障害科学研究
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43 巻 , 1 号
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資料
  • -障害者福祉新聞における言及を中心に-
    吳 允煕, 岡 典子
    原稿種別: 資料
    2019 年 43 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究では、韓国における自立生活理念の導入に関して、障害当事者がどのような状況の中で、自立生活理念を受け入れるようになったかを検討した。検討結果は、以下の通りである。1.障害者問題の解決のため、青年障害者が新聞を創刊し、自らの声を主張した。2.青年障害者は、当時障害者の入所施設での非人権的な処遇、職業及び社会への参加制限などの問題に限界を感じていたところ、自立生活理念と出会う。3.自立生活理念は、当初研究者らによって、海外のプログラムとして紹介された。しかし、その後国内外の障害当事者によって、従来の障害者保護や差別とは異なる、障害者の自己決定を尊重する画期的な理念であることが紹介され、韓国での導入の可能性が高まった。

  • -河南省鄭州市における検討-
    王 青童, 竹田 一則
    原稿種別: 資料
    2019 年 43 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究は、中国において、長期入院している小児がん患児の保護者への調査を通して、小児がん患児に対する教育の現状と、特別な教育的ニーズを明らかにすることを目的とした。入院している子どもと保護者は、復学について積極的な考え方を持っているものの、学校教育に対する様々な不安感が大きかった。このことから、中国において通常学校での病気のある子どもに対する心理的支援、病気に対する理解などの必要性が明らかとなった。また、現在の中国における病院内の病棟学級は教育的な機能が不足しており、入院児の保護者の理解や認識も十分ではなかった。病棟学級の教育担当者の専門性のより一層の向上と医療との連携にもとづき、今後、中国においても病棟学級の教育内容の充実を図っていくことが必要であると思われた。

  • -称賛の条件性強化子成立を通して-
    青木 康彦, 野呂 文行
    原稿種別: 資料
    2019 年 43 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究では、自己刺激行動が多くみられ、食べ物、玩具を強化子とした随伴ペアリングによって、称賛の条件性強化子が成立しなかった自閉スペクトラム症児に対して、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした称賛の条件づけを実施し、その効果を検討することを目的とした。指導では、標的行動が生起した際に、日常生活で聞いた経験の少ない称賛コメントと自己刺激性強化子を産出する玩具を同時に与えた。その結果、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした随伴ペアリング後において、12ブロックの間、称賛は強化子として拍手の生起頻度を高めた。また、随伴ペアリングを行なっていない他の行動についても、ベースライン期よりもペアリングⅡ期後の称賛期で生起頻度が高いという結果が得られた。本研究の結果から、自己刺激性強化子を産出する玩具を強化子とした称賛の条件づけの有効性が示唆された。

  • 奈良 里紗, 小林 秀之
    原稿種別: 資料
    2019 年 43 巻 1 号 p. 33-46
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究では、視覚障害特別支援学校の早期教育相談における相談内容に対するベテラン教師の自己効力感に影響を与えた契機について明らかにすることを目的とした。参加者は1)早期教育相談担当経験が7年以上、2)教育相談に関する分掌の主任経験者、3)視覚障害領域の特別支援学校教諭免許状を保有する教師12名で、相談内容別に効力感契機を半構造化面接により尋ねた。質的分析手法により616件の契機が抽出され、これらをカテゴリ化した結果、65個の小カテゴリからなる8個の大カテゴリが生成された。視覚に関連する相談、育児相談、発達相談、心理的な相談は、日々の教育活動や研修、就学相談は就学指導委員会、地域の幼稚園等への支援は巡回の経験、医療に関する相談は他職種との連携により、それぞれ自己効力感を高めていることが特徴的であった。

  • 相羽 大輔, 奈良 里紗, 増田 雄亮, 鈴木 祥隆
    原稿種別: 資料
    2019 年 43 巻 1 号 p. 47-58
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究は、弱視学生が見えにくさを補う手段(弱視レンズ条件・接近視条件・タブレット条件)を使いながら学習・生活する様子を画像で提示した場合に、それらが健常学生の態度に及ぼす効果の違いを検討した。382名の健常学生に対し、弱視学生の画像付き説明文に基づく3条件を無作為にひとつ提示し、障害者イメージ尺度(不便さ尺度・尊敬尺度)、弱視学生支援サービス尺度(授業支援尺度・成績評価尺度・組織支援尺度)への回答を求めた。その結果、タブレット条件と接近視条件のときの方が不便なイメージになったものの、弱視学生支援に関するすべての下位尺度でタブレット条件のときの方が他の条件よりも消極的な評価になった。また、健常学生は女子の方が男子よりも肯定的なイメージを持ち、弱視学生支援に対する態度もすべての下位尺度で肯定的であった。これらの結果が弱視学生の障害開示や援助要請を補助する手立ての手がかりになるものと示唆された。

