添加するタッキファイヤ(TF)の種類や量が,ウレタン系軟質ポリマー(PU)および多層カーボンナノチューブ(MWCNT)からなるコンポジットの相構造や導電性に及ぼす影響を検討した。PUと相溶性が低いタイプのTFを添加した場合,海島型相分離を示した。この系では,TF量が少ない時,海相であるPUリッチ相中でMWCNTの分散性が悪かった。そのため導電ネットワークを形成し難く導電性は低かった。TF量を増やしMWCNTと親和性のあるTF相が海相になると,MWCNTの分散性が向上し導電性も増加した。一方,PUと相溶するタイプのTFを用いた場合,マトリックスであるPU/TFは単一相を形成し,TF含有量に依存せずMWCNTは比較的均一に分散し,導電性もおおよそ一定値を示した。以上よりマトリックスの相構造やMWCNTの分散性,ならびにコンポジットの導電性は,TFの種類とその添加量に大きく影響されることがわかった。
今日の産業界において,樹脂と金属の接合力が重要となる場面は多い。これらの樹脂と金属の接合力に対する評価について,材料の基本的性質に立脚した第一原理計算法によるシミュレーションの研究報告は著者の知る限りない。本研究では,第一原理計算法を用いた解析により吸着エネルギーを求めることで,樹脂と金属の接合力の高低を予測することを試みた。また,計算の妥当性を評価する目的で実験も行った。構造が簡単でモデル化しやすいポリエチレンと鉄,銅,アルミニウム基板の接合力について,その高低の計算予測は実験と一致した。すなわち,第一原理計算を用いた樹脂と金属の接合力に関する本評価方法について,産業応用の可能性を示すことができた。なお,ポリエチレンに比べて構造が複雑なポリプロピレンとナイロン66ではモデル化が難しく,計算と実験の不一致も見られた。構造が複雑な樹脂と金属の界面構造について,いかに妥当な計算モデルを作成するかが今後の課題である。