障害科学研究
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資料
  • —教育委員会への質問紙調査から—
    楊 鈺倩, 裴 虹, 三盃 亜美, 園山 繁樹
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、日本に在住する外国人幼児児童生徒が幼稚園・小学校・中学校の生活で抱えている学習面と行動面の困難、及びその支援を行う上での困難を明らかにするため、教育委員会の担当職員を対象に、郵送法による質問紙調査を実施した。外国人幼児児童生徒の在籍数に関係なく、教育委員会が管轄する幼稚園・小学校・中学校に、学習面・行動面への支援が必要な外国人幼児児童生徒が数多くいることがわかった。また、実際の教育現場では、外国人幼児児童生徒が示す学習面・行動面の困難が、言語の問題や文化の違いなどから生じているのか、発達障害が疑われるのかを判断することが難しいことが課題として挙げられた。本研究は今後外国人幼児児童生徒の幼稚園・学校生活に生じる問題に対する支援方法及び体制整備に関する研究の基礎資料になると期待できる。

  • —就労支援者へのインタビュ-調査を通して—
    末吉 彩香, 柘植 雅義
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 19-32
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、自閉スペクトラム症 (ASD) 学生の就労支援の文脈で実施される就業体験を通した支援に関して、体験後の振り返りの面談の実態を明らかにすることである。ASD学生の就労支援に携わる支援者 (11名) に半構造化面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M-GTA) を用いて分析した。その結果、 【支援者が感じる面談時のASD学生の特徴】【面談時の対応】【面談の対応方針 (事前)】【支援者が抱える支援上の困りごと】 の4つのカテゴリーが生成され、ASD学生の障害特性を含む特徴を考慮した面談中の具体的な対応や、具体的対応ではないが支援者が心がける留意点が整理された。特に、支援者は学生が自己を客観的な視点で振り返り、就業体験を肯定的に捉えられるような配慮を重視していた。同時に支援者が対応に苦慮する場合も示され、今後は本研究で得られた知見を生かし、就業体験をより効果的に提供するための振り返りの内容や方法の検討が必要だ。

  • 内海 友加利, 安藤 隆男
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 33-45
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究は、肢体不自由特別支援学校教師における個業性と協働性の関係性が教職キャリアの過程でどのように移行するのか、その様相を明らかにすることを目的とした。ベテラン教師のキャリア・ヒストリーを分析し、初任あるいは新任として肢体不自由養護学校に勤務した教師8 名を対象とした。対象教師からは初任期の肢体不自由児への関わりや自立活動の指導に対する困難さが語られ、自身の知識や技術を身に付ける必要性から、専門性のうち個業性への認識が強かったことが明らかとなった。教職経験を重ね、知識や技術を高めたことによる学校組織の役割の変化を契機として、専門性のうち個業性から協働性へと認識が移行していた。対象教師全員が同僚教師の影響を受けており、教師個人の成長に同僚教師が大きな機能を果たしていた。今後は他の学校種と比較して肢体不自由教育における専門性の特徴を検討することが必要である。

  • 馬場 千歳, 龔 麗媛, 野呂 文行
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では自閉スペクトラム症児を対象に、選択後に提示する強化子の量や強化子の違いが選択に与える影響を検討した。実験では2 つの選択肢を提示し、一方は相対的に強化子の量が多く、もう一方は相対的に強化子の量が少ない選択肢であった。強化子を提示する量を操作し、両選択肢に強化子を提示する条件と一方の選択肢には強化子が提示しない条件の2 つの条件を設定した。また実験ではキャラクターの画像とお菓子を強化子として用いた。実験の結果、両選択肢に強化子が提示される条件よりも、一方の選択肢には強化子が提示されない条件において、量の多い強化子が得られる選択肢の選択率が高い傾向が見られた。また強化子の種類によっても量の多い強化子が得られる選択肢の選択率に違いが見られた。提示される選択肢の量の違いが明確であることが選択に影響し、強化子の種類は強化子の量の弁別に影響する可能性が示唆された。

  • —画像刺激に対する主観的評価を用いた検討—
    古畑 僚, 岡崎 慎治
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    ASDの限局化した興味( Circumscribed Interests;CI) とそれに関連する情動経験とASD特性との関連についてはこれまで十分に検討されていない。そこで本研究では中高生のASD児10名、TD児12名を研究協力者とし、[1] 様々な人物の表情を含む社会的な内容、[2] 乗り物や機械類等のCIに関連する非社会的な内容、[3] 家具や食器などCIに関連しない非社会的な内容の3 つの画像条件を設け、情動価、覚醒度についての主観的評価を求め、判断時の反応時間を計測した。その結果、いずれの指標においても群による差異は認められなかった。一方、SCQの合計得点と一部の画像条件における情動価、SCQの合計得点と全ての画像条件における覚醒度、限局的・反復的・常同的行動様式と複数の画像条件におけるRTにそれぞれ有意な相関が認められた。 以上より、ASD傾向が、喚起される快情動の生起や、情動の量、自らの情動を迅速に判断する能力と関連を持つ可能性が示唆された。