  • -学級担任等への聞き取り調査を通して-
    木村 素子
    原稿種別: 資料
    2019 年 43 巻 1 号 p. 59-72
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究は、宮崎県の特別支援学校に在籍する聾重複障害児の在籍状況とその児童生徒の実態について、聞き取り調査を通して明らかにしたものである。宮崎県では、特別支援学校全在籍者の3.15%が聾重複児であり、その70%が知的障害特別支援学校や知的併置校に在籍していた。聴覚特別支援学校の在籍児では、重度・高度難聴の者が多く補聴機器を装用しており、知的障害の程度は軽度の者が比較的多かった。一方、知的障害特別支援学校や知的併置校の在籍児では、知的障害の程度の重い者が多く、難聴の程度は中等度・軽度の者が多かったが、知的障害特別支援学校に限れば60%が重度・高度難聴の者であり、手話や絵カード等の視覚的支援が常時必要と思われる児童生徒であった。知的障害の特別支援学校では、その教職員の専門性、学級編制、授業形態等から、重度・高度難聴の聾重複児に十分なコミュニケーション環境が保障されにくいことが示唆された。

  • -弱視通級指導担当教員を対象とした面接調査から-
    二宮 一水, 佐島 毅
    原稿種別: 資料
    2019 年 43 巻 1 号 p. 73-85
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究は、弱視児童のための通級による指導担当教員を対象とし、通常の小学校で学ぶ弱視児童の図画工作における刃物の使用の困難さと指導の工夫について明らかにすることを目的とした。その結果、刃物の使用における困難としてはさみで4カテゴリー、カッターナイフで5カテゴリー、彫刻刀で3カテゴリー、のこぎりで3カテゴリー、電動糸のこぎりで5カテゴリー、刃物の使用における指導の工夫についてはさみで5カテゴリー、カッターナイフで4カテゴリー、彫刻刀で4カテゴリー、のこぎりで6カテゴリー、電動糸のこぎりで7カテゴリーが得られた。1つの項目に対して6名の教員から共通してあげられたものは多い項目で4件、ほとんどが1件であったことから、弱視児童の刃物の使用の困難や指導の工夫は個々に対応することが重要である。また、個の項目で共通するカテゴリーがみられたことは個に応じた困難を把握し指導の工夫を行う視点として重要である。

  • -定型発達成人におけるADHD傾向との関連から-
    中野 泰伺, 岡崎 慎治
    原稿種別: 資料
    2019 年 43 巻 1 号 p. 87-97
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    成人23名をADHD傾向の高低により群分けし、各群で呈示刺激の違いがStop-signal課題遂行時の行動成績およびERPにどのように影響するかを検討した。課題では、Go刺激とStop刺激の組合せが異なる2条件(クルマ刺激条件と記号刺激条件)を設定した。その結果、行動成績では、クルマ刺激条件およびADHD傾向高群における左右エラー率の上昇がみられた。ERPでは、ADHD傾向高群におけるGo-N2振幅値の低下、SST-N2振幅値の低下、およびSST-P3潜時値の有意な短縮を認めたが、刺激条件による差はみられなかった。行動成績およびGo-N2振幅値の結果から、Go刺激の弁別難易度の違いが反応制御に影響することが示唆された。また、SST-N2振幅値の結果から、刺激条件にかかわらず、ADHD傾向高群では傾向低群に対して反応抑制の困難さが示唆された。一方で、SST-P3潜時値の結果から、Go刺激とStop刺激との間の意味的関連性の操作により、ADHD傾向高群におけるStop刺激に対する反応制御処理が促進される可能性も示唆された。

