不安障害研究
Online ISSN : 2187-9583
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巻頭言
総説
  • 音羽 健司
    5 巻 (2013) 2 号 p. 73-84
    公開日: 2014/05/02
    ジャーナル フリー
    本稿では,主な不安障害の遺伝研究の現状について概観した。家族研究や双生児研究から,不安障害には遺伝要因が推定されており,その相対危険度は4~6倍,遺伝率は30~50%と報告されている。双生児研究からは,各不安障害にはそれぞれ独自の遺伝要因が影響しているだけでなく,ほかの不安障害や不安関連特性(うつ病や不安パーソナリティ)と共有する遺伝要因が関与することが示唆された。不安障害の連鎖解析や関連解析では確立した候補遺伝部位はいまだに見いだされていないものの,近年ではサンプル規模を増やした全ゲノム関連解析によって有意な部位が報告されてきている。さらに,マウスなどの動物モデルを用いた橋渡し研究がヒトの不安障害の遺伝子探索に応用されている。今後は,環境要因を考慮に入れた遺伝・環境交互作用や遺伝子のメチル化などの解析も重要性を増すであろう。
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  • 関口 正幸
    5 巻 (2013) 2 号 p. 85-92
    公開日: 2014/05/02
    ジャーナル フリー
    恐怖体験時の嫌悪感覚はその体験をしたときの環境全般やそのとき感知した音や匂いなど(中性事象)との連合記憶として脳に貯えられる場合がある。この連合記憶は条件性恐怖記憶と呼ばれており,古典的条件付けにより獲得される潜在型情動性記憶の一つと考えられている。条件性恐怖記憶の獲得は生物の生存のために極めて重要であるが,人間においては不安障害などの原因となる場合もあり,必要に応じてコントロールが必要である。そのためには,条件性恐怖記憶が元来どのような生体システムによりコントロールされているのかを知る必要がある。本稿では条件性恐怖記憶の修飾にかかわる生体システムについて,われわれの研究や国内外における最近のトピックスを紹介する。
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  • 藤澤 大介
    5 巻 (2013) 2 号 p. 93-101
    公開日: 2014/05/02
    ジャーナル フリー
    不安は,生命にかかわるような重篤な身体疾患の患者や家族において,とても頻度が高い症状である。不安症状が介入の対象となるのは,①患者が不安を苦痛に感じている場合,②不安に伴う機能障害を生じている場合,の二つの場合である。鑑別診断に引き続き,重症度(苦痛,機能障害の程度),時期(時間とともに自然回復する余地があるか)を評価し,それに応じて支持的な対応で経過をみるか,より進んだ介入を行うかを判断する。全般的な支援(支持的な対応)と専門的な支援(薬物療法,精神療法)を使い分ける。身体予後が厳しい患者の忍容性の低下のため,抗うつ薬や抗不安薬よりも少量の抗精神病薬が第一に選択されることが多い。リラクゼーション法,心理教育,支持的精神療法,認知行動療法,などさまざまな精神療法の有効性が実証されている。代替療法の有効性も実証されつつある。患者が通常最も望んでいるのは,「精神ケア」よりも,「長生きできること」「身体的に元気でいること」などであり,患者が求めている目標に合わせた形で,精神医学的評価と方針を共有できると良いだろう。
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資料
  • 股村 美里, 小塩 靖崇, 北川 裕子, 福島 昌子, 米原 裕美, 西田 淳志, 東郷 史治, 佐々木 司
    5 巻 (2013) 2 号 p. 102-109
    公開日: 2014/05/02
    ジャーナル フリー
    パニック発作は,10代から報告され,他の精神疾患との合併,成人後の精神疾患の発症と関連することが指摘されている。臨床上,睡眠不足等が誘発することは知られているが,データによる実証は十分とは言えない。本研究では,中高生を対象に質問紙調査を実施しパニック発作と睡眠習慣,就寝前習慣との関連について検討した。参加者は中高生719名で,睡眠等に関する生活習慣,パニック発作様症状の経験頻度等を質問紙によって尋ねた。回答の得られた699名中,パニック発作様症状を経験した者は全体の22.7%で,学年および男女による頻度の差はみられなかった。夜中12時を過ぎてテレビやインターネットを利用している者は,全体の58.0%に上りこれらの要因は,ロジスティック回帰分析で学年や性別,不安・抑うつを統制してもパニック発作様症状の経験と有意に関連していた。就寝前習慣の改善が,中高生においてもパニック発作の予防や改善に役立つ可能性が示唆された。
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  • 片岡 聡
    5 巻 (2013) 2 号 p. 110-115
    公開日: 2014/05/02
    ジャーナル フリー
    私は臨床薬学の研究経験のある自閉症スペクトラム障害(ASD)当事者で,リトルプロフェッサーズというNPOをベースに東京都と札幌市において,成人ASD者のピア活動を行っている(片岡,2013a)。またこのNPOの活動として,小学生から高校生までのASD児の学習支援および余暇支援を行っている。このように一定の医学知識を有するASDピアサポーターという立場から,学校保健関係者,医療従事者の人たちに向け,1.ASDにおける不安の認知の困難さ,2.ASD児の不安障害の診断の問題点,3.ピア症例の提示,4.ASD児の不安障害を考える視点としての心身医学,に分けて論じてみたい。
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  • 清水 栄司, 佐々木 司, 鈴木 伸一, 端詰 勝敬, 山中 学, 貝谷 久宣, 久保木 富房
    5 巻 (2013) 2 号 p. 116-121
    公開日: 2014/05/02
    ジャーナル フリー
    日本不安障害学会では,日本精神神経学会精神科用語検討委員会(日本精神神経学会,日本うつ病学会,日本精神科診断学会と連携した,精神科病名検討連絡会)からの依頼を受け,不安障害病名検討ワーキング・グループを組織し,DSM-5のドラフトから,不安障害に関連したカテゴリーの翻訳病名(案)を作成いたしました。
    ご存知のように,厚生労働省は,地域医療の基本方針となる医療計画に盛り込むべき疾病として指定してきた,がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病の四大疾病に,新たに精神疾患を加えて「五大疾病」とする方針を決め,多くの都道府県で2013年度以降の医療計画に反映される予定です。
    精神疾患に関しては,「統合失調症」や「認知症」のように,common diseasesとして,人口に膾炙するような,馴染みやすい新病名への変更が行われてきております。うつ病も,「大うつ病性障害」という病名ではなく,「うつ病」という言葉で,社会に広く認知されております。
    そこで,DSM-5への変更を機に,従来の「不安障害」という旧病名を,「不安症」という新名称に変更したいと考えております。従来診断名である,「不安神経症」から,「神経」をとって,「不安症」となって短縮されているので,一般に馴染みやすいと考えます。ただし,日本精神神経学会での移行期間を考え,カッコ書きで,旧病名を併記する病名変更「不安症(不安障害)」とすることを検討しております。
    そのほかにもDSM-5になって変更追加された病名もあるため,翻訳病名(案)(PDFファイル)を作成しました。翻訳病名(案)については,今後も,日本精神神経学会精神科用語検討委員会の中での話し合いが進められていく予定です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
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