  • —知能のPASS 理論による検討—
    中島 範子, 岡崎 慎治
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究ではADHD児の読み速度や正確さとPASS理論との関連について検討した。対象はADHDの診断がある8~12歳児21名であった。DN-CASおよびひらがな音読課題を実施した結果、対象児全体のPASS標準得点平均のうち注意の標準得点が、プランニングと同時処理の標準得点に比べて有意に低かった。読字時間を基準とした比較では読字時間標準群よりも読字時間延長群の方が、同時処理の標準得点が有意に低く、注意の標準得点は低い傾向がみられた。誤読数を基準とした比較では、誤読数標準群よりも誤読多数群の方が、プランニングの標準得点が低い傾向がみられた。さらに、読字時間と誤読数を基準とした4群間比較では、読字時間標準かつ誤読数標準群よりも、読字時間延長かつ誤読多数群の方が、同時処理の標準得点が有意に低かった。以上の結果から、知能のPASS理論を用いた認知特性評価によって、ADHD児が抱える読み困難の状態像と認知特性との関連を把握できる可能性が示唆された。

  • 松下 浩之
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 75-86
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    小学校において児童が示す行動上の問題に対して、応用行動分析学の視点から、機能的アセスメントの結果にもとづいた支援アプローチを実施することの有効性が指摘されている。しかし、その方法論を教師が習得するための研修の有効性を検討することが課題として指摘されている。本研究では、小学校教師を対象に応用行動分析学にもとづいた支援に関する6時間の研修を実施し、問題行動の原因推定と支援計画立案の変化を評価した。その結果、13名の参加者について、行動の機能に合わせた原因の推定とそれに対応した支援計画の立案に質的な変化が見られ、より多面的に具体策を検討することができるようになった。また、短時間の研修による効果は、小学校における全校的な校内支援体制を構築するための研修としても有用である可能性を示唆している。今後の課題として、無作為抽出された対象者への研修効果や、研修が実際の指導に与える影響、評定の信頼性についての検討が必要であることが示された。

  • —自立活動を主とした教育課程に注目して—
    竹内 博紀, 小山 瑞貴, 大関 毅, 落合 優貴子, 内海 友加利, 安藤 隆男
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 87-97
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    肢体不自由特別支援学校ではTTが日々の授業形態として採用されている。TTによる指導の効果が挙げられる反面、教員間の連携や人間関係の課題が指摘されている。本研究では、肢体不自由特別支援学校のTTにおいて複数の授業者がどのような役割を果たしているのかを授業の計画・実施・評価の各段階に着目し、明らかにすることを目的とする。結果として、肢体不自由特別支援学校では教師と児童生徒の数が近く、「子どもにつく」タイプのTTが行われていることが明らかになった。また、肢体不自由特別支援学校は、計画段階において原案作成後に授業者間で協議をする割合が低いこと、実施段階において計画とのズレや授業者間でのズレが生じる割合が高いこと、評価段階において毎時間の記録、評価をする割合が高いことが明らかになった。

  • 國武 加奈, 松岡 早紀, 深澤 美華恵, 林 大輔, 竹田 一則
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 99-109
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、特別支援学校教員を志望する学生の食物アレルギーに関する知識および意識の実態と講義による効果について調査した。特別支援学校教員を志望する学生39名を対象とし、食物アレルギーに関する講義前後にそれぞれ質問紙の回答を求めた。 その結果、知識の実態では、エピペン® 等の薬に関する知識がその他の知識に比べて有意に低く、知識を補完する必要性が示唆された。また、講義後は食物アレルギーに関する知識が有意に上昇した。さらに、エピペン® トレーナーを用いた実技訓練によって、講義後、エピペン® の使用に対する恐怖心が有意に低下し、自信が有意に上昇した。 一方で、講義後に食物アレルギーへの不安が有意に上昇したが、食物アレルギー対応への危機感の高まりとして意義があると考えられる。また、学校教員が食物アレルギーの適切な知識と緊急時対応の技能を身につけるには、教員養成段階から定期的かつ反復的な研修が必要と思われた。

  • —弱視シミュレーションによる検討—
    佐藤 優子, 小林 秀之
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 111-121
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究は、弱視生徒が数学の計算問題を解く際の困難を考える前段階として、低視力状態及び視野狭窄状態で計算する際の困難を明らかにすることを目的とした。晴眼の大学生12名を対象に、弱視シミュレーションレンズを用いて計算問題を実施した。実験の結果、レンズ装着状態においては晴眼状態と比較して、解答完了率や解答時間、得点に関して有意差が見られ、低視力状態及び視野狭窄状態では、解答時間や成績に影響があることが示唆された。また、視野狭窄状態では写し間違いや書き間違いが有意に多く見られ、全体把握の困難が計算に影響することが考えられた。以上により、弱視生徒に対する計算学習の指導における観点として、「時間がかかる」、「写し間違い・書き間違い」、「全体把握の難しさ」、「視線の移動の難しさ」の4点が考えられた。

