原子間力顕微鏡 (AFM) を用いることにより,固体表面間の相互作用力の直接測定が可能になる。 しかし,原子レベルで平坦な基板はマイカやグラファイトのへき開などでしか得られず,殆どの固体表面は表面粗さ (R
ms) に代表されるような微小な凹凸を有している。 また,通常の大気中では水蒸気が固体表面に吸着しており,AFM の探針と基板間にメニスカスが形成されてラプラス力が働くよう になる。 一般に,球/平面間の吸着式としては,F = 4πRγ で表わされる Derjaguin 近似が代表的である。 本報では,薄膜の表面粗さ (R
ms) を 0.25~12.8nm の範囲,γ を 40~69mJ/m
2, 相対湿度を 4%と 40%に変化させて,微細探針の吸着力に及ぼす各要因の影響を考察した。 その結果,これらの範囲においては,薄膜の表面粗さが吸着力測定に最も影響することが分かった。 AFM を用いて固体表面の吸着力測定を精度高く行うためには,固体の表面粗さを少なくとも 3nm 程度に抑えること,あるいは表面粗さ効果を補正することが重要になる。
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