障害科学研究
Online ISSN : 2432-0714
Print ISSN : 1881-5812
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原著
  • —学年による予測要因の変化について—
    区 潔萍, 三盃 亜美, 裴 虹, 米田 宏樹, 宇野 彰
    原稿種別: 原著
    2021 年 45 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、中国語の音読に影響する認知能力を解明するために、中国大陸の児童を対象に単語音読成績を予測する認知能力を検討した。中国のA省におけるA小学校とB小学校の1~6年生672人を対象に、音読検査および認知能力検査 (音韻的能力、視覚的能力、呼称速度、形態論的認識力を評価する検査)、語彙力検査、非言語的知能検査を実施した。重回帰分析の結果、視覚的能力と呼称速度は低学年の児童の単語音読成績を予測した。また、語彙力と音韻的能力は2~6年生の単語音読成績を予測した。本研究では、中国語の音読成績に影響する認知能力は児童の発達年齢が上がるにつれて変化することがわかった。それは、中国語の文字体系や中国大陸における音読の指導方法に影響されていると考えられる。

  • — 1953 (昭和28) 年の「教育上特別な取扱を要する児童・生徒の判別基準について」通達後を中心として—
    高野 聡子
    原稿種別: 原著
    2021 年 45 巻 1 号 p. 15-29
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    1953 (昭和28) 年に「教育上特別な取扱を要する児童・生徒の判別基準」が作成され、特殊学級および養護学校の対象になる者と、精神薄弱児施設の対象になる者とに分けられた。本論文では精神薄弱児施設の視点から1953年から380号が通達される年の1962年までを対象に精神薄弱教育との関係について検討した。検討の結果、精神薄弱教育は精神薄弱の程度によって、精神薄弱児施設は児童福祉法の規定によって、それぞれの対象となる精神薄弱児を設定していたことが明らかになった。だが、精神薄弱児施設のみならず特殊学級および養護学校の設置数も十分ではなく、在宅指導の精神薄弱児数が一定数おり、精神薄弱児施設は年齢超過者の問題、施設内学校および学級の設置問題など多様な問題を抱えていた。そのため精神薄弱児施設は特殊教育が精神薄弱児施設に想定した代替的機能を担ってはいたが、精神薄弱児施設にとってそれは施設機能の一部であった。

  • 中野 泰伺, 高橋 知音, 岡崎 慎治, 中島 範子, 脇 貴典, 末吉 彩香, 松田 奈々恵, 竹田 一則, 佐々木 銀河
    原稿種別: 原著
    2021 年 45 巻 1 号 p. 31-41
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、修学上の困り感があり、心理検査等の受検を希望した大学生65名を対象に、ASD・ADHD特性と学生生活の困りごと質問紙との相関分析から、困りごと質問紙の妥当性を検討した。その結果をふまえ、ASD・ADHD特性や認知能力がどのような修学上の困り感に影響を及ぼすかについても、重回帰分析を用いて検討した。対象者は学生生活の困りごと質問紙・AQ・CAARSに回答した後、WAIS-IVを受けた。分析の結果、困りごと質問紙で測定される困り感は、AQ及びCAARSによるASD・ADHD特性と有意な相関関係が認められたことから、尺度の妥当性が確認された。また、対人関係に関する困り感の主要な背景要因としてASD特性が、注意・集中に関する困り感の主要な背景要因としてADHD特性が示された。その一方で、WAIS-IVで測定される認知能力は修学上の困り感と結びつきが弱いことも確認された。

  • 酒井 貴庸, 園山 繁樹
    原稿種別: 原著
    2021 年 45 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    高等学校における特別支援教育の支援体制の整備は、小学校および中学校に比べて遅れている。一方で、高校生を含む思春期においては、自閉スペクトラム症 (ASD)の特徴をもつことは、精神的健康状態のリスクとなり得る。そのため、高校生におけるASD傾向の程度と精神的健康状態の関連を質問紙調査によって検討した。ASD傾向が高いと、精神的健康状態が悪く、ASD傾向の高さにより、精神的健康状態を推定可能であった。また、学校間で教師のASDに関する知識の程度に差がある場合においても、生徒のASD傾向と精神的健康状態との関係は同様であった。これらの結果から、高等学校においては、ASDの診断の有無に関わらず、ASD傾向のある生徒への特別な支援や配慮の必要性が示された。また、高いASD傾向をもつ生徒を担任している教師であっても、ASDについて十分な知識をもつ教師は少なかったため、知識の程度に応じた研修を受け、支援体制を整える必要性があることが示唆された。

