糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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レクチャー:EBMから見た糖尿病における心血管疾患予防の重要性
  • 富永 真琴
    セッションID: Overview
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    日本糖尿病学会は「糖尿病治療ガイド2004-2005」および「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」を発行し,その中で糖尿病の治療はヘモグロビンA1c(HbA1c)なら6.5%未満,空腹時血糖値なら130mg/dl未満,食後2時間血糖値なら180mg/dl未満の「良」を目指すべきだとしている。これは米国で行われたDiabetes Control and Complications Trial(DCCT)やKumamoto Studyなどの大規模臨床試験をエビデンスにしている。しかし,この目標は網膜症や腎症など糖尿病に特有の合併症を生じさせないレベルとして設定されたことを忘れてはならない。 一方,糖尿病に特有ではないが,糖尿病がリスクの一つとなっている心血管疾患(心筋梗塞,心不全,脳卒中など)において,高血圧や高脂血症への対策と比べ,高血糖への対策が不十分ではないかとの批判がある。アメリカ糖尿病協会(American Diabetes Association,ADA)が1997年に糖尿病の新しい診断基準を提唱したのもこれと無関係ではない。ADAの新診断基準ではブドウ糖負荷試験(Oral Glucose Tolerance Test,OGTT)を捨て,空腹時血糖値を重視した。心血管疾患との関係では,皮肉にも,ブドウ糖負荷後血糖値が大切だったことがその後の研究(舟形スタディ,DECODEなど)で明らかにされた。しかも,耐糖能障害(Impaired Glucose Tolerance,IGT)の段階から心血管疾患のリスクであることが,再度,強調された。ブドウ糖負荷後血糖値が高いことは日常的には食後高血糖であろう。 IGTを対象に糖尿病の一次予防をライフスタイルの変更や薬物により行おうというマルメ研究やStop-NIDDM研究などで日常的に食後血糖値を下げ,糖尿病に移行しないようにすることは,糖尿病発症を半減するのみならず,心血管疾患を減少することが示されている。 糖尿病治療は昏睡をその挑戦の対象とした第一の時代,網膜症,腎症とした第二の時代を経て,心血管疾患とする第三の時代に入っている。食後高血糖が動脈硬化症を引き起こすメカニズムに関する基礎研究および診断や治療に関する臨床研究が今まさに行われている。
  • 清原 裕
    セッションID: AL-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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     久山町研究は、福岡県糟屋郡久山町において長年にわたり継続中の脳卒中をはじめとする心血管病とその危険因子の疫学調査である。この研究の特筆すべきことは、対象集団である町住民の性・年齢構成および職業構成が日本の平均レベルにあって偏りが小さいこと、健診受診率が高いこと(40歳以上の人口の80%以上)、追跡率が99%以上で脱落例がほとんどいないこと、心血管病発症例を研究スタッフが往診・診察して臨床情報を収集していること、そして全死亡例の約80%を剖検して死因・臓器病変を検索していることなど、徹底した調査が行われていることである。1961年の健診受診者から設定した第1集団では、尿糖陽性者に経口糖負荷試験を行って耐糖能レベルを調べたが、1988年の第3集団以降、5年毎に40-79歳の健診受診者全員に75g経口糖負荷試験を行い、対象者の耐糖能レベルを正確に把握している。この久山町研究の徹底した調査成績は、この地域の耐糖能レベルと大血管障害をはじめとする合併症の実態を正確に反映していると考えられる。 2002年の第4集団のうち、75g糖負荷試験を受けた40-79歳の対象者2,697名をWHO基準で分類すると、糖尿病は男性22.8%、女性13.1%、IGTはそれぞれ21.4%、21.0%、IFGは14.8%、6.8%であった。つまり、男性の6割、女性の4割に何らかの耐糖能異常が存在すると考えられ、近年わが国では耐糖能異常が大幅に上昇したことがうかがえる。 本レクチャーでは、久山町研究の断面調査および追跡調査の成績を紹介し、わが国の地域住民における糖尿病(耐糖能異常)とその合併症との関係の時代的変化と現状について述べる。
  • 中神 朋子
    セッションID: AL-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    背景と目的: 2型糖尿病のスクリーニングは心血管疾患のスクリーニングの必要不可欠な部分である。本研究では、DECODA 研究のデータベースを用いて、アジア系人種における心血管疾患の最もハイリスク群を選別し糖尿病と心血管疾患のスクリーニングのリンクについて検討する。方法: 対象はDECODA 研究に参加した5カ国5研究のアジア系人種のうち過去に心血管疾患の既往のない6,573名、平均追跡期間は6年である。Coxの比例ハザードモデルを用いて、過去に心血管疾患も糖尿病も既往がない者における心血管疾患死に関するハザード比を、観察開始時の年齢、性別、Body Mass Index、高血圧の有無、高コレステロール血症の有無、喫煙の有無、耐糖能の状態(正常、Impaired Glucose Regulation: IGR、新規糖尿病)を説明変数として5つのコホート別に解析したのちメタ解析した。メタ解析の結果をもちいて、いかなる危険因子の組み合わせが心血管疾患の最もハイリスク群を選別するのか調査した。結果: 年齢、高血圧、高コレステロール血症、新規糖尿病は過去に心血管疾患も糖尿病も既往がない者における心血管死の有意な死亡予測因子であった。すなわち、年齢が10歳上昇、高血圧、高コレステロール血症、新規糖尿病(参考群;正常耐糖能)に対応するハザード比はそれぞれ1.97 (1.69-2.30)、1.57 (1.10-2.24)、1.49(1.05-2.10)、3.42(2.23-5.23)であった。過去に心血管疾患のないもののなかでは、”高血圧もしくは高コレステロール血症を呈している新規糖尿病”が心血管死の最もハイリスクグループであり、これらは”高血圧もしくは高コレステロール血症を呈している既知糖尿病”と同程度の死亡の危険度を有していた。”高血圧も高コレステロール血症もない新規糖尿病”は”高血圧か高コレステロール血症を呈しているIGR”と同程度の死亡の危険度を有していた。結語:糖尿病に関連する心血管疾患の予防のためには、高血圧もしくは高コレステロール血症を呈している新規の糖尿病を捕捉し介入することが重要である。
  • 吉岡 成人
    セッションID: AL-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    【はじめに】DECODE study、舟形スタディをはじめとして、食後高血糖が心血管リスクとして重要であることに関しては、いくつもの疫学成績が集積されている。しかし、2型糖尿病患者の食後高血糖に介入して、心血管系のイベントがどの程度減少するかについて検討した臨床データはない。そのなかにあって、DIS(Diabetes Intervention Study)は、新規2型糖尿病患者を経年的に追跡して食後高血糖と生命予後との関連を検討した臨床成績として注目される。【DISの概要】 DISは新たに2型糖尿病と診断された30歳から55歳の1,139人を対象に、心筋梗塞と総死亡に対するリスクファクターを検討した試験である。糖尿病患者を、(1)通常の治療、(2)集中的な患者教育、(3)集中的な患者教育とクロフィブレートによる治療の3群に無作為に分類し、11年間経過を追跡したところ、心筋梗塞を15.2%に認め、死亡患者は19.8%であった。心筋梗塞のリスクファクターは、年齢、喫煙、血圧であり、総死亡に対するリスクファクターは性(男性)、血圧、トリグリセリド、食後高血糖、喫煙であった。さらに、追跡調査の成績では、虚血性心疾患のリスクファクターは性(男性)、食後高血糖、トリグリセリド、血圧であると報告されている。【DISの臨床的意義】DISの成績によれば空腹時血糖値が良好であっても、食後1時間血糖値が180mg/dlをこえる場合には心筋梗塞の発症率は3倍以上となり、食後高血糖をコントロールすることで心筋梗塞の発症を回避するためのNNT(number needed to treat)は11.2であった。【おわりに】2型糖尿病患者においても食後高血糖と虚血性心疾患の関連が示唆されるが、DISは食後高血糖に介入した試験ではない。糖尿病患者の食後血糖に直接介入した臨床試験の結果が待たれる。
  • 田中 逸
    セッションID: AL-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    UKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)は新規に診断された2型糖尿病患者5,102例を対象とした大規模前向き疫学研究である。当初3ヶ月間の食事指導後、空腹時血糖が108-270 mg/dlで症状のなかった4,209例が無作為に強化療法群と従来療法群の2群に割り付けられた。強化療法群はSU薬またはインスリンを用いて空腹時血糖108 mg/dl以下を目指し、従来療法群は原則として食事療法のみで、空腹時血糖270 mg/dl以下を目標とする穏やかなコントロールが行なわれた。平均10年間の血糖管理状況は、強化療法群のHbA1c 7.0%に対して、従来療法群は7.9%であった。これは我が国の測定法では、6.7% vs. 7.6%に相当する。また160/90 mmHg以上の高血圧合併1,148例に対して、ACE阻害薬またはβ遮断薬を用いて厳格にコントロールを行なう群(目標150/85 mmHg)と緩やかなコントロール群(目標180/105 mmHg)に割り付けられた。平均8.4年間の両群の血圧変動は厳格群144/82 mmHgに対し、緩やかな群は154/87 mmHgであった。 UKPDSでは死亡や動脈硬化症、細小血管合併症など多くのエンドポイントが設定された。今回のテーマである心血管疾患に関する結果に注目すると、0.9%のHbA1c差では心筋梗塞、脳血管障害のいずれの発症率も有意な減少は認められなかった。また収縮期圧10 mmHg、拡張期圧5 mmHgの血圧差では心筋梗塞の発症率には有意差はなく、脳血管障害で44%の有意な相対的リスクの減少が認められた。その後、対象者全体の心血管障害の発症率や致死率に関する血糖、血清脂質、血圧などの危険因子に関する解析が行なわれた。今回はこれらの成績を中心にご紹介し、心血管障害の発症阻止に関してUKPDSから学ぶ点は何かを考えてみたい。
