高分子と異種固体との分子レベルの接着は,高分子複合材料の性能に大きく影響する。高分子半導体や高分子電解質などの機能性高分子の場合には,高集積化された次世代デバイスへの応用に繋がる。そのため,界面における分子鎖の凝集状態および熱運動性を理解することは,複合材料や薄膜デバイスの設計を行う上で重要である。本稿では,界面選択的な分光法に基づき評価した異種固体に接触した高分子鎖の凝集状態および熱運動性と,それらにより発現する特異な機能について紹介する。
接着技術における信頼性の確保・向上に向けて,エポキシ硬化物の破壊挙動や接着特性の制御,寿命予測が強く求められている。そのためには,硬化過程におけるネットワーク構造の形成やそれに伴う物性変化が,最終的な硬化物のネットワーク構造,ガラス転移ダイナミクス,接着特性・力学特性に及ぼす影響を正確に理解する必要がある。本稿では,(1)硬化過程における不均一性とその制御,(2)不均一性がソルベントクラック挙動に及ぼす影響,(3)ネットワーク構造における架橋点がガラス転移ダイナミクスや温度時間換算則に及ぼす影響について議論する。
水中での接着は,接着界面に存在する水分子の影響で困難なことが多い。しかし,自然界にはフジツボのように水中で接着し生きている種や,タコやイカなどのように吸盤を用いて強固かつ素早く吸脱着可能な水性生物も多数存在している。我々はそのような生物のなかでも,水中で可逆的かつ素早く吸脱着可能なウバウオの吸盤表面の階層的な微細構造の機能について,人工的に模倣材料を作製することで材料科学的に解明することを目的とした。模倣材料の作製と接着力測定の結果,粘液の代わりに用いた柔らかいPDMS の中に存在している硬い高分子の繊維状構造体が接着力を増強していることが確認され,柔らかさによる接触面積増加と硬さによる脱着時の変形応力分散が強い接着力を生み出していることが明らかとなった。さらに大気下および水中でも接着力が変化しないことから,多様な環境で応用可能な接着材料開発の指針を得ることができた。