. しかしOAのアドヒーシブにおいては, 三元系溶媒システムの使用により短時間に効果的に歯質を処理することによって, 特にエナメル質への接着性を向上させている可能性が示唆された.
  • 吉川 孝子, 高橋 英和, 田上 順次
    2008 年 26 巻 2 号 p. 87-91
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    口腔領域の悪性腫瘍に対して放射線治療を行うと“radiation caries”が生じる. しかしながら, 象牙質に対する放射線照射の影響については明らかではない. そこで本研究は, 放射線照射がコンポジットレジン修復物の辺縁封鎖性と窩壁適合性に及ぼす影響について評価検討した. ウシ下顎永久切歯の一方の群に, コバルト60照射装置を用いて60Gyのガンマ線を照射した後, 唇側面を研削し平坦面を作製した. 直径3mm, 深さ1.5mm (C-factor=3) の円柱状の窩洞を象牙質平坦面に形成した. Clearfil Mega BondとワンステップボンディングシステムであるTokuyamaBond Force, あるいはClearfil tri-S Bondの接着システムを使用して, ハイブリッドレジンであるClearfil AP-XのシェードA3を填塞した. 光照射器を用い, 出力600mW/cm2で40秒間光照射を行い重合硬化させた. 37℃暗所水中に24時間保管後の試料と, その後, 5,000回のサーマルストレスを与えた試料の窩縁と半切面の窩壁に色素浸透試験を行った. これらの結果について, Kruskal-Wallis testとMann-Whitney U testで統計処理を行った. 60Gyのガンマ線照射は, サーマルストレス前後のどちらにおいても, コンポジットレジン修復物の窩壁適合性に影響を及ぼさなかった. しかしながら, ワンステップボンディングシステムは, ツーステップボンディングシステムのClearfilMega Bondと比較して, 健全象牙質に対しては有意に低い窩壁適合性を示した.
  • 西谷 佳浩, 高橋 圭, 林 幸則, 星加 知宏, 堀川 元, 中田 貴, 田中 久美子, 佐野 英彦, 吉山 昌宏
    2008 年 26 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究では, 象牙質接着におけるレジンの親水性の影響を解明することを目的として, 溶媒中のHEMAの配合比率が異なるセルフエッチングプライミングシステムを調製し, 接着システム中の親水性モノマーの配合比率が象牙質接着に及ぼす影響について検討した. コンポジットレジンを築盛後, 砂時計型の切片を作製し, 24時間あるいは6カ月後に微小引張り接着試験の試料とした. 24時間後の引張り接着強さは, レジンの親水性モノマーの配合比率が高い場合に, 高い値であった. 一方で, 6カ月後の最も低い値もまた親水性モノマーの配合比率が高い場合であった. 上述のプライマーおよびボンドのレジン硬化体を用いた吸水量および溶解量の測定結果から, 吸水量とHEMAの配合比率には強い相関を認めた. 溶解量の測定結果についても同様の結果が得られた.
    以上のことから, レジン中の親水性モノマーの配合比率の増加は短期間の接着強さには効果的であるものの, 親水性モノマーの配合比率が高いレジンは, 6カ月後には重合後の吸水によって重合体が脆弱化し, 接着強さを低下させる可能性が示唆された.
  • 高橋 圭, 西谷 佳浩, 星加 知宏, 田中 久美子, 吉山 昌宏
    2008 年 26 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    近年市販されたワンボトルボンディング材“アブソリュート2”(デンツプライ三金) が, 水分のある歯面に用いながらセルフエッチング機能をもつ特殊なシステムであることに着目し, 人工唾液およびウシ血清によって汚染された歯質に対する接着性について検討を行った. 微小引張り接着試験にはヒト抜去健全小臼歯を用い, 歯頸部頬側面を耐水研磨紙#600まで研磨し, 平坦なエナメル質および象牙質面を被着面とした. また, 歯面に20μlの人工唾液およびウシ血清を滴下し20秒間静止したものをそれぞれの汚染歯質とし, 蒸留水を用いた場合をコントロールとした. さらに, 接着試料体の破断面ならびに接着界面および歯面処理被着面について微細構造観察を行った.
    すべての群間において接着強さに有意差はなく, さらに接着界面の形態的な違いも認めなかった. 破断面形態は, エナメル質ではレジン凝集破壊と混合破壊が, 象牙質では象牙質凝集破壊と混合破壊が主に観察された.
    以上のことから, エナメル質および象牙質いずれの場合も24時間後のアブソリュート2の接着強さは, 人工唾液およびウシ血清による汚染の影響を受けにくく, 汚染環境下でも安定した接着性が期待できることが示唆された.
  • 阿保 備子, 宇野 滋, 山田 敏元, 田中 久美子, 高橋 圭, 西谷 佳浩, 吉山 昌宏
    2008 年 26 巻 2 号 p. 106-111
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    セルフアドヒーシブルーティングセメントの, セラミックスとの接着強さに及ぼすセメントの練和方法の影響に関して比較検討した.