  • 曽根 博仁, 赤沼 安夫, 山田 信博
    セッションID: AL-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    2型糖尿病患者には心血管疾患が多く合併することが知られるが、日本人2型糖尿病患者における心血管疾患に関するデータは未だ十分でない。また欧米の大規模臨床研究のエビデンスを日本人糖尿病患者の診療に適用する際には、日本人患者と欧米人患者との病態背景の差を考慮する必要があるが、その差違に関するデータも多くない。
    平成8年度に開始されたJapan Diabetes Complication Study(JDCS)は、欧米人以外の2型糖尿病患者を対象にした世界初の大規模臨床介入研究である。登録されている患者は全国59ケ所の糖尿病専門施設に外来通院中の2205名(開始時平均年齢59歳、平均HbA1C7.7%)の方々である。開始後、血糖コントロール、血圧、脂質、細小血管合併症(網膜症や腎症など)、大血管合併症(虚血性心疾患や脳梗塞など)などの項目について、毎年調査を継続して8年目の現在に至っている。
    このデータベースの解析により、最近の日本の2型糖尿病患者における心血管疾患を含む各種血管合併症の発症率、発症のリスクファクター、治療内容などが判明した他、日本人糖尿病患者と白人患者の病態背景が大きく異なることもわかってきた。その結果、日本人糖尿病患者に最適化された心血管疾患の予防・治療エビデンスを確立するためには、日本人患者の大規模臨床研究によるエビデンスが必要であることが明らかになり、本研究の今後の継続により、将来の日本の糖尿病診療に貢献する多くのエビデンスが期待される。
シンポジウム:糖尿病における心血管疾患の病態解明の現状
  • 内潟 安子
    セッションID: AS-1-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    糖尿病、高脂血症、高血圧は心血管疾患に対する独立した危険因子である。しかし、2型糖尿病の高インスリン血症が高血圧の発症に促進的に関与、またインスリンの作用不足が高脂血症の発症に促進的に関与することなどから、共通の土壌(common soil)からお互いに複雑にからみあって各々発症することが想定される。このような現状のなかで糖尿病における心血管疾患の発症に及ぼす血糖コントロールを考察するとき、2つの問題点に焦点をあわせてみたい。 はじめに血糖コントロールの関与度である。まず、インスリン抵抗性のない1型糖尿病とインスリン抵抗性を背景にして発症する2型糖尿病を分けて考察する。日本人1型糖尿病における心血管疾患の合併は当センターにおいても稀であるので、欧米人1型糖尿病患者における報告(EURODIAB、Pittsburgh Epidemiology of Diabetes Complications Study、略して EDC、ならびにDCCT/EDIC)から検討する。総じて冠動脈疾患と血糖コントロールの関連性にはありとするものとなしとするものがある。なしとする報告は対象全体の血糖コントロールが良好でないために他の因子との統計学的有意差を出すことが困難であったと考えられる。DCCT/EDICはDCCT時の強化インスリン群の血糖コントロールが他の因子とは独立してDCCT後のIMTの進展を有意に抑制することを明らかにした。これは1型糖尿病においても他の因子より血糖コントロールの重要性を示す。 次ぎに、IFG、IGT、2型糖尿病と分けて、心血管疾患に対する血糖コントロールの予測度および関与度を考察してみる。舟形スタデイ、DECODE/DECODAスタデイとも GTT時のIFGは心血管疾患に対する危険因子とはならないが、糖負荷後2時間血糖値が他の因子とは独立して危険因子となった。糖尿病と診断された患者を対象にした調査(UKPDS、DIS、Kumamoto Study、など)になると、血糖コントロールや食後血糖値が心血管疾患の危険因子としてあげられるが、リスク減少率が細小血管障害より小さかったり、脂質代謝異常や血圧の重要性が血糖コントロールとは独立して増してくる。糖尿病患者に対するこれらの薬剤の効果は多くの大規模調査で証明されている。まとめると、血糖値は食後だけ高い時期から心血管疾患の危険因子となるが、糖尿病になると血糖値だけでなく他の因子の影響も同等に大きくなることが示唆される。 最後にインスリン抵抗性のある糖尿病患者に対するインスリン治療による血糖コントロールが心血管疾患の危険因子になりうるかどうかであるが、今日これは否定的である。
  • 片山 茂裕
    セッションID: AS-1-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    1型であれ2型であれ糖尿病患者の50%は最終的にが高血圧を合併する。糖尿病における高血圧の成因には、高血糖・インスリン抵抗性/高インスリン血症・交感神経の緊張・糖尿病性腎症などが関与する。最近では、血管内皮細胞機能の障害による一酸化窒素(NO)の低下や、脂肪細胞から産生されるアディポサイトカインであるアディポネクチンの低下も、高血圧に関与することが示唆されている。
    高血圧の合併は、心血管系疾患の発症率を2~3倍増加させ、さらには糖尿病性網膜症や神経障害や腎症の進行を促進する。HOT StudyやUKPDSで示されたように、糖尿病患者おける厳格な血圧コントロ-ルは血糖コントロ-ルに優るとも劣らないほど心血管系疾患の発症率を減少させ、糖尿病性腎症の進展を遅延させる。このような点を踏まえ、日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」(JDS2004)では、糖尿病は高リスク群との考えから降圧目標を130/80 mmHg未満としている。すなわち、血圧が140/90 mmHg以上あれば降圧薬による治療を直ちに開始し、130-139/80-89 mmHgの場合にはライフスタイルの修正を指導し、3_から_6ヶ月後に血圧が130/80 mmHg未満に低下しなければ降圧薬を開始する。そして、糖尿病患者における第一選択薬は、臓器障害を改善しインスリン抵抗性を改善するACE阻害薬・アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)・長時間作用型Ca拮抗薬を勧めている。糖尿病患者の高血圧が治療抵抗性のことが多く複数の降圧薬が必要であることが多い。したがって、少量の利尿薬尿が必要な場合もあること、虚血性心疾患がある場合にはβ遮断薬が必要なことも述べられている。
    従来ある程度進行するとpoint of no returnがあり非可逆的と考えられてきた糖尿病性腎病変が、長期間正常血糖を維持することで可逆的である可能性が報告された。ACE阻害薬やARBで平均血圧を92 mmHg未満(125/75 mmHg未満に相当)に厳格にコントロ-ルすると、蛋白尿が減少し、あるいは微量アルブミン尿が正常化すること(寛解/退縮)が示唆されている。
  • 平野  勉
    セッションID: AS-1-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    糖尿病では生命予後を規定する冠動脈疾患(CHD)や脳血管障害が高頻度に発症する。われわれの施設でもCHDの1/3が糖尿病を有し、糖尿病の既往のないCHDでもブドウ糖負荷試験で高率に耐糖能異常と高インスリン血症が検出された。糖尿病における動脈硬化発症、促進には高血糖のみならずインスリン作用不足による脂質代謝異常が深く関与する。糖尿病ではVLDLやIDLの増加による高トリグリセリド(TG)血症、高レムナント血症と低HDL-C血症が顕著に認められる。LDLコレステロール(C)の増加は軽微であるがアポBが増加し、小型高密度LDL(sdLDL)が増加する。VLDLの増加は肝臓からの過剰分泌と異化の低下による。前者には脂肪合成の亢進とアポBの肝細胞内での分解低下が、後者にはリポタンパクリパーゼ(LPL)の低下やアポCI,CIIIの増加が関係する。糖尿病性腎症では低タンパク血症、腎不全の要因が加わるために脂質代謝異常は複雑かつ重症化する。本邦のCHDにおける血清脂質はsdLDL、アポBが増加し、HDL-Cが低下するなど糖尿病と共通した異常を示す。 特にsdLDLを有する症例においては食後高脂血症が著明となる。SdLDLの生成にはインスリン抵抗性が強く関与するが、CHDにおけるsdLDLの顕著な増加はメタボリックシンドロームとの深い係わり合いを示唆している。血糖コントロールは脂質代謝の改善にも大きく貢献するが、それでも高脂血症が是正されない場合は積極的に薬物治療を試みることが大血管合併症抑制には重要である。 フィブラートは糖尿病に特徴的な脂質代謝異常を総合的に改善する。高TG、低HDL-C血症の顕著な症例が良い適応となる。sdLDLも著明に低下させる。スタチンはLDL-C高値例には第一選択薬であり、ガイドラインで定められた基準を達成するようにする。新規のスタチンにはTG低下作用を有するためHDL-Cが増加、LDLが大型化するものがあり選択の幅が広がっている。 インスリン抵抗性改善薬にはsdLDL低下が期待される。最近の大規模薬剤介入試験の成績は糖尿病における高脂血症の是正が動脈硬化疾患の発症予防や進展阻止にいかに有効であるかを明瞭に示しており、血糖コントロールのみならず血清脂質値にも常に注意を払う必要がある。
  • 加藤 雅彦
    セッションID: AS-1-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    【目的】未治療高尿酸血症患者の血管内皮機能が健常者に比し障害されているか検討すること。【方法】対象は性、年齢、BMIをマッチさせた17例の未治療高尿酸血症(HU)患者と9例の健常者(C)。血管内皮機能を超音波を用いた反応性充血時の上腕動脈血流依存性血管拡張反応(Flow-mediated dilation:FMD)を内皮依存性血管拡張反応、ニトログリセリン舌下後の血管拡張(Nitrate-induced dilation:NID)を内皮非依存性血管拡張反応として評価。さらに、17例中12例の未治療HU患者にallopurinol 50mg/dayあるいはbenzbromarone 25mg/dayをランダムに割り付け、3ヶ月間治療後にFMDとNIDを再評価した。【成績】治療前、FMDはHU患者にて有意に障害されていた(HU vs C: 4.0±0.7% vs 6.4±0.8%, p=0.044)が、NIDは(HU vs C: 12.3±1.0% vs 11.8±2.3%, p=0.82)と有意差を認めなかった。3ヶ月間の治療後、血清尿酸値は8.5±0.3 mg/dlから6.7±0.3 mg/dlへ有意に低下し、血圧、脂質、血糖において有意な変化は認めなかった。治療により、FMDは3.4±0.6%から5.8±0.7%へ有意に改善し、血清尿酸値の低下の程度とFMDの改善度には有意な相関が認められた(r=0.587, p=0.045)。【結論】未治療高尿酸血症患者の内皮依存性血管拡張反応は健常者に比し障害されていた。さらに血清尿酸値を薬物治療によって低下させることにより、内皮依存性血管拡張反応の改善が認められた。血清尿酸値は血管内皮機能障害のリスクファクターの一つである可能性が示唆された。