資料
  • Nguyen Ngoc Nam Phuong , 左藤 敦子
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 53-64
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、ベトナムホーチミン市おける就学前の聴覚障害児に対する早期介入の現状を把握し、今後の聴覚障害児に対する早期介入の方向性を検討することを目的とした。ホーチミン市で聴覚障害を対象として教育を行っている特別支援学校と関連機関を対象とした質問紙調査を行い、8カ所より回答を得た。聴覚障害教育を行う上での設備や機器の不足や教員の専門性の不十分であることが明らかとなった。また、経済的な困難などの様々な理由から、保護者と家庭の協力が得られにくいことも、早期介入を担当する教員より指摘された。今後、コアとなる機関を中心とした連携体制を再構築することが重要であると考えられる。

  • —CAS2:Rating ScaleによるPASS尺度とASD特性, ADHD特性との関連—
    青木 真純, 中島 範子, 岡崎 慎治
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 65-76
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、日本の大学生を対象にCAS2:Rating Scaleを試行的に実施し、日本人大学生の基礎的なデータの収集とPASS尺度の信頼性の確認を行うこと、ならびにASD特性、ADHD特性との関連について明らかとすることを目的とした。本研究では、大学生148名に対してCAS2:Rating Scale、AQ-J-10、ASRSパートAについて自記式での回答を求めた。その結果、CAS2:Rating ScaleにおけるPASS尺度の内的整合性が確認され、4つのPASSプロセスを評価できることが確認された。ASD特性との関連について、AQ-J-10の得点高群では、特徴的なPASSプロセスは見られなかったものの、ADHD特性との関連については、ASRSパートAの得点高群においてCAS2:Rating Scaleの「注意」尺度の得点が低いことが示され、注意機能との関連が示唆された。

  • 雁丸 新一, 鄭 仁豪
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 77-89
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、我が国の聴覚障害教育におけるコミュニケーション手段の全国調査と手話の活用に関する研究を概観し、手話の活用に関する研究の意義と今後の課題について文献的に考察した。その結果、教育の場において手話は中学部・高等部では1990年代、幼稚部・小学部では2000年代以降活用され始め、現在では多様なコミュニケーション手段の1つとして重要な役割を果たしていることが示された。また、手話の活用に関する研究では、幼稚部や小学部の授業、教科では国語科を対象とした実践報告が多いことが明らかとなった。これらのことから、聴覚障害教育における手話の活用、特に、中学部以降のより多くの教科における手話の活用による効果や課題についての研究の蓄積の必要性が示唆された。

  • 藁科 遼, 野呂 文行, 佐々木 銀河
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 91-102
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では、障害学生向けインターンシップを実施している企業の担当者を対象に、インターンシップ実施のプロセスとその要因を明らかにすることで企業での障害学生向けインターンシップ促進に向けた基礎資料を得ることを目的とした。修正版グラウンデット・セオリーを用いて分析した結果、社内資源・理念が整っており、障害学生受入が社内への還元に繋がるといったプロセスを支える力が障害学生向けインターンシップ導入・継続の促進要因となることが示された。一方で、企業と大学での連携の難しさ、就労支援領域の課題から生じたインターンシップを躊躇させる要因といった自社外での課題が障害学生向けインターンシップ導入の阻害要因や実施する上での負担のひとつとなることが示唆された。今後、障害学生向けインターンシップが広がるために企業と大学が密接に連携をとること、支援体制を整えること、障害者雇用に対する意識変革をすることが重要である。