    モールドを用いて作製したレジンコアブロック (Clearm DC Core Automix) と, セラミックブロック (Vitablocs Mark II) の面を600番の耐水研磨紙にて研削し被着面とした. これらを, 3種セルフアドヒーシブルーティングセメント (Smartcem,: Maxcem,: G-CEM) をメーカー指示に従って用いて接着させた. セメントの練和は, ミキシングチップまたは自動練和器を用いた自動練和と, 練板紙とセメントスパチュラを用いた手練りの2つの方法で行った. また, セメントの厚みは一方の被着面にマスキングテープを置き, 50μmに規定した. 試料を37℃水中に24時間保存後1.0×1.0mm2の棒状に切り出し, 微小引張り接着強さを測定した. 試料数は各グループ10試料とし, 統計処理にはTukeyのHSD検定を用いた.
    その結果, コアレジンとセラミックスとの接着において3種セルフアドヒーシブルーティングセメントの練和方法による差はみられなかった (p>0.05).
  • 井手 孝子, 柳田 廣明, 久松 徳子, 田上 直美, 村田 比呂司, 松村 英雄
    2008 年 26 巻 2 号 p. 112-117
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    歯冠用ガラスファイバーと4種類の間接修復用コンポジットレジンのせん断接着強さを比較検討した. 歯冠用ガラスファイバーとしてエステニアC&BEGファイバーを, 間接修復用コンポジットレジンとしてエステニアC&B, セラマージュ, ニューメタカラーインフィス, パールエステの4種を用いた. 250μm厚のEGファイバーをサンドブラスト後シラン処理し, ボンディング剤を塗布して間接修復用コンポジットレジンを接着させ, メーカー指定の方法にて重合した. 試験片は接着後24時間水中浸漬後 (サーマルサイクリング0回), 半数にサーマルサイクリングを10,000回負荷して, せん断接着試験 (ISO 11405) を行い, Tukey HSDおよびMann-Whitney U検定にて比較した. その結果, サーマルサイクリング前では, エステニアC&Bとパールエステが有意に高い接着強さを示した. サーマルサイクリング後では, エステニアC&B, セラマージュ, パールエステ間に統計的有意差は認められなかった. サーマルサイクリングの有無にかかわらず, ニューメタカラーインフィスは最も低い接着強さを示した. 歯冠用ガラスファイバーと間接修復用コンポジットレジンの最適な組み合わせには, コンポジットレジンの組成が影響していると思われた.
  • 宇野 滋, 森上 誠, 杉崎 順平, 山田 敏元
    2008 年 26 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    同一メーカーの3世代のレジンボンディング材の接着性を, 接着界面のナノリーケージの観点から検討した.トクヤマデンタルのMacbond II (MB), One-up Bond F PIus (OB) あるいはBond Force (BF) を使用し, ヒト抜去単根歯の歯頸部窩洞を修復した.これらの歯に5,000回のサーマルサイクリング (TC, 5~55℃) を施した後, 硝酸銀溶液, 次いで現像液に浸漬した.歯を半切, 包埋後, 接着界面におけるナノリーケージをSEMにて観察した.MBではTCの有無にかかわらず歯肉側窩縁および窩壁部の接着界面においてナノリーケージが生じ, OBでは歯肉側窩縁部にわずかに銀の沈着が生じていた.BFにおいてはTCの有無にかかわらずナノリーケージは発生せず, 窩壁との接着は強固だった.また, 界面にいわゆる含浸層は認められなかった.
    3世代中最後発のBFでは, リン酸エステル系モノマーを1分子中に複数のリン酸基や重合基をもつようにしたSRモノマーを採用し, 接着性が向上したものと思われる.同一メーカーの複数世代のレジンボンディング材を比較することにより, 接着の技術革新を知ることができた.
  • 疋田 一洋, 舞田 健夫, 川上 智史, 遠藤 一彦, 大野 弘機, 伊藤 修一, 斎藤 隆史
    2008 年 26 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, CAD/CAM用ハイブリッドレジンブロックに対する接着性レジンセメントの接着力を微小引張り試験により評価を行うことである.試作のハイブリッドレジンブロック (開発コード: AGB-01, ジーシー) から作製した2つの試験片同士を, 3種類の接着性レジンセメント (リンクマックス: LM, クリアフィルエステティックセメント: EC, レジセム: RC) とそれに付属するセラミック用プライマーを用いて接着した.接着した試験片は, 微小引張り試, 験用の試料に切断し, 37℃水中で24時間保管した後, サーマルサイクル0回, 5,000回後に引張り試験を行った.その結果, サーマルサイクル0回における引張り強さは, LMとRCがECよりも有意に大きな値を示したが, サーマルサイクル前後のデータには有意差は認められなかった.ハイブリッドレジンブロックはシリカフィラーが高濃度に含有されており, セラミック用プライマーに含有されるシランカップリング剤がシリカフィラーに作用したものと考えられた.
