障害科学研究
Online ISSN : 2432-0714
Print ISSN : 1881-5812
42 巻 , 1 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
原著
  • 岩本 佳世, 野呂 文行, 園山 繁樹
    2018 年 42 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究の第一の目的は、小学校通常学級の朝の準備場面に相互依存型集団随伴性に基づく支援を適用し、学級全児童の準備行動に対する効果を検討することであった。 また、自閉スペクトラム症( ASD) 児童について、集団随伴性に基づく支援のみで行動変容を促すか検討することを第二の目的とした。対象者は、公立小学校の3 年生の 3 学級の児童であった。各学級の児童数は32名で、1 名ずつASD児童が在籍していた。 準備行動とは、午前8 時15分までにロッカーにランドセルを入れることと着席すること、午前8 時30分までに連絡帳を書いて担任の机に持って行くことであった。学級間多層ベースラインデザインを用いて、学級全児童のランドセルをロッカーに入れる準備行動に対する効果を検討した。その結果、3 学級の全児童の準備行動が遂行できるようになった。ASD児童2 名は、特別な支援がなくても準備行動が改善した。相互依存型集団随伴性に基づく支援の適用によって、準備行動の改善が困難であるASD 児童1 名が抽出され、その後に個別支援を行った。このことは、学級全体に対する相互依存型集団随伴性に基づく支援が、スクリーニング機能も果たしたと考えられた。

  • 判断する視点による影響の検討
    岡村 恵里子, 岡崎 慎治, 大六 一志
    2018 年 42 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では8 ~18歳の自閉スペクトラム症(ASD)のある児童生徒16名と定型発達(TD)児童生徒37名を対象に、第三者視点および行為の受け手視点、行い手視点からの道徳的判断を実験的に検討した。道徳的判断では、ポジティブまたはネガティブな行い手の意図と行為の結果を変数とした物語を使用した。その結果、ASD児童生徒はTD児童生徒と同様に、意図と結果の両方を考慮し、視点に応じて判断を変えていた。 ただし、意図と相反するネガティブな結果が生じる条件では、特に受け手視点において、ASD 児童生徒はポジティブな意図よりもネガティブな結果を重視して判断をしていた。

  • 烏雲畢力格 , 柘植 雅義
    2018 年 42 巻 1 号 p. 29-42
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究は自己調整方略の主要な要素であるメタ認知の調整、行動の調整、環境の調整に含まれている6 つの方略を用い、知的障害者の作業遂行力を促進する自己調整方略の尺度を作成することを目的とした。併せて知的障害者の就労における自己調整方略の使用の実態を検討した。既存の尺度や、職員に対する調査から項目を収集し、また内容的妥当性の検討を経て項目を選定した。このように収集・選定された項目を基に、成人期知的障害者366名を対象に調査を実施した。その結果、48項目からなる知的障害者の就労における自己調整方略尺度が作成された。因子分析の結果、この尺度は、(1)「目標設定」 「柔軟的調整」「援助要請」「作業方略」「環境の管理」の5 つの下位尺度から構成されていること、(2) 得られたα係数値から尺度の信頼性が示されたこと、(3)「作業方略」 「援助要請」「柔軟的調整」「目標設定」「環境の管理」の順に得点が高いことが、それぞれ確認された。

資料
  • 刺激フェイディング法を用いた指導効果
    岩本 佳世, 高橋 甲介
    2018 年 42 巻 1 号 p. 43-53
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、選択性緘黙を示す自閉スペクトラム症児童1 名に対し、「人」「場所」 「活動」ごとに発話状況をアセスメントし、その情報に基づいた順序で刺激フェイディング法を用いた発話指導を行い、通常学級場面での対象児の発話が改善するかどうか検討することを目的とした。このアセスメントでは、担任と母親へのインタビューや行動観察の結果から、対象児が話しやすい順序を決定した。第一段階として、発話が生起しやすい「遊び」の活動で発話指導を行い、指導の場所を大学のプレイルームから自閉症・情緒障害特別支援学級、通常学級へと段階的に移行した。この指導で発話が改善した後に、第二段階として発話が生起しにくい「スピーチ」の活動で発話指導を行い、指導の場所をプレイルームから通常学級に移行した。その結果、対象児は通常学級場面での遊びとスピーチの活動において、担任に対して発話できるようになった。本研究の結果から、選択性緘黙を示す自閉スペクトラム症児童に対する「人」「場所」「活動」ごとの発話状況のアセスメントに基づく支援は、通常学級場面での発話の改善に有効であることが示唆された。

