デザイン学研究作品集
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27 巻, 1 号
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  • 本江 正茂, 野澤 和意, 西沢 有美, 西野 孝弘, 岩澤 拓海, 小野寺 志乃, 小山田 陽, 玉田 義一, 門傳 一彦, 松井 健太郎
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_2-1_7
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    電子付録

    宮城県山元町立中浜小学校。2011年3月11日、大津波が迫る中、居合わせた児童と教職員ら90名は屋上に避難し、2階天井まで浸水するも、翌朝全員が救助された。その被災校舎を津波による破壊の痕跡を極力残したまま保存し、東日本大震災の震災遺構として公開した。新条例により建築基準法の適用除外とし、被災したままの状態で見学者の内部への立入りを伴う公開を可能とした。被災校舎そのものを核に、展示資料・案内冊子・案内映像・モニュメント・学習教材等を通じて見学体験を統合的に設計し、津波の脅威を見せつけるだけでなく、来館者への問いかけを通じて、それぞれが自身の災害への備えを考える場とした。震災遺構の設計では被災住民との協議が難航するケースも少なくないが、丁寧なプロセスで遺構に残るモノの意味を同定し、実現に漕ぎ着けた。被災経験を伝承し、地域の災害文化を担っていく施設である。

  • 第32回袋井クラウンメロンマラソン参加賞用
    横山 稔, 横山 陽子, 岡井 美奈
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_8-1_11
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    電子付録

    このマラソン用スポーツフェイスシールドは、開発当初は製品として販売する目的ではなく、DIYで世界中どこでも型紙で作ることができるようなデザインを意図していた。テスト公開等を通じて商品化の要望も多く寄せられ、製品化も検討していたところ、コロナ禍で大会の中止が危ぶまれていた静岡県の公益社団法人袋井スポーツ協会主催の第32回袋井クラウンメロンマラソン大会での参加賞として配布したいという要望を受けた。元となったDIY用スポーツフェイスシールドは、既に参加者が持っている多様なキャップの鐔に、取付け部品を介さずにはめ込むだけで、マラソンに適したスポーツフェイスシールドとして機能するものだったが、さらに袋井クラウンメロンマラソン大会の要望に合わせた製品化への改良を重ね、「袋井スペシャルスポーツフェイスシールド」の名称としてリデザインした。結果として、この参加賞を2,000人に配布することで、大会を中止せず、開催に導く大きなきっかけとなった。(特願 2020-115898)
    Summary

  • 大場 晴夫, 西山 典子, 永冨 太一, 安藤 啓次, 福元 隆広, 小原 英幹
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_12-1_17
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    電子付録

    新型コロナウイルス感染症による世界的パンデミックの現況下では、消化器内視鏡、特に口から内視鏡を挿入する上部内視鏡検査は、患者からのエアロゾル・飛沫が発生しやすい検査とされ、医療従事者の感染暴露の懸念が指摘される。そこで我々は、現場の要望に沿った感染防御システムをデザインした(図1)。このシステムでは、簡易に組み立てられるフレームにフィルムを装着し、その内部を陰圧に設定する。そしてフィルム内部に患者が入り検査や手術を受けることで、患者の飛沫やウイルスの飛散を最小限に抑え、医療従事者の感染を防ぐことを目的とする。また取り扱いやすく安価なフィルムをディスポーサルにすることで、機器や空間の消毒時間を短縮し運営コストを抑えることを実現した。この提案は医療・工学・産業連携の基、8ヶ月という短期間に実験・検証・デザイン・商品化を実現し、多くの医療現場で貢献している。

  • 移乗用ボードの設計と連携
    片本 隆二, 江原 喜人, 小宮 雅美, 岩橋 謙次, 有地 祐人
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_18-1_23
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    電子付録

    抱え上げない介護の普及には、効率を重視する考え方や、機器の使用方法がわからない、上手くできないなどに起因する困難さがあった。そこで新たな形状やガイド表示、使い方動画などを備えたスライディングボードを製作した。側方移乗の自立と介助負担軽減の価値に加え、高齢者施設などにおける介助者の指導および習得に対する安心感や安全性という価値を各種連携によって徹底追求したものである。

  • 秋田 美穂, 宇野 勇治, 森本 達也, 堀越 哲美
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_24-1_29
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    電子付録

