デザイン学研究作品集
Online ISSN : 2188-7772
Print ISSN : 1341-8475
ISSN-L : 1341-8475
22 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 8ミリフィルムが記録した暮らし
    三好 大輔
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_2-1_7
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    本稿の主題は、地域に眠るホームムービーを活用した「地域映画づくり」である。示すのは、その土地固有の文化風習を色濃く残した「過去の文化資源」としてのホームムービー(8ミリフィルム)の集積を「地域映画」に仕立てあげ、「今日の文化資源」として活用するプロジェクトのデザイン方法である。地域映画づくりは、その制作過程を市民と自治体と専門家が協働することで、市民主体の地域活性化を創成する活動となる。また、それは地域で「生産(記録)」されたフィルムをその土地で「消費(活用)」する「文化資源の地産地消」サイクルを駆動するエンジンともなりうる。地域映画づくりは、そのサイクルを回すことで、人びとが地域社会の文化や歴史を味わい、そこに生まれる共感をとおして新たな社会をつくる文化プログラムとなる。本稿は安曇野市で行った「あづみのフィルムアーカイブ(2015~安曇野市)」を作品(プロジェクト)とし、それを事例とするデザインプロセスから論じるものである。

  • プログラミング体験のための道具と活動のデザイン
    原田 泰, 三野宮 定里
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_8-1_13
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    本作品はRaspberryPi, Scratch,センサーボードとスイッチ、手作りスピーカーを組み合わせて作る電子楽器である「不思議楽器」と、その制作と演奏を通してプログラミングの可能性を体験する活動としてのワークショッププログラムである。
    不思議楽器は、センサーによる入力を利用して、ICレコダーで収集した音やScratch内に用意されている音源を再生することで演奏パフォーマンスを行う道具である。音源に自分の声や環境の音を利用したり、音を鳴らすパフォーマンスや入力装置を工夫することで、見た目のラフさからは想像できない演奏パフォーマンスを実現できる。
    ワークショップでは、「不思議楽器」の制作と演奏を通して、プログラミングの基本やセンサーとの連携について理解し、生活の中でのプログラムの可能性に興味を持つきっかけ作りを目指した。

  • 蛭田 直, 吉川 義盛
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_14-1_19
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    本作品は、正三角形のユニットによる平面充填において、リアルタイムに全体を確認したり、並び替えしたりしながらパターンデザインができる初級者、中級者に向けたウェブアプリケーションである(図1)。
    パターンデザインは、布製品や壁紙、グラフィックの背景など、日常の様々な場面で使用されるとても身近なデザインである。しかし、制作の行程おいて全体の様子や角度を変えた際の組みあわせを幾通りも想像しながらユニットのデザインをすることは経験があっても難しい。
    本作品は、リアルタイムにパターンデザインの全体を確認したり、並び替えをしたりしながらユニットのデザインを可能にすることで、これまでに多くの時間を費やしていた複製や並び替えの行程を解決した。本作品は、初級者にパターンデザインの魅力と作り方を、中級者はより高度なパターンデザインの学習や制作を追求できる環境を提供する。

  • 津田井 美香, 岡田 栄造
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_20-1_25
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり

    和紙を用いた立体成形は伝統的に行われてきたが、複雑な形状を作るには高度な技術が必要であり、自由に立体を成形することは困難を極める。
    これに対し近年開発された吹き付け和紙は、和紙の立体成形において非常に自由度が高い素材である。吹き付け和紙とは楮等を主な原料とし、スプレーガンを用いて平面曲面問わず様々な対象物に和紙コーティングを施すことが可能な素材で、現在すでに建築内装材や家具の一部に塗装材として利用されているが、多くが均一な塗装を施すためだけに用いられており、吹き付け和紙の特性を十分に活かした製品への展開が行われているとは言い難い。
    本研究では、吹き付け和紙を用いた新たな立体成形手法を開発した。その手法を用いた制作事例として、花器、器、ポーチ、トートバッグ、ぬいぐるみ、の5種類のプロダクトの制作を行った。

