合成した熱可塑性ポリウレタンエラストマー(PUE)をマトリクスとし,フラーレンC60(以下C60と略記)や混合フラーレン(C60,C70,高次フラーレンの混合物,以下MFと略記)およびフラーレン製造時に生成する溶媒不溶のフラーレン類似炭素(以下FBと略記)との複合化およびそれらの諸物性を測定し,相構造と物性の関係を検討した。まず,溶媒を用いて得た複合物の引張物性は,フラーレン類(C60, MF)の添加量が100~数百ppm程度で初期モジュラスの向上が認められた。また,市販のTPUにフラーレン類の粉末を2本ロールにて混練する方法においても,溶媒法と同様の結果が得られた。また,FBも同様に検討したところ,どちらの方法によっても数phrの添加で機械的特性が向上し,添加量と共に引張応力が増加することが分かった。これらの示差走査熱量および動的機械測定から作用機構を推察した。また,このような極めて少量の添加は,加工性および成形性をほとんど損ねることがないため,有用な工業材料と期待される。
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