    2020年3月下旬より新型コロナの感染者数が増加し、マスク着用やアルコールによる手指消毒が推奨されるようになった。愛知産業大学造形学部建築学科では、木造建築の教育にも力を入れており、伝統的構法を設計や実践を通して学ぶプログラムも有している。本プロジェクトでは、コロナ禍の必須アイテムでもある「アルコール消毒ポンプ」を、日本の伝統的構法と地元岡崎市産の木材を活用して[注1] 、デザインと制作を行った。学生が参加して制作を行い、岡崎市などに寄贈され、公共施設などで活用されている。感染防止対策に加え、木の温もりや伝統的な技法を感じられるということで好評をいただいている。
    一定の技術や機械・道具などは必要ではあるが、いずれの地域でも制作は可能であり、日本建築や工芸に思いを馳せていただく機会にもなると考え、本作品集に詳細な図面や制作方法を示すものである。

  • 上野 明也, 横山 俊幸, 木下 稔夫
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_30-1_33
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    電子付録

    本作品は木粉と漆のみを原料としている100%バイオマス成形材料「サスティーモ®」からできたぐい呑みである。
    デザインの際は、日本酒だけでなく洋酒を飲む際にも使用できるショットグラスのような意匠の要素を取り入れた。金型製作の後、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂と同様の圧縮成形を行い、漆による仕上げ塗装を施した。
    本作品の金型のキャビティは金属板を積層することによりできており、積層の順番の変更によって同一の金型で複数の意匠のぐい呑みが成形できる。これにより意匠の比較検討や手触り、持ちやすさ、使用感等の変化の確認が可能となる。また、金属板の加工にレーザー加工機を利用することにより金型加工のコストダウンを実現した。

  • 日常世界とデータ世界を繋ぐインタラクティブインスタレーション
    武笠 知幸, 河上 洋樹, 安川 宏輝, 丹澤 朋世, 佐藤 可士和, 中村 勇吾, 山 健太郎, 鈴木 朗裕, 沢木 和樹, 石合 美紀, ...
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_34-1_39
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    UNLIMITED SPACEは2次元のタイポグラフィと3次元でキャプチャされた人体動作、そして大規模オンラインデータを統合したインタラクティブインスタレーション作品である。展示空間に足を踏み入れると、人気の検索ワードから抽出された単語が人体形状に沿って動的に配置され、その様が壁面に投影される。インターネットサービスは我々消費者のニーズを満たすために膨大な量のデータを処理し続けているが、我々が日々の暮らしの中でその存在を意識することは稀である。普段我々が商品やサービスを検索する際、それらの検索クエリがいかにダイナミックにシステムの内部で処理されているかを想像することは難しい。本作品の目的は実世界の消費者と手に取る事の出来ないデータの世界を繋ぐ事である。UNLIMITED SPACEでは、鑑賞者の鏡像をデータで再構成することにより日々の生活がデータに還元されていることを示唆し、消費者とデータの世界が成す無限の広がりを表現した。来場者は自由に展示空間を動き回り、自身の動作と我々のオリジナルフォントで表現されたデータの世界が相互作用する様を体験することが出来る。

  • デザイン制作における根拠の形成過程
    富田 誠, 菊地 英明, 島田 奈緒, 三宅 華子
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_40-1_45
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    電子付録

    本作品は、厚生労働省の和文ロゴタイプのデザイン及びその制作工程を記述した映像からなる。本ロゴタイプは書体、長体率、文字形状、角丸率などの造形要素ごとに比較検討を繰り返しながら制作された。本稿及び映像では、これらの比較結果や選定理由を一つ一つ記し、デザインの決定理由を示した。
    加えて、これらの説明順序と、実際におこなわれた制作過程の差を述べ、仮説的な形の生成とその形への違和感によってなされる修正の間にデザインの理由が立ち現れることに焦点を当てた。結果として、このデザインの修正がデザインの変数ごとに行われ、そこで述べられた理由が再構成されることでデザインの根拠として形成される過程を概念的に提示した。

  • 福井市PR映像「 out of the blue」 をめぐって
    髙橋 紀子, 川島 洋一
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_46-1_51
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    電子付録

