突き合わせ継手などの接着強度は,接着端部に生じる特異応力場の強さ ISSF = 一定として,簡便かつ実用
的に評価できる。本論文では,スカーフ継手の強度も同様にISSF = 一定で表現できることを示すとともに,
ISSF の正確な解析結果に基づき,これらの破断面を詳細に観察した。その結果,接着破断面が巨視的には界
面破壊に見える場合でも,高倍率で詳細に観察すると凝集破壊であることを示した。スカーフ継手の破断面
には,羽根状の模様が確認できるが,この模様は界面のせん断応力τ の影響が大きいため生じたものである。
対象とした突き合わせ継手やスカーフ継手の破壊起点は,接着面の辺部の20 μm 程度のくぼみがはく離の起
点となっていることを指摘した。また,スカーフ継手における接着層厚さが極端に厚いとき( h ≧ 5.0mm) には,
界面近くの破面が存在せず,破壊接着層を横切るように破壊が生じるため,十分な強度が得られないことが
示された。