  • 西川 めぐみ, 米田 宏樹
    原稿種別: 資料
    2020 年 44 巻 1 号 p. 123-136
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    ピア・サポートの配置は、重度障害のある生徒に社会的支援と学問的支援を提供し、彼らの通常の学級へのインクルージョンを支えている。本研究は、支援を受ける生徒と支援に当たる生徒の条件、及び生徒同士のマッチングや参加する授業に着目し、ピア・サポートの実態を明らかにすることを目的とした。ピア・サポートの配置に関する研究は、効果に焦点を当てた論文が中心であるが、時間を追うごとに、よりプログラムの内容を吟味する傾向が見られた。支援を受ける重度障害のある生徒は、自閉症や知的障害があり、州の代替評価が採用されるが、大人の支援があれば通常の学級への参加が可能である。一方でピアとなる生徒は、重度障害のある生徒と同じ授業に参加し、ピア・サポートに関心があり、模範となるような生徒であった。生徒同士のマッチングには、同学年又は同年齢のペア、そして重度障害のある生徒(男) と重度障害のない生徒(女) のペアが多く見られた。

展望
  • —雑音下聴取困難に焦点をあてて—
    久保 愛恵, 田原 敬, 勝二 博亮, 原島 恒夫
    原稿種別: 展望
    2020 年 44 巻 1 号 p. 137-147
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    近年、聴力検査は正常であるが聴取困難 (聴覚情報処理障害:APD) を示す幼児の存在が報告されているが、その実態は明らかになっていない。そこで本稿では、まずAPDの定義を整理し、APD症状を示す幼児の実態をまとめた。APDはその病態が明らかにされておらず、APD症状を示す幼児の実態も事例ごとに背景要因の分析を丁寧に行い、検討を積み重ねる必要がある。次に、APD症状の中から雑音下聴取困難に着目し、幼児における雑音下聴取能力や評価方法、背景要因について整理した。幼児は成人よりも雑音下聴取困難を抱えやすいという結果は共通して得られており、幼児の中には雑音下聴取の成績が特に低い幼児が存在することも指摘され始めている。その背景には注意等の認知的要因が考えられるが、実際に雑音下聴取困難を示す幼児を対象とした検討はなされていない。今後は雑音下聴取困難を示す幼児を抽出し、注意機能や音韻意識等の観点より背景要因の検討が求められる。

実践報告
  • —動作法の習熟度に着目して—
    北川 貴章, 内海 友加利, 安藤 隆男
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 44 巻 1 号 p. 149-159
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究は、特別支援学校(肢 体不自由) における身体の動きに関わる自立活動の個別指導に着目し、自立活動の指導に活用されている動作法の習熟度が、若手教師の意思決定に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。若手教師6 名を対象とし、動作法の習熟度から2 グループに分け、授業の実施段階と授業のデザインとのズレとその対応に関する授業者の語りを分析した。動作法の習熟度によって、代替策の有無に差があることが分かり、学習者の身体の動きの状態に合わせて指導の内容や方法を変更する教師の意思決定に差が生じることが示唆された。事例的検討の方法論的な制約はあるが、特定の指導に関わる方法の獲得・習熟は、授業の計画・実施・評価の各段階に影響することから、自立活動の授業力向上を目指した力量形成モデルの構築に資するものである。

  • —ワークシートを用いた感情の可視化を通して—
    中野 泰伺, 中島 範子, 奥村 香澄, 岡崎 慎治
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 44 巻 1 号 p. 161-171
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

    ADHD児1 名を対象に、認知特性評価に基づいて、ある1 日の出来事とその時の感情の度合いをワークシート上で可視化し、指導者とのやり取りを行うことで、自身の感情状態のセルフモニタリングを促すことを目的としたかかわりを行った。その結果、「感情の可視化」に関するワークシートの作成を通して、対象児が「感情の可視化」にメリットを見出し、自身の行動と感情の関連に対する気づきがみられるようになった可能性に加えて、その影響として家庭や学校における感情のセルフモニタリングを自発的に行っていた可能性も考えられた。これらのことから、認知特性評価に基づく指導支援が有効であること、本人のみならず周囲の大人もワークシートを用いることで、時系列での感情の変化や疲労度・集中度のパターン、同じ出来事であっても前後の状況や体調によって感情にばらつきがあることへの気づきを促すことができることが示唆された。

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