  • 徳永 勝人
    セッションID: AS-1-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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     肥満、特に内臓脂肪の蓄積は糖尿病、高脂血症、高血圧を合併し動脈硬化性心血管疾患と密接に関連する。多くの危険因子が一個人に集積することが動脈硬化発症の大きな基盤となっていると考えられ死の四重奏、メタボリック症候群、内臓脂肪症候群などと呼ばれている。内臓脂肪の蓄積は門脈血中の遊離脂肪酸、グリセロールを増加させ、それらが直接肝臓に流入することにより代謝異常を引き起こす。最近の研究により脂肪組織、特に内臓脂肪は様々なアディポサイトカインを分泌し、脂肪細胞の機能異常が肥満合併症を引き起こすことが明らかとなっている。内臓脂肪が増加すると抗動脈硬化作用、抗糖尿病作用、抗炎症作用を有するアディポネクチンが減少し、動脈硬化や糖尿病を促進するPAI-1、TNF-αなどが増加することが明らかとなっている。 これらのことを踏まえ、日本肥満学会では新しい肥満症治療ガイドラインで、肥満症の治療は(1)脂肪細胞の機能異常による肥満症(糖尿病、高脂血症、高血圧、高尿酸血症、脂肪肝、冠動脈疾患、脳梗塞)と、(2)脂肪組織の増加による物理的障害による肥満症(整形外科的疾患、睡眠時無呼吸症候群、月経異常)の2つに分けて考える必要があるとしている。肥満症の食事療法は(1)のBMI25以上で内臓脂肪面積100平方cm以上または健康障害を有する脂肪細胞機能異常による肥満症では数kgの体重減少でも代謝異常が改善するので緩やかな肥満症治療食18(1800kcal),16,14,12を用い、(2)のBMI30以上で脂肪組織の増加による肥満症では、病態の改善のため体重を大幅に落とさなくてはならないので、より厳しい肥満症治療食14(1400kcal),12,10を用いる。肥満症の食事療法では1000から1800kcalという幅広い摂取エネルギー量の中から医師や栄養士がひとりひとりにあった食事療法を選択するよう心がけねばならない。 肥満症の薬物療法は個々の危険因子に対応するものでなく、内臓脂肪を減少させたり、アディポサイトカインに作用したりして1つの薬物で複数の危険因子に対応するものが望まれる。肥満症治療のゴールを標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22に求める必要はなく、肥満症の治療は肥満に伴う合併症を減量させることにより改善することにある。体重を数kg、腹囲を数cm減少させるだけで糖・脂質代謝異常、高血圧などは著明に改善することを患者によく説明し動機づけにするとよい。
  • 加藤 丈夫
    セッションID: AS-1-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    糖尿病に伴う大血管障害として、患者の生命予後に最も重大な影響を与えるのは虚血性心疾患と脳血管障害である。ここでは神経内科専門医の立場から、以下の2つのテーマについて述べる。1. 糖尿病と脳卒中(特に脳梗塞)1) 脳卒中の発症:糖尿病が有症候性脳卒中の危険因子であることは、既に世界各地のコホート研究が示している。私どもは、75gOGTTで「正常型」、「境界型」、「糖尿病型」と診断された地域住民(山形県舟形町)を12年間追跡調査し、虚血性心疾患と脳卒中の発症率を検討した。その結果、虚血性心疾患の発症でみると、「糖尿病型」は「正常型」に比べ有意な危険因子であったが、「境界型」と「正常型」との間には有意差はなかった。一方、脳卒中の発症率は「糖尿病型」と「境界型」ではほぼ同等であり、両者は「正常型」に比べ有意な危険因子であった。2) 無症候性脳梗塞:無症候性脳梗塞が有症候性脳梗塞の危険因子であることが報告されている。一方、糖尿病が無症候性脳梗塞の危険因子であるか否かは一定の見解がない。そこで、75gOGTTで「正常型」、「境界型」、「糖尿病型」と診断された地域住民(舟形町)および「既知糖尿病」患者を対象に脳MRI検査を行った。その結果、年齢と高血圧は無症候性脳梗塞の有意な危険因子であったが、「境界型」、「糖尿病型」、「既知糖尿病」はいずれも有意な危険因子とはならなかった。したがって、高血圧と糖尿病では、有症候性脳梗塞の発症機序に違いがあることが示唆された。2. 糖尿病性バリズム・舞踏病 血糖コントロールが悪い時や糖尿病性昏睡の回復直後に出現するバリズムや舞踏運動であり、被殻の一過性虚血が原因と推定されている。高齢者にやや多い傾向がある。左右の被殻に病変がある時は左右の四肢に、病変が一側の時は反対側の上下肢に症状が出現する。脳MRIでは、被殻はT1強調画像で高信号、T2強調画像で等信号ないし低信号を呈する。造影剤による増強効果はない。ときに、被殻のみでなく、尾状核や淡蒼球に病変が広がることもある。多くの場合、神経症状は一過性であり、経過とともに消失する。これに並行して、脳MRI所見も正常化する。バリズムや舞踏運動に対して、ハロペリドール等が奏効し、これにより、患者のADLを改善できる。
  • 笹嶋 唯博
    セッションID: AS-1-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    粥状硬化性動脈硬化症は高齢化や糖尿病の増加により重症かつ複合病変を有する傾向が強くなっている。下肢動脈閉塞(ASO)は、骨盤、大腿、下腿型閉塞の複合型が70%を占め糖尿病に見られるASOは下腿動脈の多発性閉塞(下腿型)を特徴とする。同時に冠動脈疾患を50%, 頭蓋内、外頸動脈狭窄病変を25%以上に合併している。このようなハイリスク重症虚血肢例の増加と相俟ってにより手術術式の低侵襲化がはかられる一方、QOLをできるだけ改善する手術が計画されるようになってきた。術前ジピリダモール負荷心筋シンチグラフィーと頸動脈系MRAによる術前評価が必須となっている。間欠性跛行あるいはABPI>0.4ならば二期的手術とし、合併主要臓器副病変に対する手術を優先する。有意の冠動脈病変はPCIを行い心危険因子を除去する。頭蓋外頸動脈狭窄とPCI非適応冠動脈病変の合併例はこれらの同時手術が行われ、前者を先に再建する。無症候性頭蓋内頸動脈有意狭窄例は血圧を100mmHg以下に下げない術中、術後管理が求められる。重症虚血肢で頭蓋外頸動脈病変や冠動脈の合併例では下肢バイパスと頸動脈内膜摘除やoff pump CABGの同時手術とし下肢バイパスは救肢のみとし、二期的に完全血行再建を行う。糖尿病・維持透析例は、下腿型閉塞を特徴とするので、その救足では足関節位下への自家静脈バイパスが必須である。また足趾壊疽を高率に合併するのでバイパスと同時に壊疽趾の切除が行われ、二期的に切断端の形成を行い救足を達成する。遊離植皮や遊離筋皮弁移植による断端形成により救足率の向上が得られている。
  • 上嶋 健治
    セッションID: AS-1-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
     糖尿病患者の血管病変はびまん性であり、しかも狭窄度が強く、重症病変が多い。循環器内科医は、糖尿病を背景とした心疾患患者の診療には苦慮させられる。とくにカテーテルインターベンション(PCI)においては、好適応となる病変が少なく、再狭窄の頻度も高い。Van Belleらの報告では、糖尿病症例のPCI後の再狭窄は35_%_から71_%_と通常の30%前後に比べてはるかに高率である。さらに、PCI治療による糖尿病例の生命予後は、CABG治療群よりも不良であり(BARI研究)、しかも、冠動脈内ステント留置例でも糖尿病合併例の予後は冠動脈バイパス術(CABG)に比して悪い(ARTS試験)。薬剤溶出ステントを用いてもインスリン治療群ではやはり再狭窄率が高いとされている。ランダム化比較試験では、PCIを受けた糖尿病患者の予後はCABGを受けた患者のそれに劣る。しかし、当施設の経験からは、病変形態や合併疾患などから適応症例を吟味してPCIを行えば、その予後は必ずしも悪くない。循環器専門医の資質が問われる点と考える。はじめに述べたように、糖尿病患者の血管病変はびまん性であり、しかも狭窄度が強く、重症病変が多い。糖尿病性腎症による透析患者の冠動脈硬化にはPCIやCABGが不可能な症例もまれではない。また、冠血管の異常だけでなく、動脈硬化病変の進行は動脈瘤などの大動脈疾患の原因となる。さらに、糖尿病に起因する自律神経障害は不整脈や突然死にもつながる。糖尿病患者の死因の多くは心血管疾患であることを考えると、糖尿病を診る機会の多い医師は、これらの血管病変が軽微なうちに、循環器専門医のコメントを求め、場合によっては定期的なコンサルトを行うべきであろう。逆に、虚血性心疾患を診る機会の多い医師は、危険因子としての糖尿病に注意して、場合によっては糖尿病専門医のコメントを求めるべきであろう。学会が認定する専門医として、循環器専門医は6,639名、糖尿病専門医は2,198名いるとされている。しかし、両学会の専門医を両方有する医師は86名に過ぎない(平成9年調査)。糖尿病患者の診療には、糖尿病専門医と循環器専門医の理解と協調が不可欠であり、専門性の壁を越えた相互の連携が必須と考える。
レクチャー:糖尿病の成因と病態の解明に関する研究の進歩(1)
  • 武田 純
    セッションID: BL-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
