接着継手を継続的に150℃に高温曝露した場合の強度低下を実験的に調べた。実験はアルゴンガス中で実施した。併せて,接着剤単体をアルゴンガス中で高温暴露し,その表面色を計測した。接合部の強度は,曝露時間にあまり依存せず,むしろ若干の増加傾向を示した。接合部の破断面を観察すると,空気中と同様に,アルゴンガスの場合でも継手内部に大きな色彩の変化は見られなかったが,ガスに接する接合部周囲では狭い領域で変色が見られた。接着剤単体の色彩は,空気中と同じく,アルゴンガス中でも曝露に伴い大きく変化した。
本研究では異種金属接着板の二種類の引張り曲げ・曲げ戻し実験とFEM 解析を行い,接着層に生じるせん断変形挙動について調べた。本研究によって得られた主な結論は,以下の通りである。(1)作成した二つの実験装置を用いて,接着層の曲げ・曲げ戻し時のせん断変形挙動を観察できた。(2)接着層のせん断変形は,ダイ半径と引張り速度の影響を強く受ける。(3)被着体の引張強さが,接着層のせん断変形挙動に大きく関係する。せん断変形を小さく抑えるには,被着体のいずれかに引張強さの小さいものを用いればよい。(4)接着板の曲げ・曲げ戻しにより生じる接着層のせん断ひずみがある値(約1.7)を超えると,接着層ははく離する。(5)先の研究で得られた接着剤の繰返し粘塑性挙動を表現した構成式をFEM に組み込んだ。接着剤の降伏関数として新たな降伏関数を提案しFEM 解析の精度向上を目指したが,期待する成果は得られなかった。
くっつけるのが難しい場面がある。水の中での接着はそれに当たる。じゃぶじゃぶと水で洗った後で,ぱっとくっつけて次の工程に移る。そのようなことがもしできたならば,もの作りの現場は必ず変わっていくはずである。一方でいろいろな生き物が水の中でくっついている。彼らは個々に独自の接着システムを持っているが,それらは予想を遥かに超えて複雑である。その機構を明らかにしようとする研究が続けられているが,多くの因子が絡み合った接着という複雑な現象に対して,進化の中で降り積もった様々な仕掛けをすっきりと理解することは容易ではない。本稿では,水の中でくっつく生き物の中でも分子レベルで研究が進んでいるイガイとフジツボを中心に,生物の接着界面のデザインについて考えてみたいと思う。