接着接合が汎用的な接合方法として位置付けられるためには,設計基準の確立が必要である。そこで,接着強度の低下因子として,(1) 強度の温度依存性,(2)強度のばらつき,(3)内部破壊,(4)劣化を考慮し,設計基準強度と設計許容強度を求める手法を提案する。本手法により試算した結果,設計基準強度は,使用温度範囲における初期の最低平均強度の1/13〜1/27であり,安全率を 1.5 倍とすると,設計許容強度は 1/20〜1/40であることが分かった。
PP/エラストマー/フィラー3元複合材料に関して,エラストマー変量によって衝撃破壊挙動を脆性から延性へとコントロールし,その各々の破壊挙動においてフィラー粒子径が衝撃強度に及ぼす影響を詳細に検討した。ポリマー相が明らかに脆性破壊を起こすエラストマー未添加の場合,ほとんどのフィラーが衝撃強度を向上させた。特に,粒子径 0.12mm のフィラーを用いると,この衝撃強度の向上が顕著であった。一方,ポリマー相が延性破壊を起こす場合,粒子径 2.5mm以下のフィラーは衝撃強度を顕著に向上させ,粒子径3.0mm以上のフィラーは衝撃強度を低下させた。このように,フィラーによる衝撃強度の変化は,フィラー粒子径とポリマー相の衝撃破壊挙動の双方に依存した。
粘着の三物性は粘着剤の特性を簡便に評できるので,品質管理や商業上の取引で用いる方法としては適しているが,粘着剤の研究や新しい製品の開発においてはレオロジカルな面から科学的意味のある方法で評価することは重要である。ボールタックにおいてはボール番号ではなく,物理的に意味のある転がり摩擦係数で評価する方法を提案した。プローブタックでは化学反応速度論を用いて粘着の接着過程を表現できることを提案した。また,広い速度範囲,種々の温度で測定できるシリンダータック法を提案し,これらの結果をもとに,接着過程については化学反応速度を,破壊過程については並列Maxwellモデルを用い,これらを組み合わせてシリンダータック(転がり摩擦係数)の計算方法を導き出し,これらの計算結果が臨界表面張力の異なる被着体に対するシリンダータックおよびはく離強さの結果とよく一致することを見出した。