  • 「光の音階」のデザイン
    垂見 幸哉
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_26-1_29
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    本作品「Light Scale」は、音という聴覚領域において、光という視覚領域から発想された新たな音階を提案するものである。本稿では、光のスペクトルを表す周波数と音の高さを表す周波数を照応させ創造した音階の原理について解説し、合わせてその音階をデザインするアプローチについて述べる。生み出した音階、Light Scaleはクラシック音楽やポピュラー音楽で使用される従来の作曲法にはない音階であり、新たな音階が創成する未知のメロディーや新しい芸術表現の可能性についても述べる。

  • 野口 企由, 小畑 隆正
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_30-1_33
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    我々はデザイン学研究作品集18号2012において、古材を活用した小テーブルとキャビネット用扉を発表し[注1]、その論末でより広い市場の開拓を目的とした汎用性が高い大型テーブルトップなどへのデザイン展開を約束した。本論はその新規開発過程と最終成果物の特性を詳述するものである。
    前回確立した古材を効率的に部品化、再構成し、経済的に製品化する手法を確保しつつ、より汎用性のある大型の面材に対応したデザイン的バリエーションを充実するために、本論では前回の単純なストライプに加えて更に3種類の天板表面のパターンを考案した。またそれらの試作品を数ヶ月間観察し、寸法安定度の検討を行った。その結果大型テーブルトップに採用できると判断した新たな2パターンを実作に結びつけた[注2]。これらの2製品は、長期の実用耐久性を確認すると共にそのデザイン的な印象についても顧客から様々な意見を聞くことを目的として、京都祇園のカフェバーで使用することにした。今後反応を継続的に観察し、既存製品の改良や新しいデザインの開発に活用していく計画である。

  • 三野宮 定里, 原田 泰
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_34-1_39
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり

    本作品は立歴史民俗博物館で2016年7月12日より開催された企画展「よみがえれ!シーボルトが見せたかった日本博物館」ためのデジタル展示コンテンツである。アニメーションを用いて視覚的・対話的に情報を提示する。はじめに資料の全体像がサムネイルで提示され、複数の資料を俯瞰する視点を提供する。閲覧者がある資料を選択すると、その資料の別の画像や、材質、作者、年代といったより詳しい情報に焦点化される。ここで基本情報のひとつを選択すると、それに関連する資料が集められる。閲覧者は複数の共通性を持つ資料を比較したり、関連性を辿って検索では見つけにくい資料に出会うことができる。さらに資料を時系列、地域別に並び替え、別の視点から資料を眺めることができる。このように資料の共通性や関係性を見る視点を提供することが表現の特徴である。展示利用を通して会場に展示できなかった資料を含む約3,000点の資料を来館者へ提示することができた。

  • 光による情報可視化手法を用いたハードウェア学習用モジュール型玩具
    川口 一画, 山中 敏正
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_40-1_43
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり

    近年ハードウェア教育が着目され、モータや各種センサ等の機能を一つずつ組み込んだモジュールを組み合わせて様々なシステムを構築可能なモジュール型玩具が開発されている。ただしそれらはモジュール間の情報伝達に電気信号を用いているため、目に見えない電気という概念を理解することが困難な小さな子供には理解が困難であった。そこで本研究では、小さな子供の理解を促し、より幼い子供から遊びを通してハードウェアに親しむことが出来るようにすることを目的とし、モジュール間で伝達される情報を光により可視化するハードウェア学習用モジュール型玩具“ヒカリツミキ”の開発を行った。制作に当たっては、パーソナルファブリケーション機器等を活用することで、従来では困難であった試作レベルでの大量制作を実現した。