     膵β細胞の細胞生物学的な研究により、インスリン分泌に関する知見は多く集積された。しかし糖尿病の治療に関しては、基本的には補充療法に依存する。機能の根本的な補完には、インスリン遺伝子を始めとした特異的遺伝子の網羅的な把握とその調節経路の解明が欠かせない。一方で、β細胞そのものを再生するアプローチが注目を浴びている。前駆細胞から膵島への分化は種々の転写因子と液性因子の協調によって誘導されていく。成体でのβ細胞の数は消失と新生のバランスで決定されるが、導管に存在する幹細胞からの誘導や成熟β細胞の複製の可能性などが示唆されている。この過程でも多くの転写因子が機能を発揮する。類似の分化誘導は肝細胞や小腸細胞でも可能とされるので、共役因子を含めた転写複合体の機能を時空間を超えて理解することが要求される。 ゲノム解析の終了により、ヒトは染色体上に22,000種類の遺伝子を有することが明らかとなった。膵島EST (expressed sequence tag) を中心としたトランスクリプトーム研究により、最も大きな遺伝子範疇は、転写因子などの核内因子をコードする遺伝子群であることが判明した。機能が関連する一連のHNF (hepatocyte nuclear factor) 転写因子の異常は常染色体優性遺伝の若年糖尿病MODY (maturity-onset diabetes of the young) を生じる。グルコース刺激に応答したインスリン合成・分泌において重要な遺伝子群の発現が障害されることに起因する。また、同遺伝子群にはβ細胞の発生・分化に重要なものが多く含まれることも興味深い。最近、MODY遺伝子の重度障害は単独でインスリン分泌不全を呈するが、軽度障害は2型糖尿病の発症リスクとなる可能性が示された。従って、一般の2型糖尿病の感受性遺伝子も相当部分が同転写ネットワークに含まれることが想定される。また、HNF転写因子はもともと肝で同定された分子であるが、最近、胆汁酸コレステロールや中性脂肪の代謝においても重要であることが注目されている。従って、膵β細胞機能の形成と維持に関する調節破綻は糖尿病の成因となるが、同時に高脂血症などの関連代謝異常との分子リンクを形成すると考えられるので、両組織において新たな共通転写因子と標的遺伝子を求めて総合的に解析することが病態を理解する上で重要である。
  • 池上 博司
    セッションID: BL-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    1型糖尿病は自己免疫性と特発性に分類される。自己免疫性は免疫学的機序により膵β細胞が破壊されて発症する臓器特異的自己免疫疾患である。本講演では自己免疫性1型糖尿病に関して、特に遺伝因子の側面から見た成因と病態に関する最近の知見をお話したい。
    主シグナル:主要組織適合遺伝子複合体(MHC)(IDDM1
    1型糖尿病は遺伝因子と環境因子の複雑な相互作用により発症する多因子疾患である。遺伝因子は複数の疾患感受性遺伝子により構築されており、なかでもMHC(ヒトではHLA)領域の疾患感受性遺伝子(IDDM1)の影響が最も強い。HLAの中でもクラスIIのDRおよびDQ遺伝子が疾患感受性に強く関与するが、それに加えてクラスI領域の第2の遺伝子が疾患感受性や発症年齢を修飾し、IDDM1が複数のコンポーネントより構成される遺伝子複合体であることが明らかとなっている。クラスII MHCは自己抗原の提示により自己免疫開始のシグナルとして、クラスI MHCは標的細胞破壊の際のシグナルとして膵β細胞傷害に関与する可能性が考えられる。
    副シグナル: CTLA4(IDDM12
    免疫反応はMHCによる抗原提示を介する主シグナルと、これを正あるいは負に調節する副シグナルによって巧みに調節されている。負の副シグナルが障害されると免疫抑制が不十分となり、自己免疫の疾患感受性が高まることが予想される。負の副シグナルに関与する代表的な遺伝子CTLA4の多型が、mRNAのサブタイプの量的変化を介して1型糖尿病ならびに甲状腺自己免疫の感受性に関与することが報告されている。免疫系の抑制に関与する細胞内シグナル伝達の修飾分子PTPN22SUMO4Cblbがいずれも1型糖尿病に関与することも報告されており、抑制性シグナルの異常が自己免疫発症において重要な役割を担っていることが示唆される。
    自己抗原と免疫寛容:インスリン遺伝子(IDDM2
    膵β細胞のみに発現すると考えられていたインスリンが胸腺にも発現していることが明らかとなっている。インスリンに限らず自己免疫疾患の標的抗原はすべて胸腺細胞に発現しており、これと反応する自己反応性T細胞を除去することによって免疫学的寛容の維持に寄与しているものと考えられる。インスリン遺伝子領域のIDDM2は胸腺におけるインスリンの発現低下を介して1型糖尿病発症に関与することが示唆されている。
  • 荒木 栄一
    セッションID: BL-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
     2型糖尿病は、日本糖尿病学会によって「インスリン分泌の低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で、それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある。」と定義されている。従って2型糖尿病発症機構の解明には、インスリン分泌機序やインスリン作用機序の理解、並びに糖尿病発症に至るまでのこれらの障害機序の解析が必要である。さらに、遺伝因子や環境因子がこれらインスリン分泌やインスリン作用にどのように影響するのかを明らかにする必要がある。 本レクチャーでは、1)2型糖尿病の遺伝的背景とSNPsを用いた2型糖尿病疾患感受性遺伝子解析の現況、2)環境因子、特に肥満の果たす役割、3)インスリン分泌機構とその障害機序、4)インスリン作用機構とその障害機序、などに関する研究の進歩について概説し、2型糖尿病の発症機構についてその理解を深めたい。
  • 前川 聡
    セッションID: BL-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    2型糖尿病をはじめとする糖代謝異常を考える上で、膵ラ氏島beta細胞のインスリン分泌不全とともに肝臓および末梢組織、特に骨格筋組織におけるインスリン作用低下が重要である。インスリン作用低下の病態はインスリンによる肝臓での糖放出抑制の障害と骨格筋および脂肪組織におけるブドウ糖取り込み促進作用の低下であり、これをインスリン感受性低下、あるいはインスリン抵抗性状態と呼ぶ。ピマインディアンにおいて行われた長期経過観察研究における耐糖能正常から耐糖能異常、さらには糖尿病へ悪化した症例での検討により、糖尿病への最終的な進展はインスリン分泌の低下が規定するが、糖尿病発症を阻止するためには初期の骨格筋組織におけるインスリン感受性低下、すなわちブドウ糖取り込みの障害の是正が重要であるとされている。また、最近、インスリン抵抗性は、肥満、耐糖能障害(糖尿病)、高血圧、高脂血症が同一個人に集積し、冠動脈疾患などの動脈硬化症をきたすメタボリックシンドロームと呼ばれる疾病の根幹をなす病態と考えられて、インスリン感受性改善の試みは、糖尿病発症予防は言うに及ばず、動脈硬化性疾患の発症予防・進展阻止の面からも極めて重要であると考えられる。しかしながら、インスリン抵抗性発症の分子機構については未だ不明な点も多く残されており、インスリンシグナル伝達機構の解明とともに重要な研究課題である。最近の研究の進歩により、インスリン抵抗性がインスリン情報伝達の各ステップにおいて生じること、その発症機構として、遺伝的背景に直接起因するものやライフスタイルの変化に伴って誘導される種々のインスリン抵抗性惹起因子が関与するものが存在することが明らかになってきた。本シンポジウムでは、当教室の成績に加えて、これら最近の知見を紹介し、インスリン抵抗性の発症機構につき概説したい。
  • 宮川 潤一郎
    セッションID: BL-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    近年、再生医学により個体の欠失した臓器機能を補充ないし回復させるための様々な研究がなされており、糖尿病の分野においても新たな糖尿病治療法として、膵β細胞再生医療を目指した研究が行われている。研究内容を大別すると、β細胞移植治療やバイオ人工膵臓のためのcell sourceの確保をめざしたインスリン産生細胞の作成および膵臓あるいは他臓器を標的としたin vivoにおける再生誘導・促進療法の開発などであり、主に以下のようなアプローチによる検討がなされている。(1) インスリン産生細胞の作成 (1) ES(胚幹)細胞の利用 (2) 膵臓あるいは他臓器由来の内分泌前駆細胞ないし組織幹細胞の利用(2) in vivo再生誘導・促進療法 (1) β細胞分化・増殖誘導ないし促進療法 (2) 骨髄細胞移植によるβ細胞再生療法の可能性 これらin vitroおよび in vivoにおけるアプローチも、効率的かつ再現性のある増殖・分化誘導法の確立という点など解決すべき問題を抱えており、いずれも臨床応用可能とまでには至っていないのが現状であろう。また、実際には、同時に移植免疫あるいは自己免疫(自己免疫性1型糖尿病の場合)の制御が要求される。再生医療の対象となる糖尿病患者においては、少なくともインスリンによる補充療法が存在するし、膵臓移植や膵島移植も技術的には確立されており、再生医療が存在しなければ患者を救えないという状況にはない。しかし、前者においては頻回の自己注射や血糖測定等によるQOLの著しい低下を余儀なくされており、後者においては技術的には可能であってもドナーからの臓器提供は極めて少なく、医療経済的な問題も含め、その恩恵を享受できる患者は限られている。膵β細胞再生医療はこれらの治療法を補完する意味でも意義があり、その実用化を目指したさらなる進歩が望まれる。
  • 稲垣 暢也
    セッションID: BL-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    グルコース刺激によるインスリン分泌機構として従来より代謝説が広く受け入れられている。すなわち、膵β細胞に取り込まれたグルコースが代謝され産生されたATPがインスリン分泌を促進するという説である。ATP感受性カリウム(KATP)チャネルは、細胞内のATPレベルによって開閉が調節されるカリウムチャネルであり、代謝説によるインスリン分泌機構において中心的役割を果たすと考えられてきた。同時に、KATPチャネルは経口血糖降下薬として広く用いられているスルホニル尿素薬の作用部位でもある。膵β細胞のKATPチャネルは内向き整流性カリウムチャネルのKir6.2とATP-binding cassette(ABC)タンパク質ファミリーの一つであるスルホニル尿素受容体(SUR1)の2種類のサブユニットのヘテロ8量体からなる。ノックアウトマウスを用いたこれまでの種々の研究によれば、KATPチャネルは膵β細胞のインスリン分泌機構だけでなく脳や心筋において虚血に対する防御機構として働いており、生体の代謝センサーとして機能していることも明らかになってきた。また、ヒトにおいては、膵β細胞のKATPチャネルを構成するKir6.2サブユニットやSUR1サブユニットの遺伝子異常により、高インスリン性低血糖症を引き起こすだけでなく、新生児糖尿病などの各種糖尿病を引き起こすことも明らかになってきた。本講演では、膵β細胞のインスリン分泌調節機構について、特にKATPチャネルを中心に最近の知見を概説する。
シンポジウム:特殊な管理を要する糖尿病治療
  • 及川 眞一
