歯科接着性モノマーと象牙質の接着処理時間中の相互作用変化は知られていない。本研究は接着性モノマーを含む歯科セルフエッチング接着剤と象牙質の処理時間中のin situ相互作用変化を時間解析FTIR-ATRおよび透過電子顕微鏡(TEM)により調べた。4-アクリロキシエチルトリメリット酸(4-AET)およびそのカルシウム塩(4-AETCa)を純度よく合成した。4-AET液[4-AET/2-HEMA,40/60wt%]をハイドロキシアパタイト露出象牙質に塗布し,時間解析FTIR-ATRを15分間測定した。4-AETを含むワンステップ接着剤を入歯象牙質の割断面に塗布し,1/3,5,10および20分暗所に放置した後,可視光線を照射して試料を作成し,その接着界面の微細構造的変化をTEM観察した。FTIR-ATRの差スペクトルより,1583cm-1と1411cm-1にCa-カルボキシレートのνC=Oが認められ,合成した4-AETCaと一致したため,4-AETCaの形成が確認された。4-AETCaは15分間の接触時間とともに増大した。TEM観察により象牙質との接着界面に不溶性のインターラクション層が認められ,その層の厚さは時間と共に増大(0~2500nm)した。これらの知見は,配位子モノマーとして作用する4-AETと象牙質アパタイト間の接触時間に伴い4-AETCa塩の形成が増大するという仮説を支持している。
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