  • -移動指導プログラムの検討のための予備的調査として-
    本間 貴子, 杉田 葉子, 根本 文雄, 米田 宏樹
    原稿種別: 資料
    2019 年 43 巻 1 号 p. 99-116
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    知的障害児の移動指導プログラムを検討するための調査として、A知的障害特別支援学校に在籍する児童生徒の移動に関するニーズに関する質問紙調査をした。その結果、「小学部から高等部段階まで放課後に自宅外で過ごすことが多いこと」、「保護者が高等部段階まで子どもの生活の広がりや交通機関の利用の拡大に合わせて指導を担う一方で、保護者は指導を受けられるサービスについては知らないということ」、「混雑した場所における移動スキルやトラブルへの対応力等の大都市圏中心市に特徴的な課題が日常的に生じていること」、「スピードを出している自転車や歩行者への注意力などの歩道におけるニーズが高いこと」、「困った時の対応力のニーズが高いこと」等が明らかになった。95%以上の保護者が子どもが移動指導を受ける機会を望んでいた。

短報
  • 森地 徹, 大村 美保, 小澤 温
    原稿種別: 短報
    2019 年 43 巻 1 号 p. 117-124
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    学齢期の障害児の放課後等の活動を支援するための事業として、2012年4月より障害児通所支援の1つとして放課後等デイサービスが児童福祉法の中に位置付けられているが、現状として支援の質の向上の検討はおろか対象児の属性に応じて提供されている支援の特徴についても明らかにされていない。そこで、本研究では全国の放課後等デイサービスの事業所を対象に対象児の属性に応じて提供されている支援の特徴についてアンケート調査を通して明らかにすることとした。その結果、職員の専門性やサービスの質的側面までは明らかにすることはできなかったものの、利用児の障害種別、学年、所属学校形態ごとに提供されている支援に特徴があり、サービス内容に違いがあることが明らかになった。その上で、今後質の高い支援が行われているかということに関して、提供されているサービスの専門性や質について研究を通して明らかにしていくことが必要になると考えられる。

展望
  • 藤原 あや, 園山 繁樹
    原稿種別: 展望
    2019 年 43 巻 1 号 p. 125-136
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究では、わが国の幼稚園や保育所における場面緘黙幼児の支援に関する先行研究を概観し、保育場面における支援の在り方を検討することを目的とした。対象とした先行研究は、和文の学術誌および学会発表論文集に掲載された、幼稚園や保育所において場面緘黙の幼児への支援を実施している研究であった。そして、選定基準に適合した学術論文5編と学会発表論文集掲載論文5編を分析対象とした。対象児の年齢は2~6歳であり、対象児の多くは発話がないだけでなく、過度の緊張や集団活動や遊びに自分から参加しないといった特徴が見られた。保育者または外部支援者によって、話すことに関する支援、及び園生活や保育活動に関する支援が実施されていた。これらの支援を通して、対象児の発話や保育活動への参加の改善が見られた。しかし、分析対象とした学術論文は5編と少なく、今後は海外の保育場面における場面緘黙幼児の支援の現状を把握する必要がある。

  • -指文字獲得過程と語彙獲得の側面から-
    井口 亜希子, 原島 恒夫, 田原 敬
    原稿種別: 展望
    2019 年 43 巻 1 号 p. 137-148
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    指文字は、表記文字に対応した手型であり、それにより単語を視覚的に綴ることができる。本稿では、聴覚障害幼児の初期言語獲得における指文字の役割について検討する基礎的な資料とするため、指文字の性質と特徴を整理した上で、聴覚障害児の指文字の獲得過程、語彙獲得における指文字の役割について、欧米圏と我が国の研究を概観した。米国を中心に乳幼児期の指文字獲得過程や、親や教員による語彙獲得や文字移行を意図した指文字の使用方略に関する検討が進められている。我が国においてはそれらの研究が進んでおらず、日本の指文字の特徴を踏まえた指文字獲得過程や、日本語の語彙獲得における指文字の使用方略とその効果について検討する必要がある。特に語彙獲得における効果が期待される指文字と複数のモダリティ(手話単語、文字、音声言語等)を組み合わせた提示方略について、聴覚障害幼児の言語獲得等と関連させた研究が求められる。