    福井市総務部広報課は、インナーブランディングによるシビックプライド醸成を目的として「リアルローカリズム つながり広げる事業」を2020年に創設した。福井市の魅力を福井県内在住者へ発信するための、映像制作を目的とした事業である。その事業に協力した本作品の最大の特徴は、地域プロモーション映像によくある「景勝地の風景に頼る表現」を取らず日常生活の風景のみで描いたこと、「物語」を導入し登場人物の心情や心象風景によって描いたことの2点である。さらに、福井のローカル線「えちぜん鉄道」を背景として、高校生男女の「ありふれた日常に起こる喪失と再生」というテーマを「時間の多層構造」の表現手法により描いた。本稿では、本作品で試みた地域プロモーション映像の表現手法をめぐって制作上の省察を論じるとともに、試みた手法の有効性について、映像の専門家による評価や福井県在住者100名を対象に実施したアンケート調査をもとに報告する。

  • ~スペースデブリを題材に~
    村井 貴
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_52-1_57
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    電子付録

    1957年のスプートニク1号の打ち上げ以降、人類共通の新しい環境問題となったスペースデブリを題材に、体験学習型の環境教育を目的としたVR教材の開発を行った。VR教材はSPACE-TRACK.ORGが提供するオープンデータを活用し、宇宙に漂流するスペースデブリや人工衛星といった無数の人工物を3D空間上にプロットしたもので、一人称の視点でスペースデブリの位置や数をあたかも星空を見上げるように容易に観察することができる。2019年10月29日(日)、北海道札幌市において、スペースデブリをテーマにしたサイエンスイベントを開催し、VR教材を広く市民に体験してもらい、その教育効果を測定する場とした。

  • 道路空間再編におけるパークレットの試み
    伊藤 孝紀, 長谷 真彩, 近藤 宏樹, 原 希望
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_58-1_61
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    本作品は、栄ミナミまちづくり株式会社によっておこなわれた、栄ミナミ地区におけるパークレットの社会実験および常設化である。
    この地区では、一次連想となるデザインコードを二次連想となる全ての空間デザインに適応させ、持続的に成長し続けるプレイス・ブランディングがおこなわれている。現在、道路空間再編の一環として、パークレット事業にも取り組んでいる。社会実験からみえた課題点を克服したパークレットの常設化により、通りに多様な行為を含む賑わいを生じさせた。
    プレイス・ブランディングをエリアマネジメントに活用することは、事業の視認性や広告価値を高めることにつながる。これにより、栄ミナミ地区は活気と賑わいのある景観を持続しながら成長し続け、デザインの統一された、市民が誇りを持てるまちづくりを演出している。

  • 仮設的な空間構築のためのデザインシステム
    冨田 太基, 赤羽 亨
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_62-1_67
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    「Kiosk」とは、5種類のジョイントパーツと角材を組み合わせたフレーム状の構造物によって、仮設的な空間構築を可能にするデザインシステムである。ジョイントパーツと角材(柱・梁)の組み合わせを変えることにより、フレームのレイアウト・サイズなどを、設置する場所の条件に対応させた空間構築をすることができる。同時に、フレームに取り付ける、棚板やテーブルなどのアタッチメントパーツをデザインすることによって、ショップや展示スペースといった空間の使用目的に合った機能を構造物に付与することを可能にする。
    このデザインシステムを用いて構造物をデザインし、仮設的空間を構築することによって、空間の使用目的の変化に応じた、空間の性質や機能の更新を実現する。

  • 松本の水資源と工芸を活かした市民参画型ツアー・イベントのプロデュース
    一ノ瀬 彩, 千田 藍
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_68-1_73
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    「工芸のまち・松本」の魅力を発信するツアー型イベントである「旅行社みずのさんぽ」を企画デザインした。多くの人々が湧水のまちを回遊・散策しながら、工芸の魅力を実感できることをコンセプトとした。松本市で毎年開催される大イベント「工芸の五月」の期間中に、松本市美術館と連携して館内にブースを設け、さまざまな広報活動を展開した。松本は湧水のまちであるが、近年暗渠化や井戸の取り壊しなどが進み、まちの貴重な自然資産が損なわれている。そこで、市民や工芸作家、大学等に参画を呼びかけ、まちを回遊しながら楽しみ学び合うことで環境整備にもつながるしくみを整えるとともに、イベントに対応した工芸のまちの特質をいかした工芸品をデザイン開発し、松本の地域ブランドの定着を図った。筆者は「工芸の五月」を主催する工芸の五月実行委員会から依頼を受けて、工芸と地域を繋ぎまちの回遊性を創出するためのツアー・イベントのプロデュースを担当した。

