歯科用コンポジットレジンは,歯科修復用材料として厳しい環境の中で重要な役割りを果している。歯の唆合面に充填されたコンポジットレジンは,毎日の岨噌力に耐えるために,高い圧縮強さや優れた耐摩耗性が要求するばかりか,歯質との優れた接着性,シール性をも要求される。したがって,コンポジットレジンの接着強さに関する研究は数多く報告されているが,衝撃試験による接着強さの検討についてはほとんど行なわれていない。またコンポジットレジンの接着材は,歯軸に向かって斜め下方に走行するエナメル小柱内や象牙細管内にレジンタッグ(長さ:5~100m)として形成されるが,そのレジンタッグが接着強さに及ぼす。効果について検討した報告は見当たらない。本研究では,被着材として牛歯エナメル質と象牙質を対象に,衝撃方向を変化させたせん断接着衝撃試験により,コンポジットレジンが形成するレジンタッグの効果について検討した。その結果,コンポジットレジンのエナメル質に対する衝撃接着強さは,エナメル小柱に形成されたレジンタッグの効果によって,負荷方向が歯根方向である場合のせん断接着強さは,もう一つの負荷方向のそれに比べ,かなり高い値を示すことが明らかとなった。またこのようなレジンタッグの効果は,象牙質を被着材とした場合には,認められなかった。
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