  • —指定特定相談支援事業所への質問紙による調査—
    延原 稚枝, 名川 勝
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 103-116
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、指定特定相談支援事業所と当該事業所に勤務する相談支援専門員を対象とした質問紙調査により、知的障害者のカップル生活及び子育ての実態把握、並びに知的障害のある母親 (以下母親) の生活実態、子育てにおけるソーシャル・ネットワークとそこから得ているソーシャル・サポートを明らかにすることを目的としている。本稿は、カップル生活と子育て、母親の生活実態とそのソーシャル・ネットワークに焦点化して報告する。調査結果から、サービス等利用計画を作成している知的障害者のうち、カップル生活、子育てといったライフイベント経験者は極めて限定的である実態が伺えた。子育てをする母親の多くは成人になるまで障害福祉サービスを利用することなく知的障害のない男性と結婚し、子育てをしていた。そのインフォーマルなネットワークには脆弱性が見られたが、自ら出向く、申請を要するフォーマルな子育て支援サービス利用も限定的であった。

  • 田尻 由起, 柘植 雅義
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 117-128
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    パリ在住邦人家庭の障害乳幼児の子育ての実態と支援課題を明らかにするために、6名の母親に対し半構造化面接を行った。インタビューを分析した結果、【フランスでの子育てに関する肯定的な捉え】、【フランスでの子育てに対する不安・戸惑い・困り感】、【言語・文化的障壁による情報収集・利用の制限】、【パリに住む邦人家庭障害乳幼児親子の子育て支援ニーズ】の4つのカテゴリーが示された。母親はパリでの子育てを肯定的に捉えつつも子育てに関する社会的資源については不安や戸惑いを感じていた。また支援ニーズとして言語的な支援の必要性、日本の医療や子育てに関する情報提供、発達に関する日本人専門家の存在が挙げられた。特に在留邦人であるが故の支援の脆弱さが、子育て困難さを増幅させ、邦人同士がつながりを持つための場と機会の提供は重要課題であった。今後は子育てに関する情報を発信しつつ、日系関連機関と連携しながら子育てを支援するシステム作りが必要である。

  • 崔 光鉉, 洪 淨淑
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 129-138
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究は韓国における2016年の生涯教育法改正の背景と障害者の生涯教育の現状および課題を提示することを目的とした。文献研究で行った本研究の結果は次のようになる。韓国の生涯教育法改正は、国連の障害者権利条約の批准による影響と障害者団体の生涯教育に対する要求の高まりにより成立した。生涯教育法の改正により、教育部は国立障害者生涯教育振興センターを設置した。また障害者の生涯教育機関の拡充、障害者の生涯教育機関に対する生涯教育士の義務配置、障害者の生涯教育に対する教育課程とプログラム開発などが実行されている。課題としては、十分な予算確保、生涯教育施設へのアクセシビリティ保障、障害者と健常者が共に参加する生涯教育、障害者の生涯教育従事者の専門性向上、障害の類型と程度に適した生涯教育プログラムの開発および普及を挙げることができる。

  • 馬場 千歳, 朝岡 寛史, 野呂 文行
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 139-149
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では児童期の自閉スペクトラム症児2名を対象に、強化子の提示時間の操作がContinuous arrangementsとDiscontinuous arrangementsの選択に与える影響を検討した。実験では、計算プリントの課題と対象児が好みの活動に従事できる強化子の提示時間について表記した2枚のカラーカードを対象児に選択させた。1枚のカラーカードは、2枚のプリント終了後に長い時間強化子が提示されるContinuous arrangementsであり、もう1枚のカードは、プリント1枚終了後に強化子が提示され、これが2回繰り返されるDiscontinuous arrangementsであった。ベースライン条件では、どちらのカードを選択しても、結果的に対象児が取り組むプリントの枚数と強化子の提示時間は等しかった。強化子の提示時間操作条件では、Discontinuous arrangementsのみ、強化子の提示時間を短くした。実験の結果、2名の対象児は、強化子の提示時間操作条件において、Continuous arrangementsへの選好を示した。本研究の結果から、Continuous arrangementsとDiscontinuous arrangementsの選択場面における強化子の提示時間の操作が選択に与える影響について考察した。