  • (秋田市大森山動物園「サル舎」公共デザイン)
    李 昭旻, 李 蕙先
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_74-1_79
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    この作品は、新たに整備される秋田市大森山動物園「サル舎」に設置を目的とした公共アートプロジェクトの成果である。公共デザインが環境だけではなく、人との関係も重要視されるようになったため、デザインコンセプトの開発を、社会的、空間的、訪問客の理解に分けて行われた。その結果をもとに最終的なデザインを提案し、2021年3月に「サル舎」に設置した。本作品は、訪問者に視覚的、感情的な満足を提供すると同時に自律性を通じた柔軟な観覧方法で開かれたコミュニケーションを可能にすることや大森山動物園の象徴的造形物にすることである。

  • 小西 哲哉, 小林 竜太, 中村 耕太, 河島 則天
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_80-1_85
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    車椅子による効率的な走行を実現するためには、ユーザーの身体的特性(体格や筋力・動作スキル)に基づいた車椅子設定をし、効率的な駆動トルクを生み出すための最適解を導き出す必要がある。最適解は理論計算によって決められるものではないため、試行錯誤が前提となり、このサイクルをいかに円滑反復できるかが鍵となる。課題解決の具体策として、車椅子の諸設定の迅速調整により最適なシーティングポジションを得るためのインタラクティブデバイス「SS01」を開発した。次いで、車椅子スプリントにおけるピークパフォーマンス(最大疾走速度)を目的解として定め、得られた結果を基に陸上競技用車椅子「WF01TR」の開発に繋げる試みを進めた(WF01TR はWheel Formula version 01 for Track Racer、SS01 はSeating Simulator version 01 の略語表記)。
    本稿は、開発プロジェクトの中で、デザイナーが解決すべき問題や製品として充たすべきクオリティを高めるためのポイントをまとめたものである。

  • 民藝の酒器から生まれたデザイン
    山口 光, 松沢 卓生
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_86-1_89
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    岩手県二戸市を中心とする浄法寺(じょうぼうじ)塗には、古くからの民藝品である「ひあげ」と呼ばれる片口の酒器が存在していた。祝宴に欠かせない地域のシンボルでもあり、少しずつ形を変えながら現代まで伝えられている。
    市場でも一定の人気がある商品ではあったが、木地の生産性が低いという理由で欠品となることが多くなっていた。また、収納性などの課題も見られるようになっていたことから、2016年4月から2020年10月にかけて、リ・デザインとアイテム追加を行なった。
    2018年3月には「角杯」(かくはい)という商品名で、株式会社浄法寺漆産業(以下、浄法寺漆産業)から発売した。この「角杯」は片口の内部に杯を2個収められる形状で、二人で酒を酌み交わせるセットとしてデザインされたものである。発売後も改良を続け、2020年4月には新色によるアイテムを追加し、同年10月に2020年度グッドデザイン賞を受賞した。

  • 八王子城跡の魅力を高めるヘッドアイテム
    工藤 芳彰, 阿久根 皐月
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_90-1_93
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    中世山城の姿を伝える国史跡・八王子城跡は、八王子市策定の日本遺産認定ストーリーの筆頭に位置付けられるなど、今後の利活用が期待される地域資源である。私たちは同城跡の魅力向上に重要な役割を果たしている八王子城跡オフィシャルガイドおよびNPO法人八王子城跡三ッ鱗会に着目し、その活動を支援するヘッドアイテムをデザインした。『おりかぶと』は、折ると兜になる800mm角の合成紙製の折り紙で、高い防水性および耐久性と、両面印刷を活かしたモードチェンジ(足軽モード・大将モード)を特徴とする。折ると裏面になる部分には、折り方が表示されている。同城跡でのガイドツアーやイベント時に参加者自らが折って身に付けることにより、その経験価値を高めることができる。『おりかぶと』は関係者から高い評価を得て、Covid-19流行終息後の上記団体での利活用、および市博物館「はちはく」の公式グッズ採用が予定されている。

  • 松井 佑之介, 今泉 博子, 田原 哲, 原 寛道
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_94-1_97
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    オフィスの観葉植物を、執務者自身が栽培し活用することは、業務間の気分転換や執務者同士の交流を促す効果が期待できる。これまで筆者らは、植物工場の栽培技術を応用した取り組みを進めてきた。その過程で、執務者が業務の合間で栽培に手間をかける状況には限りがあるため、植物の栽培をよりよい状態に維持するための栽培環境には課題があることが明らかとなった。よって、本研究では、執務空間であっても栽培環境を良好にすることを目指し、植物の葉面に滞留する空気に着目して、適切な気流を発生させ、自然環境に近い栽培環境を実現した。また、付随して生じる騒音も執務作業に支障がないレベルまで抑えることに成功した。

