水酸化アルミニウム粒子充填アクリル系コンポジットの強靭化を目的とし,シリカ充填系で効果の見られた反応性液状ゴムによる変性を試みたが期待された結果は得られなかった。これは、破壊界面のSEM観察及びSEM-EDX元素分析による解析結果から,該コンポジットの破壊が,水酸化アルミニウム粒子内部の壁開により支配されていることが原因であると考えられた。そこで,水酸化アルミニウム粒子の表面にマトリックス樹脂との親和性の高い弾性層を導入し,破壊エネルギーを吸収する保護層とすれば,該コンポジットが効果的に強靭化されると考え添加剤の設計及び合成を検討した。その結果、末端にカルボキシル基を有し、さらに分子内にソフトセグメントを有する不飽和ポリエステル樹脂が該コンポジットの耐衝撃強度を効率良く向上させることを見出した。本添加剤による強靭化機構は含有するカルボキシル基が,塩基性である水酸化アルミニウム粒子表面に選択的に吸着し、コンポジットの加熱硬化時に架橋し弾性層を形成すると同時にアクリル樹脂と共重合しその弾性層をマトリックス樹脂に強固に接着し破壊界面をマトリックス樹脂内部に移動したことによるものと考えられる。本報では人造大理石の原料として広く使用されている水酸化アルミニウムを充填したアクリル系コンポジットを強靭化するための基礎概念及び効率的な手段を提案する。
抄録全体を表示