  • 北澤 拓哉, 柘植 雅義
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 151-160
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     児童生徒の「主体性」の育成と指導効果の検証のためには主体性の評価が必要であるが、知的障害のある児童生徒の主体性を評価する研究は少ない。本研究は、特別支援学校の教員が知的障害のある児童生徒の主体性を評価するための質問紙の検討を行うために、質問紙調査を行った。作成した質問紙は、因子分析の結果、周囲との関係性の中での個の有り様と関係すると思われる「周囲の状況に応じた行動調整」「意思決定・表出」「自身の活動への積極的な取り組み」の3因子から構成された。各因子は、児童生徒の年齢が高い場合に高く評価される傾向が見られた。また、知的障害の軽度群は重度群と比較すると各因子ともに評価が高かった。一方、軽度群内では、中学部までは年齢が高い場合に高く評価されたが、高等部生徒への評価は中学部生徒より低かった。各群への評価の特徴をふまえ、主体性育成にむけた意図的な指導が必要だと言える。

  • —絵本の内容に対する興味の違いによる検討—
    三枝 里江, 鄭 仁豪
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 161-171
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、聴覚障害幼児が日常的に読んでいる絵本の内容を分類し、その違いから、家庭での絵本読み活動、絵本を読ませる目的、絵本を読ませる際の工夫点について、健聴幼児との比較を通して検討した。質問紙調査の結果、聴覚障害幼児の保護者76名、健聴幼児の保護者91名から回答が得られた。対象幼児は「全体群」と「部分群」に分けられた。家庭での絵本読み活動においては、聴覚障害幼児は、「全体群」、つまり興味の発達が進み、本全体として物語を読んでいる群では、聴覚障害児が物語を読むことと、家庭での読み聞かせとの間には関連性が高いことが考えられた。絵本を読ませる目的においては、「全体群」も「部分群」も、年齢の進行に伴い、基本的には『興味・関心』が中心で、それに『知識・理解』が加わることが考えられた。絵本を読ませる際の工夫点では、「絵本の読み聞かせ方」の小カテゴリーにある「やり取りや確認をしながら読む」は、聴覚障害児も健聴幼児も、「全体群」では、すべての年齢に共通して挙げられており、今後は読み聞かせの方の検討の必要性が示唆された。

  • 三木 美晴, 米田 宏樹
    原稿種別: 資料
    2021 年 45 巻 1 号 p. 173-188
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は、米国における各州共通代替達成スタンダードに基づく評価システムの開発の現状を明らかにすることである。DLM代替評価システムには、ダイナミック学習地図と呼ばれる確率モデルが用いられ、重度認知機能障害児の多様な学習進歩性の推論を助けていた。初期の学習地図開発の出発点はCCSSにあり、CCSSの文言に含まれる重要な観念を軸に、重度認知機能障害児の学習目標となるノードが作成され、DLM本質要素に結びつけられていた。CCSSとDLM本質要素との対応は、困難に思われるケースがいくつかみられ、重度認知機能障害児が独力でなくとも、生活場面で人・物の助けを借りながら具体的に達成できる方法を重視し、通常教育により馴染む形で、ともに成長できる指導・評価体制を求めていると考えられた。

展望
  • 古畑 僚, 岡崎 慎治
    原稿種別: 展望
    2021 年 45 巻 1 号 p. 189-198
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     ASDはその主症状の他に、アレキシサイミア傾向の高さ、感情調節の困難さ、および不安傾向の高さなどの感情面に関する問題が指摘されている。本研究では、アレキシサイミア傾向の評価に用いられている各種の質問紙について整理したあと、ASDにおけるアレキシサイミア傾向と不安、感情調整との関連について扱った研究に関する検討を行なった。種々の研究から、ASDの持つアレキシサイミア傾向は認知面における困難さであることや、アレキシサイミアのサブタイプを踏まえた分析の有用性、これらの要素がそれぞれ関連していることが示唆された。一方で、それらが互いに及ぼす影響や因果性については未だ明らかではなく、今後の検討が必要であろうと考えられた。また、臨床上はASDのアレキシサイミア傾向の特性に関する研究知見と介入との結びつきが今後より重要になると思われる。