  • 形状変化インタフェースの開発と利用をつなぐリサーチプロダクト
    辻村 和正, 中野 太輔, 筧 康明
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_98-1_103
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

     本作品はコンベックステープと付属するアタッチメントから成る、携帯性、可変性、転用性を有するスペースディバイダ“Linecraft”の提案である。これは、ヒューマンコンピュータインタラクション分野で研究が進む形状変化インタフェースの空間領域に対するアプリケーション探索を行うリサーチプロダクトとして開発された。一般生活者がシステムの複雑さから解放され、自身のニーズや生活環境に合わせた理想的な空間作りの試作を即興的に実践することを支援する。本稿では、プロダクトの開発背景、デザイン工程、そして利用状況を述べ、最後に開発が行われた「研究室」と生活者がそれを利用する生活の「現場」とを繋ぐリサーチプロダクトとしての今後の展望を考察する。

  • 羽野 暁, 須長 正治, 中牟田 麻弥
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_104-1_109
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    2色覚は混同色の組合せを見分けることが難しく、正確に情報を識別できない視覚表示物が多々ある。従来のカラーデザインでは、まず3色覚が識別する色で配色し、その後2色覚が識別できる色へ補正する手法が用いられてきた。しかし、この手法では完全に混同色を補正することができず、十分なカラーバリアフリーを達成できなかった。
    本作品は、2色覚を基点にした新しいカラーデザインを実践したサインである。まず2色覚の識別色で配色し、次に3色覚の識別色に置き換える従来と逆の手順のカラーデザインを実践し、2色覚が確実に情報を識別できるカラーバリアフリーを達成するとともに、3色覚が違和感なく馴染むカラーデザインを実現した。2色覚を基点にしたカラーデザインは、色覚のマイノリティを基点にしたデザインである。本作品はマイノリティを基点にしたデザインを実践し、マジョリティにとって違和感のないデザインを実現したものであり、マイノリティとマジョリティに優しいインクルーシブなデザインの実現につながる作品である。

  • アーティスト活動を描くコンセプトと表現
    髙城 光
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_110-1_115
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    元鼓次郎(はじめ・こじろう 以下「鼓次郎」と表記)は和太鼓の演奏家や、音響技術者として活動するアーティストである。活動の内容と場の変化に合わせ、筆者は新しく活動のシンボルとなるロゴマーク[注1]をデザインした。
    一般的には、ロゴマークはブランディングの一環として計画されることが多く、顧客に対する提供価値の明示を目的とする。価値が視覚的に正しく伝えられ、その価値が実際に提供されることを通じて、顧客はブランドとのパーソナルな信頼関係を醸成するとされる。
    一方、アーティストの活動やファンとの関係の主体はアーティスト自身の人格、すなわちパーソナリティである。個人のパーソナリティは必ずしも明文化されないため、一貫性のあるブランドロゴのコンセプトと同様に扱えない。筆者はアーティストのパーソナリティに活動の周辺からアプローチし、新しいロゴマークをデザインした。

  • 野宮 謙吾, 柴田 奈美, 風早 由佳
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_116-1_121
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    竹久夢二の直筆原稿の分析により、筆跡の特徴を明らかにし、これを基にした平仮名書体の開発を試みた。
    まず、翻刻が存在し照合可能な資料として「ベルリン日記」(1932(昭和7)年~1933(昭和8)年頃、縦書き、鉛筆)を選択し、平仮名を採字した(47音、計1,048字)。
    次に、判読性が確保されながらも特徴的であること、正方形に対し収まりがよいことを条件に、各文字2〜4種に絞り込んだ後、骨格を抽出した。そして、抽出した骨格に対しエレメントの付加及び各部調整を行い、平仮名書体の原型を試作した。
    その結果、筆圧や抑揚の情報が欠落するため、夢二の筆跡の魅力が的確に表現できているか疑問の残ることが判明した。そこで、文字のアウトラインを忠実に抽出し、書体に反映させる手法を実験した。さらに、組み合わせる漢字書体を設定し、フォントデータとして完成させた。

