ポリジメチルシロキサンを用いた剥離剤層の力学物性を評価するため,AFMによるフォースカーブ測定を試みた。また得られた値と剥離力との相関性についても調べた。PET基材上に有機シロキサン化合物含有量の異なる種々の剥離剤層を形成し,フォースカーブを測定した。これらのフォースカーブからJKR理論を用いて剥離剤層のヤング率および凝着エネルギーを算出した。得られたヤング率は有機シロキサン化合物含有量増加に伴い上昇する傾向を示した。またモデル粘着剤に対する剥離力との間には高い相関性が確認され,剥離剤層のヤング率が剥離力に大きく影響を及ぼしていることが示唆された。以上の結果から本測定および解析手法は剥離剤層の直接的な力学物性評価手法として非常に有用であると考えられる。
本研究では,突合せ継手を用いてアクリル系高延性接着剤の繰返しねじり試験を行い,様々なせん断ひずみ速度における供試材の繰返しねじり変形挙動を実験的に調査した。得られたせん断応力-せん断ひずみ関係の特徴を考慮した構成式を提案し,計算結果と実験結果を比較した。以下に得られた結果を示す。(1)本供試材は繰返し加工軟化を示し,その後一方向に変形を与えると単純ねじり試験結果に収束した。また,速度の増大に伴い,顕著なバウシンガー効果およびせん断応力の急増(逆反り)が見られた。(2)提案した粘塑性機成式により,各せん断ひずみ速度について繰返し加工軟化を精度良く表現できた。逆反り開始のせん断ひずみの変化については,もう少し検討する必要がある。