実践報告
  • 半田 健, 加藤 哲文
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 45 巻 1 号 p. 199-210
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、機能的アセスメントに基づく行動支援計画の立案に関する知識獲得を標的とした研修の効果を検証した。参加者は、知的障害特別支援学校教員4名であった。研修は、機能的アセスメントに関する講義と、参加者が勤務校で児童生徒に講義で学んだ内容を実践するホームワークで構成された。評価指標は、参加者の架空事例に対する行動支援計画の立案内容、応用行動分析学に関する知識、児童生徒の行動問題に関する記録であった。その結果、架空事例に対する行動支援計画の立案内容と応用行動分析学に関する知識が向上し、児童生徒の行動問題が減少した。このことから、知的障害特別支援学校教員に対して、本研究の研修の有効性が示された。また、先行研究の課題であった参加者の機能的アセスメントに関する知識獲得の妥当性が確認された。今後、本研究で得られた知見の外的妥当性を検証するために、追試や対照群の設定の必要性が指摘された。

  • —保護者によるビデオ教材を用いた就学移行支援の効果—
    ⽯塚 祐⾹, ⽯川 菜津美, ⼭本 淳⼀, 野呂 ⽂⾏
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 45 巻 1 号 p. 211-226
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では年長のASD児2名を対象とし、保護者によるビデオ教材を用いた就学移⾏支援を実施し、対⼈・集団⾏動ルールの獲得に及ぼす効果を検討した。保護者への聞き取りと⾏動観察の結果から、就学に向け必要とされる対⼈場面9種類、集団場面18種類の⾏動ルールを選定し、⾏動ルールの表出を標的⾏動とした。研究計画は⾏動間多層プローブデザインを用いた。保護者はビデオ教材が入ったタブレット端末を持ち帰り、対⼈・集団場面における適切な⾏動の観察を家庭で促し、⾏動ルールや具体的な発話を復唱または自発した場合に言語賞賛を⾏った。さらに⼤学のプレイルームでは、参加児が選択した場面のロールプレイを支援者と⾏った。その結果、両参加児は対⼈・集団場面における⾏動ルールを獲得した。さらに保護者による対⼈スキル・集団生活スキルに関する⾏動チェックシートの評定もいくつかの項目において改善がみられ、就学から約4ヶ月経過後も維持した。

  • —Lidcombe Programを適用した効果の検討—
    宮本 昌子, 飯村 大智, 深澤 菜月, 趙 成河, 園山 繁樹
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 45 巻 1 号 p. 227-239
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では、場面緘黙の症状を主訴として指導を受け、場面緘黙の改善後、吃音の問題が表面化した小学校2年生の男児を対象に、1年3か月間の吃音症状軽減を目指した指導介入を行った経過を報告する。セラピストとのLidcombe Programにおけるセラピー場面では、重症度評定と非流暢性頻度の明らかな低下はみられなかったが、母親との遊び場面での重症度評定は低下した。また、3文節以上の発話では1~2文節発話と比較して高頻度に非流暢性が生起していた。さらに、3文節以上の発話にのみ、語尾や句末の繰り返しが生起していた。今後は言語的側面を精査するとともに、母親との場面と同等の流暢性を維持できるよう、セラピー場面設定の調整が必要であることが示唆された。

  • 神山 努, 野呂 文行
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 45 巻 1 号 p. 241-254
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では、児童発達支援事業所の支援員1名に、ペアレント・トレーニングの実施に関するコンサルテーションを行った。支援員は、4名の自閉スペクトラム症のある幼児の保護者に対して、全6回のペアトレント・トレーニングを行い、その有効性を保護者記録における子どもの標的行動の変容から評価した。また、支援員からの保護者に対するフィードバックを分析し、フィードバックがトレーニング効果に与えた影響を検討した。まず、支援員は実施方法に関する講義を研究実施者から受けた。各回実施後には、その回の内容を計画通りに行うことができたかどうかと、保護者が演習で行った内容について、研究実施者と電話協議した。ペアレント・トレーニングの内容は、標的行動とその記録方法、先行子操作、強化子の提示という結果操作から構成された。その結果、3名の保護者が子どもに最低1つの標的行動の獲得を促すことに成功した。フィードバックの分析から、「具体的称賛」や「子どもに関する発言」などを支援員に促進する手続きを検討する必要性が示唆された。

