アセトアセチル化PVAを保護コロイドに用いた酢酸ビニル樹脂エマルジョンであるA10を合成し,イソシアネート化合物(pMDI)を添加した際のフィルム物性や木材接着性能を,一般PVA使用のN10と検討した結果,以下のことが明らかとなった。1) A10にpMDIを添加して作製したフィルムの動的粘弾性では180~200℃付近にゴム状平坦部が観察され,損失弾性率のショルダーが高温側へ大きくシフトした。これらの傾向がN10よりも大きく.pMDIの添加量が多くなるほどこの傾向は顕著になった。2)120℃処理を行ったA10フィルムの吸湿率はN10と比べて小さかった。また,pMDI添加量の増加に伴って吸湿率が小さくなる傾向が認められた。A10では加温処理条件を高温・長時間にすると溶出率は低下したが,pMDI添加系ではほとんど差が見られなかった。3)120℃の加温を行ったA10の耐水接着性能は20℃のそれらよりも30%~50%良好な値を示した。pMDI添加量の増加にともなってEPVAcの耐水接着性能が向上し,その効果は特にA10において顕著であった。
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