  • 丸山 素直
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_44-1_49
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    著者は2013年より様々な環境や参加者の状況に合わせて創造活動プログラムをデザインし実践してきた。このプログラムでは事前に、実践する日に使用する画材として「表現素材」を準備している。活動を行う環境や参加者に合わせて「表現素材」の種類や量を変え、参加者の創造活動をより豊かな体験としてデザインしてきた。これら「表現素材」を提供するプログラムを通して、人びとが持っている創造する能力を引き出すことができるのである。例えば短い時間の創造活動では「表現素材」を多く提供することで、参加者の選択を促進し彼らのもつ「美しさを感じる力」を引き出すことができる。また長い時間の活動では表現素材を少なめに用意し、参加者に創造的努力の機会を提供する。それによって彼らのもつ「美しさを想像する力」が引き出される。創造活動の状況に合わせたデザインが、人間の創造にかかわる種類の能力を引き出している。本稿では創造活動プログラムデザインの原理として、創造活動の仕組みや工夫、そこに引き出される人びとの能力について考察する。

  • 小菅 瑠香, 矢部 仁見
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_50-1_55
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり

    奈良県五條市との地域連携事業の一環として、帝塚山大学食物栄養学科が2015年4月より道の駅「吉野路大塔」に学生レストラン「TEZUcafe(以下、テヅカフェ)」を運営している。これは国土交通省の「道の駅を観光振興や地域振興を学ぶ学生の課外活動やインターンシップの場として活用したい」という方針に基づき、奈良国道事務所から協力依頼を受け、連携企画型の事業として実施されるものである。
    2015年末より、このテヅカフェの内装デザインを居住空間デザイン学科の学生が手掛ける、学科横断プロジェクトが始まった。本稿ではデザインプロジェクトの内容とプロセス、およびその教育効果について述べる。
    今回の取組が、学生にとって活きた課外学習となり、かつ大学の地域連携による新たな地域活性化の事例となることが期待される。

  • 長尾 徹, 佐藤 宏樹, 串田 隼人, 小田 裕和, 山下 浩治
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_56-1_59
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり

    本論文では、大学教育の質的変革が加速し、アクティブラーニング、PBL型授業等の新しい学び方へ対応が求められていることを鑑み、それらを実現しやすくする新しい場、モノの存在が不可欠であると考えた。そこで以下のように製品開発を行った。まず、学び手である大学生がキャンパス内、授業時等の調査を行い、新しい学び方には授業時間内外でのグループワークが不可欠であることが判明した。その際に、1)俯瞰による情報共有、2)グループの占有感、3)個人天板が必要不可欠であるとの結論を得た。次にグループワークに適した空間機能の把握と、中心となる家具のプロトタイプによるコミュニケーション観察とインタラクションの分析を通してデザイン・仕様を決定し製品化を行った。デザイン・教育・創造的行為におけるグループワークに有用な製品提案がなされたと言える。

  • デスクワーク時に使用するフットレストの開発
    橋田 規子, 竹谷 友希, 浅田 晴之, 高橋 卓也, 中島 千尋
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_60-1_63
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり

    近年、女性オフィスワーカーが増加し、働きやすい環境整備が求められている。しかしながら、デスクの高さは720㎜とされており、身長の低い女性は正しい姿勢を取ると足が床に着かない、という現象が起こる。本件は、デスクワークを行う女性が安定して座れるように考案したフットレストである。開発ステップとしては、はじめにオフィスワーカーのデスクでの姿勢を観察することから始めた。この中で、女性は足が床に着かないため安定せず、短時間に多様な足姿勢を取ることがわかった。そこで、実験器具を製作し、身長ごとにどのような角度が必要か導き出した。これによりフットレストの角度は、0°から30°を調節範囲とすればよいことが明らかになった。結果を用いて具体的なデザインを行った。角度調整が足でできるように設計し、スリムでコンパクトなデザインとした。

  • 滝本 成人, 森 一枝, 加茂 詞朗, 北岡 英雄
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_64-1_67
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり

