試作接着システム(LLB-2,トクヤマデンタル)の初期およびサーマルサイクリング負荷後の歯質に対する接着強
さを測定するとともに,その破断面を観察することによって,基本的接着性能について検討を加えた.ウシ歯エナメ
ル質および象牙質に対して,製造者指示条件に従って歯面処理を行った後,LLB-2 専用のフロアブルレジンを填塞,
光照射を行い,これを接着試片とした.これらの接着試片を,37℃の精製水中に10 分あるいは24 時間保管した後,
剪断接着強さを測定した.また,24 時間水中保管後にサーマルサイクリングを10,000 回負荷した接着試片について
も測定を行うとともに,測定後の破断面についてFE-SEM 観察を行った.その結果,LLB-2 の10 分および24 時間後
の接着強さは,エナメル質で17.9 ~ 20.1 MPa および象牙質で14.8 ~ 16.4 MPa であり,良好な接着強さを示した.
一方,サーマルサイクリングの負荷によって,いずれの被着面においても接着強さが低下する傾向を示した.また,
接着試験後の破断面のSEM 観察からは,10 分および24 時間後で,エナメル質および象牙質ともにアドヒーシブと
歯質との接合界面付近における混合破壊を示したのに対し,サーマルサイクリング負荷後では混合破壊の割合が減少した.本実験の結果から,試作接着システムLLB-2 は,エナメル質および象牙質ともに,安定した接着性を示すことが明らかとなった.
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