  • 入江 正郎, 鈴木 一臣
    2008 年 26 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    最近市販のSelf-adhesive resin cement (SARCと表記) 3種 (RelyX Unicem Aplicap: スリーエムヘルスケア, G-Cem Capsule: ジーシー, Clearfil SA Luting: クラレメディカル) と, 接着性レジンセメント (ARCと表記) 2種 (ResiCem: 松風, Clearfil Esthetic Cement: クラレメディカル) について, ジルコニアとアルミナに対する接着性を検討するため, 光照射直後と1日間水中浸漬後のせん断接着強さ, セメント自身の曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した.
    その結果, ジルコニアに対してはSARCおよびARCともに直後と比較して1日後のほうが有意に高い値を示した.一方, アルミナに対してSARCは直後と比較して1日後のほうが有意に高い値を示したが, ARCは有意差がみられなかった.しかし, ジルコニアに対する値とアルミナに対する値を比較すると, 1日後ではまったく有意な差がなかった.曲げ強さおよび曲げ弾性率に関しては, RelyX Unicem Aplicap以外1日後のほうが直後と比較してどちらも有意に優れた値を示した.
  • 森上 誠, 杉崎 順平, 宇野 滋, 山田 敏元
    2008 年 26 巻 2 号 p. 136-140
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    1ボトル1ステップ型レジンボンディング材Bond ForceTR (以下Bond Force) がトクヤマデンタルにより開発された.本研究の目的は, Bond Forceと同社のコンポジットレジンEsteliteΣ を併用した場合の臨床経過について, ADAのガイドラインに従い修復後18カ月まで評価することである.う蝕のない歯頸部欠損に対して, 必要最小限の切削によりV型窩洞を形成し, 製造者指示に従ってBond Force処理した後EsteliteΣを充填した.39名の患者 (平均年齢54.6歳 (SD: 15.0)) に総計39症例の修復が行われた.評価項目は, 脱落・辺縁部着色・辺縁部適合性・表面性状・摩耗・辺縁部破折・体部破折・二次う蝕・自発痛・冷水痛・温水痛・咬合痛・歯肉刺激・軟組織刺激である.すべての症例について, 修復直後・6カ月後・12カ月後・18カ月後に評価を行った.すべての症例で窩洞は象牙質窩洞であり, 修復の行われた時点で患歯は生活歯であった.術前症状として冷水痛が3症例, 温水痛が2症例, 咬合痛が1症例に認められた.すべての症例が修復後18カ月までの各評価項目において臨床的に満足な結果を示した.今回の臨床的研究より, 18カ月までの観察期間ではBond ForceとEsteliteΣ は歯頸部窩洞のための優れた修復システムであることが示され, Kaplan-Meierの生存率は1.0であった.
  • 杉崎 順平, 森上 誠, 宇野 滋, 山田 敏元
    2008 年 26 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究では, ワンボトルワンステップタイプのボンディングシステムであるClearfil Tri-S Bond (R) と, Clearfil Majestyを用いたコンポジットレジン修復物の短期的な臨床経過の観察を行った.3名の術者によって, 30名の被験者に対し30本のV級または楔状欠損窩洞が歯質を極力保存するように形成され, 本システムを用いて修復が施された.ベースラインとして, 修復直後にADAの評価基準に基づいて臨床的に評価された修復物は, その後18カ月後まで定期的にリコールされ, 同様に評価が行われた.その結果, 18カ月後までの期間すべての修復物はAlphaと評価され, BravoまたはCharlieと評価されたものは1例もなかった.本システムにおけるKaplan-Meierの生存率は1.00であり, 18カ月後までの短期的臨床経過は良好であることが判明した.接着性能の向上した最近の各ボンディングシステムにおいては臨床成績にほとんど差が認められず, むしろテクニカルエラーが予後を左右する大きな要因となることが示唆された.
  • 中沖 靖子, 神島 奈穂子, 池田 考績, 井上 哲, 佐野 英彦
    2008 年 26 巻 2 号 p. 148-153
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    シングルステップボンディングシステムIMB-3 (IM) およびG-Bond (GB) の象牙質に対する接着強さを, 2種のコンポジットレジンAP-X (AP) およびEsteliteΣ (ES) を充填材料として, 微小引張り接着試験を用いて比較検討した.ヒト抜去大臼歯の歯軸に垂直な象牙質平坦面を, レギュラータイプのダイヤモンドポイントにより研削, 各接着材料を取扱説明書どおりに塗布し, それぞれのコンポジットレジンを接着した.37℃ 水中24時間保管後, これら4グループの接着試料は1×1mmのスティック状にトリミングされ, クロスヘッドスピード1.0mm/minにて微小引張り接着試験に供された.データはANOVAおよびGames/Howell法 (p<0.05) により統計処理された.本実験では, IMを異なるコンポジットレジンを用いて象牙質に接着した場合, ESを用いたグループがAPグループより有意に高い接着強さを示した.GBではコンポジットレジンESとAPをそれぞれ用いた場合, 接着強さに有意な差はみられなかった.これらの相違を引き起こす要因としては, コンポジットレジンの機械的性質の違いの影響が示唆された.
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