セルロースは,もっとも生産量の大きいバイオマスとしてのみならず,おそらく精緻に作られた構造に由来するであろう機能性にも注目すべきものがある。本総説では,セルロースあるいはその誘導体と,便宜上カーボンナノチューブ( CNT) も含めた有機分子との相互作用がキーとなる機能に焦点を当てる。具体的な機能としては,CNT の分散剤として高い導電性を実現したこと,キラル分離固定相( CSP) としてキラル分析手法革新に寄与したこと,そしてキラル選択的な反応が極めて高い鏡像体過剰率( ee.) に達したことである。これらの機能のいくつかにおいては,ピラノース環と芳香環π-結合系の相互作用が重要な役割を担っていると推定され,極性/ 非極性の二面性を持つことがセルロースの機能を特徴づける一要因であると考えられる。
接着接合の最大のメリットは,異種材料を接合し一体化できる点にある。一方では,多様化する被着材や高度化する要求性能に対応できる適切な接着剤をいかにして選定するかがますます重要となってきている。本稿では,接着剤をさまざまな観点から分類し,それぞれの一般的な特徴について解説する。接着剤は,無機系接着剤と有機系接着剤に大別される。さらに有機系接着剤は,天然系接着剤と合成系接着剤に分けられる。近年,工業的に使用される接着剤のほとんどが合成系接着剤である。また,要求される機能の観点から,構造用接着剤,弾性接着剤,速硬化性接着剤,伝導性接着剤( 電気/熱),難燃性接着剤などにも分類される。適切な接着剤を選定し,有効な接着結果を得るためには,接着のメカニズムや理論,接合すべき被着材の特徴,接合部位の構造設計などさまざまな知見や知識を総動員していくことが必要になる。また,最終的には,実際に使用する部材や現場での確認することも重要である。
既報( 日本接着学会誌, 50, 131( 2014)) で,アミノ基とメルカプト基を有する2 種類のシランカップリング剤( SCA) 混合系で表面処理した炭酸カルシウム粒子を充てんしたイソプレンゴムにおいて補強性が発現した。このメカニズムを解明するために,処理層の構造を解析した。SCA はトリおよびジアルコキシ構造を用いて比較した。単独のSCA で表面処理した場合,2- プロパノール洗浄で物理吸着分子を除去した後の付着量はアミノ基>メルカプト基,トリ>ジアルコキシ構造であった。アミノ基含有SCA の場合,水による洗浄で付着量が大きく減少し,アミノ基と粒子表面のイオン的相互作用による吸着が示唆された。SCA混合系の重縮合体の1H パルス核磁気共鳴法解析から,トリアルコキシ構造の組み合わせの分子運動性がもっとも低かった。処理層のアミノ基による粒子表面との相互作用と,トリアルコキシ構造による強固なネットワーク形成が補強性発現に寄与していることが分った。
単純重ね合せ継手を用いて,接着面の形状及び寸法,硬化時間が一液性湿気硬化型シアノアクリレート接着剤の接着強度に及ぼす影響について調べるとともに,接着強度と重合反応の分析結果との相関関係について調べた。被着体は一般構造用圧延鋼材SS400 を使用し,接着面はフライス加工後,研削加工を施すことにより,接着面の表面性状を一定とした。また,接着時と硬化時の湿度は一定とした。その結果,接着強度は硬化時間が長くなるに従い上昇した。さらに,単純重ね合せ継手の接着強度に大きく影響を及ぼす接着面の形状は接着長さであることを実験により示した。最後に,接着強度と重合反応との相関関係から接着強度を測定することにより,接着剤の硬化過程を提示することが可能であることを実験的に示した。
近年,ゼオライトや活性炭に代わる新たな多孔性材料として,金属イオンと有機配位子の自己集積反応によって構築され,分子サイズのナノ空間を有する多孔性金属錯体が大きな注目を集めている。多孔性金属錯体の高い構造設計性を生かした合理的空間設計により,ナノ空間を舞台とした様々な化学が展開されている。本論文では,多孔性金属錯体が持つ特徴を紹介し,それらを利用した機能( 分子貯蔵・分子集積・分子変換)について述べる。