  • 1908(明治41)年〜1935(昭和10)年
    立浪 朋子, 岡 典子
    2018 年 42 巻 1 号 p. 55-68
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、1908( 明治41) 年から1935( 昭和10) 年までの時期を対象に、石川県育成院(以下 , 育成院) における低能児の顕在化および特別低能学級が開設された過程を明らかにすることを目的とする。 育成院では、大正後期に低能児の存在が明確に認識された。その後、昭和期に入ると子どもへの知能測定が行われるようになる。低能児への特別な学級が開設されるのは、1935( 昭和10) 年頃に特別低能学級が設置されてからであり、全国の先駆的な地域と比べると比較的遅かったと言える。その主な原因として、低能児、あるいは精神薄弱児とみなされた子どもの数が少なかったことが考えられる。 特別低能学級の開設は遅かったものの、学科についていけない子どものためには大正期から学力別の学級編成を実施し、彼らの学力に合った教育を行おうとしていた。

  • 宮内 久絵
    2018 年 42 巻 1 号 p. 69-79
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究は、イギリス国内で市が全面的に関与する初めての事例となったシェフィールド市における盲児のインテグレーションの実態と、その成立条件を明らかにすることを目的とした。シェフィールド市は、従来より、障害児の教育の場をめぐっては柔軟な考えを有していたが、盲児のインテグレーションの考案から実働まで中心的役割を担った盲学校校長トゥーズや支援員ウィテカーなどのカリスマの出現は必要条件であった。また同実践が一部の関係者のみならず、地域住民や行政を巻き込んだ一大プロジェクトとなった一つには、1960年代に教育的・社会的趨勢となっていた中等学校改革と連動していたことも挙げられる。同実践は教育そして社会全般の改革を意図した大きな動きの中で実施されたのであった。

  • 真名瀬 陽平, 藤原 あや, 朝岡 寛史, 野呂 文行
    2018 年 42 巻 1 号 p. 81-90
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、指を用いて引き算を行う自閉スペクトラム症児2 名に対してCover−Copy−Compare (以下、3C学習法) を用いた指導を行い、3C学習法が有効であるのかを検討した。また、3C学習法が計算の自動化を促進する機能をもつのかを検討することを目的とした。ベースラインでは、対象児は計算を行うことが求められた。介入では、3C学習法を用いた。プローブではベースラインと同じ手続きで行い、指導効果が維持するかどうかを維持期で評価した。その結果、3C学習法を行うことで、両対象児とも指を使わず計算課題の答えを想起して表出することができる様子が見られた。一方で、維持については、対象児によって違いが見られた。以上の結果から、3C学習法が計算課題の自動化を促す指導機能をもつこと、対象児の認知特性によっては、指導の効果に違いが見られることが示唆された。今後、対象児の特性に合わせた指導法を検討する必要性が挙げられた。

