油状成分を多く含み接着が阻害される木材に適応可能な接着剤を開発するため,ケン化度の異なる5種類のPVAを用い,単独系とブレンド系における水溶液の貯蔵安定性,油状成分の分散性能,木材接着性能を 検討した。親水基量が多く結晶性が高い完全ケン化PVAは単独ではすぐにゲル化してしまうため貯蔵安定性が悪いが,疎水基量の多いPVAとブレンドすることにより,粘度の上昇およびゲル化の抑制ができた。疎水基量が多いPVAほどpMDIやヒノキ精油の分散性能が優れている傾向が見られた。また,疎水基量がほぼ同等の単独系とブレンド系を比較すると,ブレンド系の方が油状成分分散性が良好であった。ヒノキ精油を塗布した木材試験片による木材接着性能において,pMDI未添加系では単独系とブレンド系に大きな差は見られなかったが,pMDI添加系ではブレンド系は単独系よりも接着性能が優れており,ケン化度の異なるPVAのブレンドにより,油状成分を多く含む難接着木材の接着性が大きく改善できる可能性が示唆された。
抄録全体を表示