    セッションID: BS-1-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    肥満症は糖尿病発症の最も重要な要因であり、また、肥満を有する糖尿病例では体重是正が治療ターゲットの一つとして取り上げられる重要な身体所見である。近年は脂肪細胞が糖・脂質代謝の調節因子として重要な生理活性物質を合成分泌することが広く認められ、アディポサイトカインの臨床的な意義や作用機序の解明が進められている。また、脂肪萎縮性糖尿病に対するレプチン投与など、特殊な糖尿病に対する治療応用が考案されている。このように進歩した研究の中で臨床の場では糖代謝の是正に対する体重のコントロールが大きな役割を果たし、その実現が病態の改善をもたらすことが多く経験される。ここでは「肥満」が特殊な管理を要する項目の一つに挙げられたが、このことは日常臨床の場で体重減少の意義を痛切に感じながら、望ましい体重是正が困難である例を多く経験することによるものと考えられる。ここでは以下の3症例を挙げてその問題点を整理して討議したい。症例1:OK.79歳、女性。2型糖尿病、単純肥満で血糖が上昇したため入院治療を行った。高齢者肥満に対する食事療法として低カロリー食を行い、短期入院で退院が可能であった。症例2:KA.28歳、女性。1型糖尿病に多嚢胞性卵巣(Polycystic ovary; PCO)を合併した症例。高度の肥満を合併し、食事療法が困難であり、また、インスリン強化療法によってもコントロールを得ることが困難であった。症例3:MT.18歳、男性。小児肥満を指摘されていたが、13歳時に糖尿病と診断された。食事療法のみでコントロール良好の時期もあったが、体重の増加が著しく、また、最近では食事療法の実践が困難となり、血糖が上昇してきた。以上のように肥満の解消が血糖コントロール対して有効であることが十分に理解されていてもなお、臨床の場では困難な例が少なくなく、これらの3例を挙げて議論したい。
  • 大関 武彦
    セッションID: BS-1-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    小児の特質は常に成長(身長・体重などの身体的指標)・発達(精神・運動、性成熟などの機能的変化)を示す点であり、特にこれらの著しい時期として乳児期、思春期があげられる。今回はこのうち以下の4項について概説する。(1)新生児期・乳児期の糖尿病:新生児の糖尿病は永続型の他に、自然経過でインスリン分泌不全が回復する新生児一過性糖尿病(TNDM)があり(症例1)、膵の成熟に関与する6q24などに病因が想定されるが、その後に再発する例も知られている。乳児期の糖尿病の治療には適切な身体発育の他に、低血糖や精神心理的な発達などに注意を払う必要があり、インスリン投与回数、食事(哺乳)などを患児に適合した形で調整する必要がある。(2)小児の2型糖尿病と肥満:近年の我が国では小児期においても2型糖尿病の増加が指摘され、10万人当たり1型(1.5人)に比べ2型(4_-_7人)であり、肥満の頻度(8_-_12%)も未だ増加傾向といえる。肥満に伴う場合は体重減少をはかるが、成長に必要な栄養素(特に蛋白質、カルシウムなど)は確保しつつ減量をはからなければならない。有病率の増加もあり薬物療法の適応もより拡大される傾向にあり、メトフォルミンの使用例も増加している。(3)思春期の糖尿病治療:思春期においては1型、2型ともコントロールが不良になる傾向がある。この原因の一つとして内分泌環境の変化の可能性がある。性ホルモンの上昇により成長ホルモン分泌量が増加しインスリン抵抗性が生ずる。しかしながら肝においてはIGF-I産生能が低下し、成長の減速や成長ホルモン分泌の負のフィードバックの低下などがもたらされる。IGF-I投与によりインスリン感受性の改善と成長ホルモン値の低下を認めた報告もあるものの、通常はインスリン投与量の増量(平均値:小児期0.7;思春期直前1.0;思春期1.2U/kg/日)で対応するが、個人差も大きい。精神的な不安定さに起因すると考えられるコンプライアンスの低下にも注意が必要であり、コントロール不良の大きな原因となり、むしろ中心的な悪化要因となっている例も少なくない。(4)摂食異常症と精神心理的トラブル:神経性食欲不振症の発症のきっかけとして肥満との関連がしばしば指摘される。しかしながらこれは最終的な発症の引き金であることが多く、精神的素因・環境が本質的病因と考えられる。思春期の1型糖尿病女子においては摂食行動の異常を認める割合が高いと考えられ、この一部は摂食異常症の発症につながる可能性もあるが、糖尿病のコントロールの悪化につながることがより重大な注意点となろう。
  • 栗山 哲
    セッションID: BS-1-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    糖尿病透析患者の管理で重要な事は、血糖と血圧管理である。I:血糖管理 糖尿病透析患者においても血糖管理の三大原則は、食事療法、運動療法、インスリン注射などの薬物療法である。しかし、一般に腎不全の病態が比較的高カロリー食を要することや、ASOや視力障害による運動療法の制限などから、血糖管理の主体は透析療法自体とインスリン治療である。透析療法が、血糖コントロールに及ぼす影響は透析液のブドウ糖濃度が一因である。血液透析の透析液中ブドウ糖濃度は、通常100-150mg/dlに設定されている。従って、高血糖状態の患者では透析により血糖が低下し、一方、低血糖状態では血糖は上昇する。一方、腹膜透析の場合の透析液には、1.5%、2.5%、4.25%と高濃度のブドウ糖が入っているおり、この一部は腹膜から吸収され体内に入ることから血糖管理は一般的には悪化する。経腹膜的ブドウ糖吸収は1.5%2Lブドウ糖透析液では60Cal、2.5%ブドウ糖透析液2Lでは120Cal程度のエネルギーと概算される。例えば、一日に1.5%ブドウ糖濃度透析液2Lを4回交換している腹膜透析患者では、食事以外に経腹膜的に240Cal摂取されることになる。これらの患者では、摂取カロリーを若干減らすかあるいは、インスリンの増量などを考慮せねばならない。HbA1c 6.5%、FBS 120mg/dl、食後2時間血糖 200mg/dl以下を目標とする。一般に経口糖尿病薬は、体内蓄積から遷延性低血糖があり避けることが望ましい。薬物療法の原則はインスリン皮下注であり、基礎分泌と追加分泌を補う。透析性が低い長時間作用型インスリンは避けるべきである。2型糖尿病では1日2回中間型、不安定型では1日3_から_4回の強化インスリン療法が奨められる。食事療法は、カロリー摂取は30 Cal/kg/日程度とする。適切な運動量としては、激しいスポーツより軽いジョギングや歩行、軽い水中遊泳などが推奨される。 _II_:血圧管理 糖尿病透析患者では、溢水状態が強いため利尿薬やCa拮抗薬などの体液量抑制薬(V-drug)は欠かせない。一方、糖尿病のすべての病期においてACE-IやARBなどレニン抑制薬(R-drug)の脳・心・腎機能保護作用のEBMは枚挙に暇が無い。従って、血圧管理の原則としては、V-drugとR-drugの併用療法を基本とすべきである。
  • 相澤 徹
    セッションID: BS-1-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    I. 応用問題 糖尿病をもつ高齢者の管理は「応用問題」と捉えることができます.糖尿病患者管理の二つの基本原則,1)できるだけ良好な血糖コントロールをめざす,2)糖尿病特有の細小血管症の発症・進展に注意する,に加えて,a)低血糖,b)大血管症(動脈硬化性病変),c)服薬・インスリン注射のコンプライアンス、d)悪性腫瘍を含めた直接糖尿病に関連しない健康問題,e)心理状態も含めたQOL,などに対する配慮が壮年の患者に比べて必要となることが多いからです.基本に加えて多くの付随する問題への継続的な配慮が求められます.II. 個別的対応 前項に述べた問題の有無および軽重は症例によって大きく異なり、かつ一般的に高齢者の心身の健康状態には個人差が大きいので,高齢糖尿病患者では,特に個々の患者に即した個別的な対応が望まれます.III. 非典型的な症状がヒント 高齢者では、高血糖,低血糖,脳血管障害,心筋梗塞,悪性腫瘍,など多くの病態で,臨床症状が非典型的であることが少なくありません.口渇・多飲を訴えない高血糖,無自覚低血糖症,無痛性心筋梗塞,などです.「何となく元気がない」といった微妙な体調の変化の陰に重大な疾患が隠れている場合があるので注意が必要です.III. 数値目標 高齢者の血糖や血圧コントロールをどの程度厳格に行うべきか、は難しい問題です.我々の成績(Katakura et al. Diabetes Care 2003)では、高齢糖尿病患者で、群としてHbA1c 6.8%および血圧136/74mmHg程度が達成されれば、健常な高齢者に近い生命予後が達成でき、血糖コントロールの経年劣化が阻止できること、が示唆されました.この程度の血糖と血圧コントロールが達成された群では、死亡および糖尿病関連イベントの発生に対して、脳血管障害の既往があることと腎障害のあることが、独立した危険因子でした.この群では、高血糖や罹病期間の長いことなどは、もはや死亡および糖尿病関連イベント発症の独立した危険因子ではありませんでした.降圧薬を服用していない低血圧の患者の予後は良好でしたが、降圧薬服用中の患者の低血圧(収縮期血圧125mmHg以下)は脳血管障害の発症頻度を増加させる危険性があることが示唆されました.脳血管障害の既往があって腎障害がある場合、喫煙者では非喫煙者(既喫煙者を含む)に比べて生命予後が明らかに不良でした(3年間で70%が死亡).IV. QOL 糖尿病ケアでは期待される生命予後の範囲で糖尿病に関連した健康障害が出現しない、ということが治療目標ですが、高齢者では「期待される生命予後」が若壮年患者より短いので緩やかな糖尿病管理でも良い、という可能性があります.いたずらに厳格な糖尿病管理を求めることはQOLの劣化につながりかねません.最近の我が国の研究(Araki et al. J Am Geriatr Soc 2004)では、高齢糖尿病患者で"low well being (爽快さの低下)"や"symptom burden (病気の症状を負担に感じていること)"のあることは、脳血管障害を発症する独立した危険因子であることが明らかになりました.V. まとめ 高齢糖尿病患者のケアでは、低血糖に充分注意して血糖管理を行うこと、過度の降圧を避けつつ血圧をコントロールすること、糖尿病管理が患者の心理的負担にならないように注意すること、などが重要です.病歴が長い患者では、高齢になる以前、つまり若壮年期の糖尿病管理の良悪や喫煙状況が高齢になってからの予後を決定する、といっても過言ではないでしょう.高齢糖尿病患者には、これまでの病歴と現在の糖尿病を含めた心身の健康状態に基づいて予後予測を立てて、考えられる余命の中で優しさをこめた糖尿病管理が求められます.