  • 経験者への質問紙調査から
    奥村 真衣子, 園山 繁樹
    2018 年 42 巻 1 号 p. 91-103
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、選択性緘黙の経験者に学校生活上の困難と教師の対応に関する質問紙調査を行い、選択性緘黙の児童生徒が抱える困難を明らかにするとともに、より望ましい対応を検討することを目的とした。対象者は、選択性緘黙の当事者会に所属する会員48名であり、回答のあった22名を分析対象とした。自由記述の質的分析から、困難場面は音読や指名時の発言などの直接的な発言場面の他に、グループ活動や体育、休み時間、行事など、本人が主体的に行動したり、対人関係が影響したりする活動にも困難があることが明らかになった。困難状況においては、クラスメイトからの孤立、身体動作の抑制、困難を回避するための欠席といった参加機会の制限が見られた。また、教師には選択性緘黙に対する正しい理解は言うまでもなく、発話や参加を強制しないこと、発話に代わる表現方法の許可、孤立を防ぐための働きかけ、自主的に動けないときの声かけ等を行う必要があることが示唆された。

  • 湯浅 哲也, 加藤 靖佳
    2018 年 42 巻 1 号 p. 105-113
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、重度聴覚障害者の発話及びポーズの時間的特徴について明らかにするために、100dBHL以上の聴覚障害学生10名及び健聴学生10名を対象に、文章の音読を通して得られた音声資料について、音響音声学的に検討した。その結果、健聴学生よりも速い発話速度を示す重度聴覚障害学生の存在が認められた。その反面、従来の聴覚障害者を対象とした先行研究の知見と同様、発話速度の低下がみられる者が確認された。すなわち、100dBHL以上の重度聴覚障害を有しても、多様な発話速度を示す者の存在が認められた。さらに、重度聴覚障害学生の発話は、文中ポーズ回数が多い一方で、健聴学生よりもポーズ時間が短く、発話全体に対するポーズ時間の割合が少ないことが明らかになった。そのことは、音声言語を用いる重度聴覚障害者の中には、従来課題とされていた音節に対する調音運動の時間が短縮している者の存在が示された。また、速い発話やポーズ時間の短さは、聴覚障害者の発話の不明瞭性の一因となり得る可能性も考えられた。

  • 主に使用するコミュニケーション手段の違いによる検討
    三枝 里江, 鄭 仁豪
    2018 年 42 巻 1 号 p. 115-124
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、聴覚障害学生68名を対象にコミュニケーション手段の使用状況とその満足度、満足度が損われる要因について検討した。対象者は、主なコミュニケーション手段により、口話優位群と手話優位群に分けられた。その結果、コミュニケーション手段の使用状況では、口話優位群は、手話ができる聴者に対しても口話を使用する一方で、手話優位群は手話ができる相手には手話を、手話ができない相手には筆談を使用することが示された。満足度においては、手話優位群は、手話ができる相手に対して満足度が高く、口話優位群も手話ができる聴覚障害者の友人や教職員に対して満足度が高かった。満足度が損われる要因は、「内容理解」、「手段」、「障害理解」、「心理的負荷」の4 つに分類され、口話優位群も手話優位群も、「内容理解」における伝達面の困難さが満足度に影響を及ぼしていることが示された。

  • 竹内 博紀, 安藤 隆男
    2018 年 42 巻 1 号 p. 125-138
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、肢体不自由教育を先進的に牽引してきた東京都立光明特別支援学校における進路指導が、児童生徒の障害が重度・重複化する過程において、その目的・内容をどのように変化させてきたのかを明らかにすることである。高等部卒業後の進路状況及び生徒の実態の変化に着目し、教育課程上での進路指導の位置づけの変遷を時系列で分析した。生徒の疾患は、脳性まひが徐々に減少するが、代わって脳性まひ以外の脳原性疾患の割合が増え、結果的に脳レベルの疾患が高い比率を占めている。 これによって、進路状況は、進学や就職が大幅に減少し、社会福祉施設への入所・通所が急速に増加した。ADLの自立度も年度を追うごとに低下しており、障害の重度・重複化が表面化したことが分かった。このような生徒の実態の変化に伴って、主に進学や就職を目指した進路指導から、一人一人の生徒の実態に応じ、幅広い多様な進路を前提とした進路指導へと変化した。

