我々はホットメルト粘着剤の欠点の解消のために,凝集力成分の物理的変化を利用せず,化学結合の解離に基づく新しい機構による無溶剤熱加工型粘着剤の提案を行ってきた。今回の報告では,シート化の工程適応性確認のために,加熱時の流動性をラボプラストミルにより評価するとともに,押出機を用いて粘着シートの作成実験を行った。加熱時の流動性は,加工前材料中の熱解離基の量に依存するとともに,加工時に添加するポリオールの種類,量にも影響されることを明らかにした。また,流動性の変化を抑制するためには,三官能のポリオールの添加量を減らすことが有効であることを確認した。押出機を用いた粘着シート作成実験の結果,粘着剤を連続的に基材に塗布することが可能であることが確認され,化学結合の解離にもとづく新しい機構により,工業的に粘着シートを生産することが可能であることが示唆された。
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの重縮合反応あるいはシリカ粒子表面との反応による耐熱性の向上について,熱重量(TG)分析による重量減少カーブの比較から検討した。重縮合体の50%重量減少する温度は,シラン分子単独のそれと比較して著しく上昇した。表面処理したシリカ粒子のTGカーブは,100-150℃(第1段),150-250℃(第2段),250-350℃(第3段)の3段階の重量減少が起こっていた。処理後の加熱により第1段の減少が減り,第2,3段の減少が増加した。特に第3段の減少量の増加が顕著であった。第1~3段の減少は,それぞれ物理吸着したモノマー状のシラン分子,物理吸着した重縮合体のシラン分子,化学吸着したシラン分子と考察した。未洗浄の処理シリカ粒子のTGカーブから定量した物理吸着分子の割合は,処理シリカ粒子の洗浄前後のTG分析による重量減少から定量した値とよい一致を示した。未洗浄の処理シリカ粒子のTGカーブから,物理吸着分子の存在割合を定量することが可能なことが分った。