  • 小沼 富男
    セッションID: BS-1-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    インスリン療法中の糖尿病患者で、明らかな理由もなく血糖レベルが大きく変動し、血糖値が極端に不安定なパターンを示すものは、通常「不安定型(Brittle)」糖尿病患者といわれる。しばしば日常生活に支障をきたすような著しい血糖変動、すなわちケトアシドーシスや低血糖を経験する。血糖変動が全く不規則であり、食事や運動の変化に対して予想不可能な反応を示す。原因は多種多様である。1)インスリンの薬物動態の異常として、インスリン抗体、インスリン受容体障害、腎不全、肝硬変、皮下投与インスリンに対する抵抗性など、2)低血糖に対する調節反応の異常として、Somogyi効果、暁現象、無自覚低血糖など、3)消化管障害として、糖尿病性胃無力症、吸収不良症候群など、4)内分泌疾患として、先端巨大症、クッシング症候群、褐色細胞種、甲状腺機能亢進または低下症、下垂体不全、成長ホルモン単独欠損症、副腎不全など、5)慢性の感染症または炎症、6)心理障害として、詐病、偽装的インスリン注射、摂食障害、認識障害、うつ病、アルコールまたは薬物乱用など、のそれぞれが原因となる。 管理としては、まず血糖不安定性が不適切なインスリン治療法によるものか、また治療法が適切でも患者が指示どおりにしていないためか、について明らかにする必要がある。また食事の誤りの有無についても注意深く確認する。明らかな理由が見出せない場合には入院の上で、夜間低血糖や暁現象がないかを確かめる。入院中は食事、運動、そしてインスリン注射に関して再教育をし、さらに入院中のインスリン注射は看護婦が行う。入院しても血糖が安定しない場合には、前述したそれぞれの原因の残りについて検索を行う。 原因が明らかになれば、それを改善する手段を取り、それに応じて食事、運動、インスリン療法に変更を加える。強化インスリン療法を行うが、速効型または超速効型インスリン主体の頻回注射療法が中心となる。さらにCSIIが必要な場合もある。なお精神的に問題のある患者には行動療法や心理療法も有用である。
  • 石井 延久
    セッションID: BS-1-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    古い時代より糖尿病に勃起障害(erectile dysfunction : ED)が合併することはよく知られている。そのため、健康診断や診療時に尿糖を指摘されただけで、男性としての自信を喪失する症例もある。一方、糖尿病は放置すると動脈硬化が進行し、血管障害や神経障害などの重篤な合併症に陥るリスクは高い。このように糖尿病性EDは疾患そのものが心因となる機能性EDと血管や神経の器質性障害によるEDが混在する混合性EDに分類される。EDの診断は国際勃起スコアー5(IIEF-5)を使用されるが、これは国際間のデータ比較にも便利である。一方、機能性EDは突然発症し、器質性EDは大部分が徐々に起こることから問診により両者の鑑別は容易である。また、早朝勃起やマスターベーションによる勃起が確認できれば機能性EDと診断して差し支えない。最近になり、5-phosphodiesterase(5-PDE)阻害薬(バイアグラTM、レビトラTM)が発売され、EDの治療は飛躍的に進歩している。5-PDE阻害薬は一酸化窒素(NO)により平滑筋細胞内cyclic GMP(c GMP)の代謝を阻害して、陰茎海綿体の小動脈(螺旋動脈)や海綿体平滑筋の弛緩を起こしやすくする。そのため、5-PDE阻害薬は非アドレナリン非コリン作動神経末端や陰茎海綿体内皮からNOが産生あるいは放出されないと効果はない。すなわち、5-PDE阻害薬無効例はNOの産生、放出障害を疑わせる。われわれは5-PDE阻害薬を試験的に投与して、効果があればそのまま処方を継続している。一方、5-PDE阻害薬無効症例はNO産生、放出障害の原因を検査するが、欧米では検査を省略して心療内科や精神科に紹介するか、プロスタグランジンE1の陰茎海綿体自己注射や陰圧式勃起補助具による治療を患者やパートナーの希望に沿って選択させることが多い。いずれにしても保存治療が不可能であれば最終的には陰茎プロステーシスの陰茎移植手術が患者に勧められる。 最近になりEDは泌尿器科領域の特殊な疾患からごくありふれた疾患として社会的に認知されつつある。今後、糖尿病専門医の先生方にEDを相談される機会は増加すると予想される。内科領域の先生方にED診療を少しでも興味を持って頂ければ望外の幸せである。
Off Line Discussion -1
  • 高橋 秀夫, 小野 陽子
    セッションID: O-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    症例は17才、女性。家族歴 : 母親が経口血糖降下剤で糖尿病の加療中。既往歴 : 出生時異常なし。8歳時浸出性中耳炎のため手術。学校健診で以前からWPW症候群を指摘されている。現病歴 : 母親が糖尿病のため、通院先の医院で本人が小学生のときから年に1回、血糖値、HbA1cを測定していた。15才、16才のときにHbA1c 5.7%。2003年2月(17才)は6.1%とさらに上昇。75gOGTTでインスリンの低反応を指摘された。母親が家庭の医学書を調べ、ミトコンドリア遺伝子異常を疑い、精査目的に2003年4月28日当院を受診した。初診時現症 : 身長141.2cm、体重38.0kg、BMI 19.1、血圧115/58mmHg、膝蓋腱反射およびアキレス腱反射は正常。初診時検査成績 : 75gOGTTでは、血糖値は115-212-270-283-265mg/dlと糖尿病型を示し、インスリンは3.5(0分)-22.0(30分)-22.7(120分)μU/mlと低反応。HbA1c 6.0%。網膜症、腎症を認めず。遺伝子解析にてミトコンドリア遺伝子3243点突然変異を認めた。生活環境 : 父、母と3人暮らし。高校へ通学中であるが時々欠席することがあり、母親とけんかになることもある。経過 : 母親は自らが糖尿病であることもあり、糖尿病の知識は豊富であるが、今まで本人へはとくに糖尿病の話はしていない。糖尿病の基礎知識、1型、2型糖尿病とは異なることを本人へ話しながら、1400Cal/日の食事療法で治療を開始した。2003年9月からHbA1c 6.7%と上昇してきたためインスリン療法を勧めたが、本人の希望もあり、ナテグリニド90mg/日開始。血糖コントロールの改善がみられないため2004年6月からインスリン療法開始。学校で注射することに心理的抵抗があることもあり、心療内科でのカウンセリングも希望している。母親はできる限り本人へ関わりたいと思っている。本症例のポイント :1.病態から、ある時点でインスリン療法を開始する必要があるが、本人の気持ちも考えてどの時点で始めるべきか?。2.強化インスリン療法が理想ではあるが、学校内で注射するタイミングをどうするか?。学校側との調整、友人との関係をどうするか?。3.思春期における血糖管理、生活習慣へのアプローチはどのようにあるべきか?。4.本人と母親、医療者側と母親との関係はいかにあるべきか?。
  • 石井 英博
    セッションID: O-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    【症例】53歳 女性、会社員。【主訴】左下肢痛、発熱【家族歴】母親および兄弟6人中3人に糖尿病あり。【生活歴】妊娠歴なし。喫煙歴なし。飲酒歴なし。【既往歴】特記事項なし。【現病歴】1993年に検診で糖尿病を指摘されるも放置していた。2001年初めより体重減少(3kg)と食欲不振が出現。6月頃より両下肢の浮腫に気付く。11月初めより、特に誘因なく左大腿部痛と発熱が出現したため、近医受診したところ肺炎を指摘され入院。治療により一旦改善するも、12月中旬より左下肢の腫脹、発赤と発熱が出現し、次第に増悪傾向にあるため12月24日当科を紹介され入院となった。【身体所見】身長157cm、体重45kg(最大体重33歳時65kg)。両眼底に多数の点状出血としみ状出血、硬性白斑と軟性白斑を認める。胸腹部異常なし。左腸骨外側部から大腿・下腿の外側と屈側に高度の腫脹・発赤・圧痛を認める。左下肢全体に中等度の、右下腿に軽度の浮腫を認める。左腓骨神経麻痺を認める。両足部にしびれ感あり。【検査所見】検血:WBC 21600(St 3, Seg 90, Ly 5, Mo 1, Eo 1), RBC 282, Hb 8.8, Ht 26.5, Plt 38.8検尿:蛋白(++)、糖(+++)、ケトン(_-_)血液生化学:T.P. 5.9, Alb 2.5, AST 12, ALT 8, LDH 458, AlP 179, γGTP 18, CPK 13, BUN 21.6, Cr 0.7, Na 132, K 4.4, Cl 92, T. Chol 125, Trig 126, HDL-Chol 25, CRP 18.0, FBS 216, HbA1c 11.0
  • 高原 典子