  • 門脇 弘樹, 菊池 志乃, 牟田口 辰己
    2018 年 42 巻 1 号 p. 139-149
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    視覚障害者19名を対象に、動画解析ソフトを用いて読指運動軌跡の特性を定量的に明らかにすることを目的とした。その結果、読速度が両手、右手、左手全ての読み方において300文字/分を超えた参加者の片手読み軌跡は左から右への水平な軌跡を示した。一方、読速度が100文字/分未満の参加者の読速度の遅い手の読指運動軌跡は、垂直方向への上下運動や、逆行運動が頻繁に見られる不規則な軌跡を示していた。読指運動軌跡の長さを示す周長および垂直移動範囲に関して、読速度が100文字/分未満の参加者は100文字/分以上200文字/分未満と200文字/分以上の参加者と比較して周長が有意に長く、100文字/分未満と100文字/分以上200文字/分未満の参加者は200文字/分以上の参加者と比較して垂直移動範囲が有意に広いことが明らかとなった。本研究で用いた解析法により、点字触読の詳細な動きを記録することができ、新たな視点から触読効率を高める可能性が期待された。

  • 教育センターによる初任者研修プログラムとの比較から
    内海 友加利, 安藤 隆男
    2018 年 42 巻 1 号 p. 151-162
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究は、肢体不自由特別支援学校における初任者研修について、内容、形態、指導者、対象者等の視点から分析するとともに、同年度に実施された校外研修と比較し特徴を明らかにした。対象校の初任者研修では、基礎的な知識の提供に関する内容が多くを占める一方で、授業研究など実践的な内容も取り組まれた。分掌担当教員など様々な教員が初任者研修の指導に携わっており、学校組織の多様な構造や運営を理解することが求められていた。対象校が独自に設定したものとして、在籍する児童生徒の障害が重度化、重複化する中で、医療的ケアや自立活動の指導に関する内容に特徴が見出された。児童生徒の多様なニーズに向き合うためにはティーム・アプローチが重要となることから、普段からかかわりのある教師集団の中で、若手教員の専門性育成に向けた校内研修を考究することが求められる。

  • 古山 貴仁, 川間 健之介
    2018 年 42 巻 1 号 p. 163-172
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    二分脊椎症は、先天的に脊椎骨が形成不全となって起こる神経管閉鎖障害の1つであり、脳と脊髄の機能不全により神経学的認知特性を伴う。教科学習においても、これらの認知特性が要因となり、学習上の困難を呈すると思われるが、二分脊椎症児の学習の困難さに焦点を当てた研究は少ない。本研究では、二分脊椎症児12名を対象に、認知特性が算数学習に及ぼす影響について検討を行った。二分脊椎症児の知能検査(WISC-Ⅳ) の指標得点の分析を行った結果、全検査IQは標準の範囲内であるが、知覚推理・処理速度の指標得点の低さが指摘された。また、教研式標準学力検査( CRT)を用いた算数の学習習得状況の把握を行い、WISC-Ⅳの指標得点との相関関係を検討した結果、知覚推理と図形関連の問題の間で正の相関がみられた。これらの結果から、二分脊椎症児の算数学習において、図形や計算等の処理に困難さが見られることが示唆される。

  • 教育実践論文の文献調査から
    長野 実和, 川間 健之介
    2018 年 42 巻 1 号 p. 173-183
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では重度・重複障害児を対象とした教育実践論文を概観し、①対象児の実態把握の際に使用しているツールの有無とその名称を明らかにするとともに、②ツールと指導目標設定の方法との関係の整理を通してツールを使用することの課題と可能性を考察した。実態把握において心理検査や発達段階に基づくチェックリスト、対象児の情報の整理・共有のためのツール、各学校で独自に作成したツールを使用している教育実践がみられその有用性が挙げられた。一方ツールと各教育実践における指導目標設定の理由を照らし合わせた結果、ツールの種類によって指導目標設定の理由が異なる傾向が示され、教育実践論文の記述内容からツールには子供をみる教員の視点を限定する危険性があることが示唆された。この危険を避けツールを有用なものとするためには、各学校がツールの特性を理解し、「個別の指導計画」作成のサイクルにおける位置づけを明確にすることが重要である。