  • 坂田 光輝, 曽我部 春香, 甲斐田 晴子
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_122-1_127
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
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    本作品は、佐賀県唐津市の唐津中央商店街内に2019年10月に開業した複合商業施設「KARAE/唐重」を拠点とした唐津観光を促進するために、まちづくり活動の中にデジタルマーケティングの手法を導入し、施設のプロモーションの戦略立案と施策実施を行ったものである。
    公式ホームページや各SNSの運用を通し、地元住民と観光客を対象に地域包含型の情報発信を行った。その結果、発信媒体毎の年齢・性別・地域性といったユーザー属性が明確化され、一般ユーザーとの情報交流の喚起を促した。
    施設を拠点とした地域包含型の情報発信は、施設近隣エリアへの周遊を高め、施設開業後、商店街の休日の来街者数が初めて平日を上回り、唐津観光への来街動機の創出と地域消費を促進する効果も確認された。

  • 若林 尚樹, 安齋 利典, 栗田 大輔, 木暮 亮
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_128-1_133
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    本作品は、会場における対面の参加者でもオンラインの参加者でも、同じようにファシリテータや学生スタッフと一緒に楽しむことのできる、対面とオンラインの融合を目指した次世代型オンラインワークショップである。音が伝わる仕組みからアナログとデジタルの違いを、紙芝居による解説や蓄音機で音を出す実験の映像を通してレコードの歴史とともに学び、アナログでの音の記録や音の出る仕組・原理への理解を深める。そしてフォノシートプレイヤーの工作キットを組み立て、自らの手でフォノシートを回しながらプレイヤーからの音を聴くことで、音が出る仕組みや楽しさを体験する。さらに、コロナ禍において実際に物事を体験する機会が少なくなった子どもたちのために、オンライン参加でも質問に対して実演で答えることなどにより、対面に近い体験ができる次世代型オンラインワークショップとして実施した。

  • 柴田 吉隆, 曽我 佑, 白澤 貴司, 大堀 文, 岩木 穣, 田中 久乃, 柳本 学
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_134-1_139
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    日立が主観的なアプローチで人の価値観変化を洞察する活動を始めて10年以上が経過した。2020年、COVID-19や気候危機の切迫した状況により不確実性が高まる中、ひとりひとりが議論を通じてめざしたい将来像を抱くことを促すツールとして「持続可能な社会のきざし」を作成した。人の価値観を対象とした未来洞察と客観的なアプローチによる未来予測との違いが理解されづらい状況を鑑みて、従来のプロセスに加え、未来洞察参画者のコロナ禍での日常的な思いを取り入れる「日々のできごとカード」、参画者以外が未来洞察の成果物の活用法をイメージしやすくするための「きざしの試用」を採用した。「持続可能な社会のきざし」は、将来の生活者による社会システムの捉え方の変化を記したものとなった。また、10年を経た性質の変化として、未来への視野を広げるだけでなく、望ましい未来を意識させるものとなっていることが見受けられた。

  • ペンギンを題材として鳥類の進化を学ぶ
    生田目 美紀, 北村 正美, 若月 大輔, 加藤 伸子, 小林 真, 宮城 愛美
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_140-1_145
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    博物館等の展示は視覚や聴覚に障害がある人にとってアクセスできない場合がある。例えば、ガラスで隔てられた水槽の様子は見えなければ理解できない。生態を解説してくれるショー形式の展示は聞こえなければ理解できない。このような背景から本研究は、事前学習によって展示に対する理解を促進し、視覚や聴覚に障害があっても展示を楽しめるようになることを目的とした。本稿では、フンボルトペンギンを通じて「鳥類の進化」を学ぶことができる教材の紹介と学習プログラムの開発過程を報告する。この教材は、盲学校やろう学校の教室で教師主導で行われる事前学習を想定し、改造を加えた安価な模型(ぬいぐるみ)と字幕や手話が付された動画(DVD)、ふりかえりカードと教師用の指導案とで構成した。開発過程の記録から、視覚あるいは聴覚に障害がある人にも対応可能な、ユニバーサルデザイン教材の知見をまとめる。