    セッションID: O-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    症例 77歳 女性2001年(74歳時)糖尿病を指摘され、近医で内服加療を受けていた(アマリール3.5mg/day)が、コントロール不良(HbA1c 9.2%)とのことで当院へ紹介入院。既往歴としては、虫垂炎手術、子宮筋腫手術、胆嚢摘出術あり。家族歴では糖尿病なし。02年7月入院時、身長154.2cm 体重44.5kg BMI 18.8、血圧152/92、HbA1c 9.2%、尿中Cペプチド 64μg/day、抗GAD抗体 7.71U/ml。糖尿病合併症としては、網膜症なし、腎症なし、下肢しびれ感と振動覚低下を認めた。独居であり、ADLは保たれていたが内服管理はあやふやであり、本人も半年ほど前より物忘れがあると自覚していた。入院中、スタッフにより内服の確認を行ったが、血糖コントロールは不良であり、インスリン治療を併用。GAD抗体陽性であることより退院後もインスリン治療が望まれたが、手技の習得は困難であると予想され、またご本人も拒否されたためオイグルコン2.5mg/dayとベイスン0.6mg/dayの併用にて退院となった。退院後は近医でフォローされていたが、3週間後、やはりインスリン自己注射をしてみます、とのご本人の意思があり再入院されるも、やはり自己注射は避けたいと言われ、自己注射は断念。ご兄弟よりも物忘れが進行しているとの情報あり、当院物忘れ外来で精査したところ、MMS 22/30とsubnormalであった。退院2ヵ月後、全身倦怠感と体重減少(-2.5kg)を主訴に入院(HbA1c 9.4%)。入院時よりインスリン併用にてコントロール改善。退院後は近医の協力もあり、イノレットN 15単位を毎日、近医もしくは当院で行うこととした。その後、インスリンを2回打ちにされるもコントロール不良が持続。近医フォロー中に徐々にインスリン注射手技を習得され、自己注射へ移行していた。約1年後、近医でしかられたと誤解され当院へ入院希望あり。インスリン注射手技確認および血糖コントロール目的に入院(HbA1c 8.9%)。退院後、毎週外来に同じ時間に受診してもらい、インスリン量や内服内容の変更を避け、インスリンや内服薬の残量確認など行った。現在までのところ、重症低血糖などのトラブルはなく、体調も良好とのことでHbA1c 7.7%とやや改善し、再度本人希望により近医でのフォローとなった。
シンポジウム:私は療養指導士の資格をこのように活用している
  • 松岡 健平
    セッションID: CS-1-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    糖尿病療養指導士(CDE)は糖尿病とその療養指導に関する幅広い専門知識をもち、患者の生活や社会的条件を理解し、適切な自己管理ができるよう生活指導をする。一方、療養指導は、医師の治療方針に沿って日本の医療法で定められている各医療専門職の業務に則って行われるが、チームメイトとして医師の治療方針の決定をより的確にする役割を持つ。日本糖尿病療養指導士(CDEJ)の検定に合格することは、糖尿病臨床における生活指導のエキスパートとして資格を認められることである。 糖尿病治療は患者の日常であり、患者には医師の治療方針や治療の実際的方法を的確に伝える必要がある。そのためには関連する専門職種がチームを組んで取り組む必要がある。このような認識がCDEを資格とした理由である。CDEの認定試験は、糖尿病教育の知識、経験、資格基準を満たしていかを評価し、専門知識を認証するものである。資格であるのに、それに見合った報酬がないが、とCDEJは免許ではなく、CDE先進国と同じようにあくまで自己研鑽を目的としている。 CDEJの認定試験が職種別ではないことを見れば、この資格は、自己の専門に限定された知識と技能は十分であるとする前提がある。まず、糖尿病という分野において、自己の職責を通して、患者の自己管理能力と知識、理解度、遵守度、その必要性の認識などを評価する。教育を通しておこるすべての結果を適切に記述し記録し、患者を含むチームのものとしなければならない。 各職種に共通する部分は、糖尿病のケアとそれに関連する教育モデルである。このような面が、すでに取得している国家試験の免許と異なる点である。CDEJは患者の心理面、社会面を配慮し、医学的な内容を患者の「心」を判断して、糖尿病自己管理の指導を段階的に進める。近年、患者自身の医療への参画が重要である、と言われている。患者の能力を開発し自己裁量によって治療方針を選択できるようにすることを、「エンパワメント」と呼び、プロセスが大事であり、教育介入や対策により得られる。患者のコンプライアンス(治療環境への適応と順守)を向上させることは、医療側の患者に対するコンプライアンスにほかならない。CDEJの資格の特徴は、医学モデルに自己の職務を通した実践的経験から、療養指導の見識を持つことを評価されることにある。
  • 川上 知恵子
    セッションID: CS-1-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    糖尿病療養指導士が発足し5年になるが、精力的に活動を開始された施設や何も変わらない施設など様々であろう。当院は昭和58年頃より、糖尿病教育において力を入れるようになり糖尿病専門病棟を開設、教育入院が開始された。しかし、精力的に関わっていた医師がいなくなったこと、また病院の運営体制の変更により、専門病棟は混合病棟となり、教育入院も中止となった。糖尿病教育に精力的であった看護師達も毎日の処置・ケアに追われ、糖尿病教育が後回しになるなど業務への負担が募り退職や移動し分散してしまった。しかし、院内には、糖尿病教育に関心のあるコメディカルが主となり「院内糖尿病研究会」を発足していた。そのため、コメディカルの連携は充実していた。そんな折り、糖尿病療養指導士制度が発足した。 糖尿病療養指導士制度が発足してからは、医師が主軸でなくても「医師の応援を受けながら療養指導士ができることをしていこう」と考え方を切り替え、患者の様子が最もよくわかりマネージメントしやすい立場にいる看護師が音頭をとることにした。そして、以下のことを実施した。1.入院患者対象の「糖尿病教室」2.外来患者対象の公開糖尿病教室「基礎編・応用編」3.健診で生活習慣病を指摘された受診者対象の「健康教室」4.糖尿病教育用「教本」の作成 5.糖尿病治療に関する情報の発信 6.インスリン・SMBG指導及び病棟スタッフの教育 7.患者会 8.糖尿病支援外来の継続 当院の糖尿病療養指導士(看護師)は6名で分散している。しかし、自分たちから発信することで「糖尿病療養指導士」の存在を院内に認めてもらえつつあると実感している。今後は地域へ向けて、「糖尿病療養指導士」の存在を認めてもらえるよう活動を広げることが必要と思う。
  • 須郷 秋恵
    セッションID: CS-1-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    糖尿病治療を進めていく上で患者さんがうまく自己管理できるように指導・支援することが重要である。その中で患者教育は非常に大きな部分を占めている、そのため医師1人ではとても実行困難であり、各分野のチーム医療が求められている。当院では糖尿病患者教育の為に平成7年9月から医療チーム(医師、看護師(病棟及び外来)、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、心理療法士、運動療法士)を構成し、糖尿病患者の教育に取り組んでいる。その中で我々臨床検査技師の参画状況を報告する。入院前日チームのメンバー全員で行うスタッフ会議に出席し、外来看護師より患者4名の今までの経過、現状、家族構成、合併症、治療法、糖尿病にたいする知識・理解度の報告、主治医の入院時の治療方針を聞き、患者指導の参考にする。入院当日、我々は患者が入院中食前・食後自分で血糖を測定する為、簡易血糖測定装置の使用法、使用上の注意をきめ細かく、高齢者が多い中わかりやすく、一人で測定できるまで指導している。又結果を目標値が記されたグラフにプロットしてもらい、入院中の目標を理解してもらっている。7日目にスタッフ会議がひらかれ、各スタッフから患者1人1人の治療及び指導内容、感想を入力した「糖尿病教育入院レポート」を下に中間報告があり、後半の指導に役立てている。我々は主に簡易血糖測定装置を指導した時の様子や到達度及び質問内容について報告している。なおこのレポートはいつでもそれぞれのパソコンから自由に見ることが出来る。12日目に我々は字を大きくし、それぞれのスタッフが患者にわかりやすく表にしたり、イラストを入れたりして作成したテキスト『糖尿病と生きる』を基に検査の話をする。内容は各検査項目の意義及び必要性、基準値、目標値等である。検査の話が終了後、個人個人に今までの検査データを経時的に示し、検査結果をみながら教育入院の効果及び今後気を付ける点を合併症との関連を示しながら指導をしている。14日目にはスタッフ会議に出席し、「糖尿病入院レポート」を参考にしながら、患者1人1人の入院の効果と退院後の指導方針を主治医を中心に話し合う。今後は3回のスタッフ会議を通じ、患者1人1人の状態、気持ちを把握し、臨床検査技師として、検査の話しだけでなく、他のスタッフと協力して、患者に気軽に相談・質問される技師を目指したい。
  • 増子 マキ子
    セッションID: CS-1-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当院は糖尿病センターを持つ病床数1144床の総合病院。現在、栄養部には管理栄養士18名、栄養士4名、調理師・調理員50名の計73名が勤務し、糖尿病療養指導士の有資格者は11名。今回療養指導士の資格を得るために、糖尿病の病態や患者の心理と行動、インスリンや血糖降下薬の特徴などを学んだことにより、以前より患者さんの立場や状況を理解した上で、患者さん自身が自己管理法を選択、実行できるような援助を目指している。【療養指導士としての栄養士の役割】(1) 継続自己管理の意識づけ (2) 食事療法の必要性の説明と指導 (3) 栄養評価と個別対応の実践 (4) 生活指導全般から食をめぐる分野を受け持つ (5) 医療スタッフと共に患者さんの自己管理への援助とQOLの確立に力を注ぐ。【療養指導士の資格を活かして】当院は病棟調理、病棟担当栄養士体制を取り入れており、糖尿病食の選択メニュー週5日の実施と、糖尿病の食事療法を患者自身が、自分の目と体で覚えられるように昼食の計量指導とバイキングを実施している。療養指導士の有資格者が糖尿病教室、調理実習・外食会、個別指導を行なっている。今まで画一的であった食事指導が個々の病態にあった治療法を考え、きめ細かな指導が可能となった。療養指導士の資格を持つことにより、自信を持って話せるようになり、患者さんのモチべーションを上げることが可能となり大きな収穫と感じている。【当院のチーム医療】チーム医療を結成し活動を継続するには各スタッフの意欲と信頼関係が必要である。当院の糖尿病チーム医療はスタッフミーティングや総回診、フリートーキング、症例検討会などを通して各スタッフが共通して患者の病態や心理的状態を理解し、サポートの方法を検討している。同じ糖尿病療養指導士の資格を持つことで、それぞれの専門性を生かした意見の交換ができ、連携のとれたチーム医療が、患者の治療効果につなげられている。【今後のとりくみ】当院でもNSTチームが発足し、栄養障害を伴った患者へのケアと生活習慣病による合併症の重要性が認識されつつある。今後栄養士は患者にとって魅力ある栄養指導をするためにも、医師の指示による適切な患者指導が出来るよう日本病態栄養専門師の学習と糖尿病療養指導士の資格を活かし、患者個々のアウトカムの達成に向けてさまざまな問題に対処できる糖尿病療養指導士を目指していきたい。