  • 石塚 祐香, 石川 菜津美, 山本 淳一, 野呂 文行
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 45 巻 1 号 p. 255-268
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では自閉症・情緒障害特別支援学級に通う児童2名を対象とし、自立活動の中でビデオモデリングを用いたソーシャルスキル指導の効果と指導手続きの社会的妥当性を検討することを目的とした。行動観察及び学級担任への聞き取りの結果から、授業場面およびゲーム場面におけるポジティブな始発・応答行動を標的行動とし、指導に伴う標的行動の変化を分析した。支援者は標的行動に対応したビデオ教材、指導シート、指導マニュアルを用意し、学級担任にビデオ教材の使用方法および指導方法を口頭と文書で伝えた。指導は支援員の補助のもと、学級担任が実施した。児童は質問ビデオを視聴した後、シートに適切なセリフを書き込んだ。その後正解ビデオを視聴し、ロールプレイを実施した。その結果、授業場面においては指導後にポジティブな始発・応答行動が増加した。さらに指導手続きに関する社会的妥当性を評価した結果、学級担任より高い評価が得られた。

  • —学生の自己理解・自己効力の変化に着目した振り返り面談の実践—
    末吉 彩香, 柘植 雅義
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 45 巻 1 号 p. 269-284
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本実践では、自閉スペクトラム症 (ASD) 学生の就労支援で実施される就業体験のための振り返りシートを作成し、課題の達成状況や自己効力の変化、事後インタビューから効果の検証を試みた。ASD学生1名と全8回の就業体験でシートを用いた面談を行い、面談終結後に実践の感想を聞き取った。また、実践前後で進路選択に対する自己効力、一般性セルフ・エフィカシー尺度、進路成熟度尺度に回答を求めた。結果、シートを用いた体験の振り返りを通し3つの尺度すべての得点が上昇した。自己効力の変化には遂行行動の達成や言語的説得が影響し、本人に対する肯定的な振り返りや得意・不得意と不得意に対する対策の話し合いが自己理解の深化に寄与した。またシートの利用により面談内容が構造化・可視化されたことで体験がより円滑に進んだ。今後は学生の認知特性に対するアセスメントを踏まえた効果検証の他、他の発達障害学生への利用拡大に向けた検討が必要である。

  • —視覚補助具の活用効率や主体的な選択に着眼して—
    相羽 大輔, 渡辺 正人, 奈良 里紗
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 45 巻 1 号 p. 285-298
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本実践では、弱視児1名を対象に、作業を伴う遠方視/近見視と、作業を伴わない遠方視/近見視の課題を設けた上で、各視覚補助具 (単眼鏡、拡大鏡、タブレット) の活用を要する一連の指導を、各視覚補助具の特徴やそれらの使い分けを理解させる目的で実施した。各課題で用いた視覚補助具の効率や、指導時のやりとりを通して、対象児が、単眼鏡や拡大鏡は、迅速性に優れ、作業を伴わない遠方視/近見視に適している点、タブレットは、画像を保存できるため、作業を伴う遠方視/近見視に適している点を理解し、それを踏まえた使い分けができるようになった。この教育効果は、半年後のリフレクションでも継続・汎化が確認できた。弱視児に視覚補助具の使い分けを指導する場合には、具体的な活用場面を設け、視覚補助具の効率を比較し、フィードバックしながら、各視覚補助具の特徴を理解させること、その上で、その特徴を踏まえた主体的な活用を促すことの重要性が示唆された。

  • 小林 千紗, 三盃 亜美, 渡部 敬真, 佐伯 由衣, 大渕 周平
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 45 巻 1 号 p. 299-314
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     本研究では、ダウン症女児1名を対象に読み書き習得に関与する認知能力とひらがなの読み書き習得度を評価し、学校と家庭場面において、濁音のひらがな読み書き指導を行い、その指導効果を検討した。本児は、音韻能力に加えて、視覚認知力と言語性の聴覚的記憶力に弱さがあった。これらの弱い認知能力を補うために、視覚呈示された文字と濁点を見ながら文字構成を言語化したフレーズを唱えて覚えるという、視覚法と聴覚法を組み合わせた指導を行った。その結果、学校で練習した字に対して、練習直後と1か月後の評価で、読み書き成績が上昇し、読みの正確性は6か月後まで維持された。本研究で行ったひらがなの読み書き指導は有効であったと思われる。

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