  • -誰もが楽しむことができる遊びに必要な6つの条件-
    小宮 加容子, 細谷 多聞
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_146-1_151
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    本稿では継続的に遊びの提案を行なってきた「あそびlab!オヘソ」の活動から得た知見に加え、障がい者アート活動の調査から得た情報をふまえた「誰もが楽しむことができる遊び」に必要な5つの条件を仮説的に考えた。これらは、遊び方、場づくり、道具選び、交流に関する条件であった。つぎに、この5つの条件をふまえた2つの遊びをアール・ブリュット展で実施した結果、障がい者、子ども、高齢者など、様々な人が楽しみながら遊びに参加する様子が観察できた。これら2つの遊びを見返すと、前提とした5つの条件にはない、集中や高揚といった条件がありそうなことがわかった。そこで、これらを充足する6つ目の条件を加えた新たな遊びを実施し、その効用を確かめた。本稿の結論として「誰もが楽しむことができる遊び」に必要な6つの条件を提示する。

  • 崔 烘碩, 森岡 大輔, アフィク ナズミ ビン アズニディン
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_152-1_155
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    入院患児を対象とした、VRストレスコーピングツールが病室周辺を飾ることや簡単な遊びで、体験者がストレスを緩和できるかを明らかにすることを目的とする。提案するツールは、患児がいる病室を再現した環境の中で、遠くのものを手元にもってくる、ものを生成させる、生成したものを無くす、周辺のモノや壁をお気に入りの色で塗る、色んな場所に現れた紙コップにボールを当てるゲームの機能で構成される。20代の健常者と子どもの13名を被験者とし、一般的な使い勝手や楽しいかどうか、臨場感を評価項目として行った。結果、すべての項目より高い評価を得ることができた。そして、看護専門家からもストレスコーピングツールとして高く評価された。このことから、入院患児のストレス軽減の有効性にもつながる可能性があることが示唆された。

  • −自発的な情報提供を目的としたユーザの行動や顔認識を中心に−
    金 尚泰, SHAO Bochao
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_156-1_161
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    近年、機械学習テクノロジーによる音声アシスタントであるSiriやAlexa、Googleなどの会話型音声支援システムが普及し、スマートスピーカーを始め、ウェアラブルデバイス・携帯端末・PCの中などで一般的な機能となっている。しかし、ユーザが情報提供を求める際には、必ず名称を呼ぶことで音声入力待機状態にさせる必要がある。名称を呼ぶ行為は簡単なことではあるが、より自然なHCI側面から考えると不自然な負荷がかかるタスクであり、実際日常生活の中でのユーザアシスト感覚とは掛け離れている。
    本研究では、システム側からユーザを識別・認識を行い、状況に合わせたタイミングで情報提供を行うシステム開発を試みた。ユーザの状況を判断し、システム側から能動的に入力待機状態になり、状況に合った情報発信を行う仕組みである。本システムは、コストの面で有利である汎用LiDARセンサーとWEBカメラを組み合わせ、ユーザの行動判断・顔面認識を用いて実現した。今後、音声によるスケジュール管理やホームトレーナー、ICT教材と連携した音声学習支援などへの活用が期待できる。

  • 稲田 和巳, 金 尚泰
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_162-1_167
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    脈波・血圧・呼吸・体温などの生体信号は人の内的状態を反映して変化し、コミュニケーションの新たな要素となることが期待されている。これらの情報は当人にとってはセンシティブなものであるため、これを上手く利活用につなげる例外的状況の探究が進められている。また従来の生体信号の測定・提示技術は医用的な背景が強く、日常生活の中で誰でも直感的に利用できる手法の検証も必要である。
    本研究では生体信号の活用可能性がある場面としてゲームコンテンツへの組み込みに着目し、これに必要な技術的およびデザイン的要素を、実際にコンテンツを試作し評価実験を行うことで考察した。実験結果からは特に、測定精度とユーザ体験のバランスや、測定結果のフィードバックの必要性について知見および課題が得られた。

  • 福本 塁, 東海林 和代
    2021 年 27 巻 1 号 p. 1_168-1_173
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/19
    ジャーナル 認証あり

    本作品は、ツキノワグマの出没件数が増加傾向にある近年において、クマ被害の発生原因や予防方法を市民に啓発するためにクマ出没情報の実態をわかりやすく周知するツールとして開発したものである。「操作・表示」「実態把握」「動機理解」の3要素において、時間的・空間的に理解を促す機能実装とインターフェースデザインを加え、ユーザーの直感的な操作を通じてクマ出没情報の実態について認知・理解を促すことが可能となっている。
    本報告では、本作品のデザインプロセス、概要、利用の流れを紹介し、本作品の途中経過として位置づけられるプロトタイプについて、多様な世代の利用者を対象にした評価結果について報告する。

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