  • 肢体不自由特別支援学校通学区域に着目して
    三嶋 和也, 内海 友加利, 池田 彩乃, 安藤 隆男
    2018 年 42 巻 1 号 p. 185-196
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究は、特定の地域における義務教育段階にある肢体不自由児の就学先ごとの彼らの障害の状態等の実態を明らかにした。肢体不自由特別支援学校とその通学区域にある小・中学校の通常学級、知的障害特別支援学級、知的障害特別支援学校を対象に質問紙調査を実施した。その結果、障害部位では、どの形態においても下肢障害の割合が最も高かった。移動の自立度が高い児童生徒が通常学級に多く在籍するのに対して、肢体不自由特別支援学校では、独歩や移動の自立度の割合が低かった。また、肢体不自由特別支援学校では、独歩の割合は中学部段階で増え、自立度も高くなる傾向があることから、小学校等から肢体不自由特別支援学校の中学部へと就学先を変更している可能性が示唆された。本研究において得られた結果は地域における肢体不自由児の多様な学びの場における指導の連続性を考究する基礎的な資料となると考えられる。

短報
  • 日野 雅子, 岡崎 雅, 北澤 拓哉, 末吉 彩香, 烏雲畢力格 , 柘植 雅義
    2018 年 42 巻 1 号 p. 197-205
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では成人した発達障害のある子を持つ母親5 名に面接を行い、我が子の小学校期を想起して当時担任や学校に対しどのような支援ニーズを持っていたのかを明らかにした。その結果、第1 に母親らは子どもが直面している困難に対し教員が速やかに適切な支援をしてくれることを望んでいた。また保護者が相談しやすい体制を校内に整え、学校内外の各種相談窓口を紹介して欲しいと考えていた。第2 に本人の発達障害に起因する特性を教員が理解し、保護者が悩む気持ちに共感して欲しいと考えていた。学校生活におけるさまざまな困難について、医師・教員と母親・本人の考えには乖離があり、保護者の支援ニーズを教員に理解してもらうのは難しかったことが示された。第3 に母親は直面している困難への支援のことだけではなく、本人の将来のことも考慮して支援策を検討して欲しいと考えていた。これら3 点は子どもが成人した今も保護者が重要だと考えている支援である。

  • 吉井 鮎美, 岡崎 慎治, 中野 泰伺, 髙橋 由子, 寺田 信一
    2018 年 42 巻 1 号 p. 207-215
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症( autism spectrum disorder: ASD) 児の単文意味処理の特徴を明らかにすることを目的に、ASD児と定型発達( Typically Developing: TD) 児、TD成人を対象として、文意にあてはまる単語の想起を求める単語想起課題を、動詞条件と目的語条件を設定し実施した。まず、単語の想起数と誤答についてTD児とTD成人の比較を行った。その後同様に、ASD児とTD児の比較を行った。その結果、TD児とTD成人との間に結果の差は認められなかった。ASD児はTD児と比較して、目的語条件において単語の想起数が有意に少なかった。また、ASD児は誤答において、修飾する語を加えて場面を限定したり、具体的に表現したりする特徴がみられた。以上のことから、ASD児は、単語の意味記憶を検索する段階の部分処理の亢進があること、単文全体の意味を統合することの弱さがあることが示唆された。