  • -海外の先行研究との比較を通して-
    前田 真理子, 小島 道生
    原稿種別: 展望
    2019 年 43 巻 1 号 p. 149-162
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    ダウン症児への読み書き指導は、幼児期後半~児童期初期にかけて取り組むことが提案されているが、我が国でのダウン症児者への読み書き能力に関する研究は少ない。一方で、海外の先行研究では、我が国に比べて研究数も多く、ダウン症児者に対しての読み書き指導プログラムが開発されている。本研究では、日本と海外のダウン症児者の読み書きに関する研究を概観し、先行研究の成果と課題を探った。日本での先行研究は7本、海外での先行研究は15本であった。海外では多くのダウン症児を対象に読み書きに関する研究が行われているが、日本では論文の種類として事例的研究がほとんどであった。今後、多くのダウン症児者を対象とし読み書き能力と認知的能力や環境要因との関連を検討することが課題として挙げられた。

実践報告
  • -「就職活動準備講座」の分析を通して-
    末富 真弓, 五味 洋一, 佐々木 銀河, 中島 範子, 末吉 彩香, 杉江 征, 名川 勝, 竹田 一則
    原稿種別: 実践報告
    2019 年 43 巻 1 号 p. 163-172
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    高等教育機関において発達障害学生数は年々増加しており、進路・就職に関する課題も様々検討されるようになった。発達障害学生の就職支援を考える際には、発達障害学生特有の課題を理解し、個々の障害特性に応じ包括的に検討することが重要となる。しかしながら、専門性も求められるため、学内リソースだけではなく学外の支援機関や各種プログラムなどとの連携も支援の柱となる。そこで、本研究では、発達障害学生を対象に学外リソースを活用した模擬職場体験を中核とする「就職準備講座」プログラムを開発・提供し、その効果について検討した。結果、2016年度及び2017年度の本プログラムに参加した学生12名より協力が得られ、就職に対する準備性の向上、及び障害特性のアセスメント機能についての効果があったことが考察された。

  • 真名瀬 陽平
    原稿種別: 実践報告
    2019 年 43 巻 1 号 p. 173-181
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究では、将棋において一度負けた局面で打った手と同じ手を打ち、打った後にどのような局面になるのかを予測することが難しい自閉スペクトラム症・知的発達症のある青年に対して、遊びスキルの向上を目指した指導を行った。対象者は、将棋の駒の動かし方や基本的なルールを理解し、実行できた。教材には、“9マス将棋”を用いた。ベースラインでは、9マス将棋の一番簡単な課題を複数回行った。介入では、負けた局とは違う行動をすること・駒を動かした後に、相手がどう動かすかを指で予測する行動の2つを指導者がモデル提示を実施し、練習を行った。その後、プローブとして対象者が勝つごとに難易度の高い課題を提示し、ベースライン同様の手続きで実施した。その結果、ベースラインでは見られなかった2つの行動が、介入後のプローブ期において、自発的に生起する様子が見られ、より難しい局面で勝つことができるようになった。この結果から、本研究における指導によって、将棋の遊びスキルが向上したと考えられる。一方で、本来の将棋のようなより複雑な局面に対応できるスキルの検討、指導が今後の課題だと考えられる。

  • 趙 成河, 河内山 冴, 園山 繁樹
    原稿種別: 実践報告
    2019 年 43 巻 1 号 p. 183-192
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究では、場面緘黙を示す幼児1名を対象とし、大学教育相談室での行動的介入の最初の導入期2セッションを含め、その後の心理治療の展開初期までの計10セッションの教育相談場面での手続きを報告し、その結果から刺激フェイディング法及び随伴性マネジメントの効果を検証することを目的とした。介入手続きは、プレイルームで一緒に活動する人と活動時間を刺激フェイディング法に基づいて調整した。従属変数は場面ごとの発話・表情・身体動作レベルであり、5段階のチェックリストを用いてレベルを評定した。発話は副セラピストとの遊び場面で増加し始め、その後、主セラピストとの学校ごっこ場面でも自発的な発話が見られた。表情も発話の変化に伴い、ほほ笑みや笑顔が増加した。身体動作は全セッションで緊張は見られなかった。本研究は主に教育相談場面で介入を実施したが、幼稚園と小学校場面でも緘黙症状がある程度改善した。一方、発話と表情レベルは活動内容によって変動が大きく、より効果的な参加者・活動の調整については今後さらに検討する必要がある。

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