    本研究は、福井県越前市のタケフナイフビレッジ協同組合との共同デザイン開発である。NPO法人ドリームと連携し、障がい者から聞き取り調査を行い、座位姿勢包丁と片手使用包丁の必要性に至った。試作として、L型包丁・ウルナイフ・片手使用包丁などを制作し、障がい者スタッフの協力で被験者実験を行った。その結果、2種の試作品に優位が認められた。製作方法は、ブレイドをワイヤーカッター加工とし、グリップを注型成形とした。少量生産から大量生産に製作方法が変わっても対応できるデザインとした。

  • 中山間地域の里山資源の価値を伝達するパッケージデザイン
    蛭田 直, 井田 秀行
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_68-1_73
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    本作品は、北信州(長野県飯山地方)の里山資源であるブナの実をもちいた「ブナの実羊羹」のパッケージデザインである(図1)。ブナの実は、当該地域の風土や文化を反映した魅力ある食材であるが、安定供給ができないことから特産品としての活用が難しいとされている。そこで、限られた数量でもブナの実の食感と風味を味わえるように羊羹の形状を最適化し、商品価値の訴求力をより高めたパッケージデザインを展開した。
    デザインの特徴は、開封の動作で上部と下部に分かれ、上部は地域や商品の情報を発信するしおりとして使用できると同時に、下部は羊羹を食するためのケースにできることにある。開封は、新たに開発した破線によりスムーズに行え、外形加工を伴うパッケージについては小規模の農産物加工所でも自作できるよう配慮した。また、グラフィックにクマのイラストレーションを使用することで親和性を高めている。

  • 名古屋国際会議場における観光案内所の改修計画
    杉岡 敬幸, 平 翔, 深町 駿平, 伊藤 孝紀
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_74-1_77
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり

    本作品は、名古屋市熱田区の白鳥公園内に所在する名古屋国際会議場における観光案内所の改修計画である。まず、現状の利用実態と評価を把握するために、来場者の行動観測調査と要望調査をおこなった。そこで得られた知見から、案内所改修の指針を定め、デザイン提案した。
    名古屋の歴史・観光情報を発信する空間を創出するに際し、名古屋市の市章である「八マーク」よりデザインモチーフを抽出した。このデザインモチーフを壁面、ベンチ、リーフレット配架棚など様々なスケールで展開し、施設の既存のテーマカラーのマルーンによって空間全体を演出することで、あたたかみのある空間を実現した。「8個の集合」という意味を持つ「OCTET」というコンセプトのもと、「8」を基準として名古屋の観光や歴史など様々な要素を1つの空間に集結させることで、名古屋の魅力を体感することができる観光案内所を創出した。

  • 山本 早里, 小松﨑 里恵
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_78-1_83
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり

    本研究は、茨城県立土浦第三高等学校の改築にあたり、サイン計画も含めた全体の色彩計画を行ったケーススタディである。色彩計画を設計の基本コンセプトの一つとして取り入れ、部屋の識別が容易になること、機能面だけを重視するのではなく、子どもたちが楽しく学べ、かつ自分たちの学び舎に誇りが持てるように、唯一の建物と認識できるようにすることをコンセプトに色彩計画を行った。特別教室棟の室内の色彩計画では各教室で行われる活動の多様性に着目し、各室のテーマカラーを設定した。外壁の色彩計画においても、周辺環境に配慮して彩度を抑えた計画とし、普通教室棟と特別教室棟とで別々のアクセントカラーを用いた。両棟の色彩計画に携われたために、調和のとれた教育空間の創出ができた。

  • 宮地 英和, 吉田 幸弘, 関村 誠
    2017 年 22 巻 1 号 p. 1_84-1_87
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/07/08
    ジャーナル 認証あり

    玩具には、知的好奇心や創造力だけでなく、美的感覚を育むことを目的とした積み木やブロックがある。そして、そのようなデザイン性や機能性に優れた玩具は外国製が多い。しかし、美的感覚は文化や風土によって形成されるものである。そこで、本研究では、幼児教育における玩具について考察し、日本の文化的な視座から、伝統紋様「青海波」を使用した積み木を開発した(図1)。その目的は、人間と自然の調和をもたらす内発的な感情を育てることである。

feedback
Top