  • 帰国後の研修員を対象とした質問紙調査を通して
    左藤 敦子, 安藤 隆男, 四日市 章
    2018 年 42 巻 1 号 p. 217-226
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    国際教育協力機構および筑波大学附属特別支援学校5 校との連携のもと、ボリビア多民族国の研修員を対象に2012年度に教育実践型の本邦研修を実施した。本稿においては、帰国後の研修成果を検証するために、プログラムに参加した研修員を対象に研修の評価にかかわる質問紙調査を行った。その結果、研修の目的としていた「指導案の作成」「個別の指導計画作成」「子どもの実態把握」「教材教具の活用」「授業研究」等については、帰国後も継続されていることが明らかとなり、教員の専門性の向上に努める姿勢がうかがえた。さらに、より深い学びに関する要望として、「重複障害」「早期教育」「進路指導・職業教育」等の内容が挙げられており、日本の特別支援教育が直面している課題と類似した側面がみられた。 今後、研修後に自国で展開されている教育実践例を蓄積することによって、より充実した研修プログラムの構築への示唆が得られると考える。

展望
  • 趙 成河, 園山 繁樹
    2018 年 42 巻 1 号 p. 227-236
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究では、選択性緘黙の有病率に関する先行研究を概観し、有病率の推定値とその根拠資料を把握することを目的とした。対象とする先行研究は英文および和文の学術誌に掲載された選択性緘黙の有病率を調査した論文を選定した。選定基準に適合した16編の論文を分析対象とし、12の項目について分析した。調査研究の対象年齢は3.6~17歳で、有病率は0.02~1.89%であった。また幼稚園および学校で調査を実施した論文が12編、クリニックで実施した論文は4 編であった。選択性緘黙の診断基準としてDSM-III-Rを用いた論文は1 編、DSM-IVを用いた論文は8 編、DSM-5を用いた論文は1 編、記載のない論文は6 編であった。和文誌は4 論文と少なく、最近の日本の選択性緘黙の有病率に関する大規模の調査は見当たらず、今後、日本における選択性緘黙の現状を把握する必要がある。また、今後の研究では選択性緘黙の発症時期について検討する必要がある。

  • 西木 貴美子, 塩川 宏郷
    2018 年 42 巻 1 号 p. 237-245
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    本稿は、表情認知に関する研究の動向、特に非行少年や成人犯罪者における表情認知に関する研究の現状と課題について整理・検討を行った。その結果、1) Darwin (1872) 以降、膨大な数の表情認知に関する研究が行われ、各研究が互いに関連しあいながら発展を続けている、2) 表情認知は乳児のころから行われているが、障害の有無や成育環境が表情認知の発達に影響を与えている、3) 表情認知研究全体に対し、非行少年や成人犯罪者を対象とした研究は数少ない、4) 非行少年や成人犯罪者は表情認知に何らかの困難を抱えている、5) 非行少年に対する表情認知トレーニングは再犯防止に効果をもたらす可能性がある、ことが報告されていた。非行少年の表情認知に関する研究の今後の課題として、研究対象者の属性の統制、検査課題数の検討、トレーニングによる表情認知スキルの改善とその過程の解明の検討の必要性を指摘した。

実践報告
  • 佐々木 銀河, 青木 真純, 五味 洋一, 竹田 一則
    2018 年 42 巻 1 号 p. 247-256
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2018/10/06
    ジャーナル フリー

    大学の障害学生支援部署で修学支援を受ける発達障害のある学生9名を対象に、学生による修学支援の効果評価を予備的に実施した。研究の目的は、修学支援の効果を肯定的に評価した学生および修学支援の効果が見られなかった学生の特徴を明らかにすることであった。各学生に対して支援開始前(4~6月)および支援を行った後(翌年1~3月)において修学支援の効果に関するアンケートへの回答を依頼した。その結果、修学支援の後にアンケート得点の有意な増加が見られた。修学支援の効果を肯定的に評価した学生の特徴として「音声の聞き取り」や「時間管理」に関する課題を有していたことが明らかとなった。一方で、支援の効果が見られなかった学生では「講義の出席」に関する課題を有していた。今後は、講義に出席すること自体に困難を有する学生への修学支援のあり方について検討すること、修学支援の効果評価における信頼性や妥当性を向上させることが課題として挙げられた。

feedback
Top