  • 田中 美紗子
    セッションID: CS-1-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに 日本糖尿病療養指導士となって3年、島根県糖尿病療養指導士となって4年が経過した。この間の栄養士としての活動を報告し今後の療養指導士としてのあり方について考えてみたいと思う。活動報告 糖尿病療養指導士として以下の三つの場面で活動している。1、松江赤十字病院における活動  (1) 入院患者における指導:教育入院、クリニカルパス、個別指導 (2) 外来患者における指導:外来教室、個別指導 (3) 患者友の会活動における指導:機関紙発行、日帰りレクレーション、一泊レクレーション、日本糖尿病教会活動への参加 (4) 小児・ヤング糖尿病患者における指導、入院・外来における指導、サマーキャンプ、スプリングキャンプ、ピクニック、親の会、機関紙発行 2、地域における活動 (1) 市町村における糖尿病教室、友の会活動、健康教室への参加 (2) 保育所、幼稚園、小学校、中学校の食育への参加 (3) 市町村の健康に関するイベントへの参加 (4) 事業所における糖尿病教室、健康教室への参加 3、島根県糖尿病療養指導士の育成 (1) 糖尿病を考える会の運営 (2) 島根県糖尿病療養指導士認定機構への参加  (3) 島根県糖尿病療養指導士の会の運営 最初は病院の入院、外来患者における療養指導(二次、三次予防)から始まった。次第に友の会活動を通じて地域の糖尿病教室に関わるようになりこのことが地域の健康教室につながり、子供の食育へと広がって行った。 この中で医療機関のスタッフは地域の中の患者さんに実際の生活の姿を見出し、地域のスタッフは、自分達が糖尿病をよく理解していないことに驚きお互いにもっと一緒に勉強したいと思うようになった。そして診療機関のみならず地域で一次予防に関わるスタッフも含めた島根県糖尿病療養指導士育成へとつながった。今後に向っての問題点と展望 糖尿病療養指導士としての活動は無限に広がっていく。このことが次世代の糖尿病を減らす、出さないことにつながっていく。 しかし、我々が実施した島根県の糖尿病療養指導士のアンケート結果では、活動する場が保証されなかったり、資格を持つのに専門家として認められなかったりする現実があることがわかった。また、実際に役にたつ研修を求めていることもわかった。 今後、我々糖尿病療養指導士の存在を世間に認めてもらう活動を展開させることと、資格を取得した療養指導士のさらなる研鑚の場の保証が必要である。また、それぞれの活動が評価検討できる横のつながりの構築が重要であると思う。
  • 橋本 和代
    セッションID: CS-1-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    糖尿病患者および耐糖能障害者の数は年々増加の一途をたどり、糖尿病による透析導入者も増えつづけ医療経済面からも大きな問題となってきています。糖尿病の療養指導では患者自身が病気と向き合い、自分の病態に合った治療法を十分に理解し、自己管理能力を高めながら日々の生活の中で実行出来るよう考えます。薬剤師としても患者が自らの主治医になれるように、患者が求める十分で質の高い情報を伝え、主体的な学習を援助し、日常生活の中で前向きに薬物療法を実行、継続できるように援助・指導します。さらに、チームの一員としての意識と具体的活動が必要です。また糖尿病を治療せず放置している人が多く、重篤な合併症予防、地域医療経済の観点からも、地域における糖尿病1次、2次、3次予防活動が望まれています。私達の地区は、早くから地域糖尿病療養指導士(LCDE)制度ができ、地域活動が盛んです。平成10年より筑後糖尿病療養指導士の会が作られ、当院のスタッフも役員として参加しています。具体的には、(1)総会・講演会、(2)症例検討会・調理実習、(3)全国糖尿病週間の市民糖尿病のつどい(年1回)、(4)ウォークラリー(年1回)、(5)合併症予防のための地方講演会、などの企画・運営に関わっています。その他、筑後佐賀LCDE制度のバックアップなどを行っています。認定制度の研修会では講師を担当したりします。症例検討会では、薬剤師としてのコメントが求められ、市民糖尿病のつどいでは、「おくすりコーナー」を担当し地域の患者指導に参加しています。CDEJは、独自の連絡網が無くほとんどがLCDEの為、LCDEの一員として活動しているのが現状です。薬剤師を取り巻く環境は、技術の進歩・高齢化社会の到来、薬剤管理指導業務・医薬分業・国民の考え方の変化など大きく変化しており薬剤師も糖尿病の治療にチームの一員として貢献していかなければならないと感じています。
  • 武藤 達也
    セッションID: CS-1-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    我々薬剤師が、医療チームの一員として病棟の薬剤管理指導業務を行うようになってから10年以上経過し、「服薬指導」という言葉も社会に認知されるようになった。特に外来患者に対しては病院、調剤薬局で薬の説明書を渡したり医薬品の効能や副作用などを口頭で話したりすることはめずらしいことではない。しかし入院患者における薬剤管理業務を考えると、必ずしもこれら医薬品情報を与える「服薬指導」が患者の薬物療法の遵守につながっているとは限らず、薬剤師として職能の限界を感じることもある。特に糖尿病などの慢性疾患患者の中には、医薬品情報(服用方法、効能、副作用、使用方法)は分かっていても自己中断してしまうことがあり、薬剤管理指導業務の範囲にとらわれない指導や教育が必要になる。 当院では、医師、薬剤師、看護師、および臨床検査技師がインスリン導入患者に対して積極的に関与している。本講演では、糖尿病療養指導士として薬剤師にどの様な関わりが可能か考えてみたい。 薬剤師としては、薬の専門家として(1)インスリンについての正しい情報(安全性、注意点、内服の糖尿病薬との違い)を説明する、(2)リスクマネージメントの立場から患者の能力を評価した上で、インスリン注入器を選択し項目別に理由を付け加えながら手技手順を説明する(技術的ケア)。 糖尿病療養指導士としては、患者の動機付けとして(3)糖尿病の病態について医師と相談しながら現在のインスリン療法の必要性を説明する、(4)インスリン療法や自己注射に対する不安感や拒否感をより具体化させて解決、軽減へと行動を変化させるよう援助する(心理的ケア)。 これら(1)(2)技術的なケア(服薬指導)に(3)(4)心理的ケア(服薬援助)を取り入れることで患者は、より納得して安全かつ確実なインスリン自己注射が導入でき、理想的な糖尿病患者教育が可能になると考える。
  • 片田 圭一
    セッションID: CS-1-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
     日本糖尿病療養指導士認定制度は、糖尿病治療に携わる医療専門職がお互いに理解し合い、チーム医療を実践していく上できわめて有益な制度である。運動療法の指導と実践を担当する理学療法士の立場から、資格を活用した活動について述べてみたい。【職場(病院内)での活用】 認定制度により、今まで以上にそれぞれの職種の専門性を認識するとともに、病態を的確に把握し適切な療養指導を行っていくという共通の認識が持たれ、一層積極的な意見交換ができるようになった。特に、運動療法は糖尿病治療の基本療法に挙げられながら、実施率の低い現状を考えると、今後我々から運動療法の必要性を訴え、実践する環境が整ってきたといえる。石川県立中央病院での新規活動として、糖尿病療養指導専門チームの発足、多職種間協議によるクリニカルパスの作成、地域連携勉強会の実施等が挙げられる。資格の取得によって、そのチームの中に理学療法士が加わり、まずチーム内での運動療法についての正しい知識を広めることが可能となり、患者さんへの説明が円滑に行われている。また、糖尿病をもつ脳血管障害や整形外科疾患、心疾患症例に対して療養指導と理学療法を技術を生かし、運動機能回復と併せてリスク管理や2次、3次予防にも配慮した治療を進めることが可能となっている。【地域(県内)での活用】 石川県では、糖尿病専門医の積極的な働きかけがあり、2002年に糖尿病療養指導士研究会が設立された。理学療法士も運営委員に加わり研修会の企画や定期研修会の「運動療法」に関する講習会の講義を受け持つなど、医療職や患者会に対する啓発活動を行っている。また、社団法人石川県理学療法士会においても、保健福祉局保健部に「生活習慣病予防班」を設置して理学療法士自身の研修を充実するとともに社会への啓発活動を開始している。【広域(国内)での活用】 社団法人日本理学療法士協会では、専門理学療法士制度を推進しており、日本糖尿病療養指導士は内部障害系専門部会に登録している。その部会の中で、2001年より日本糖尿病療養指導士理学療法士部会を作り、インターネット回線を通じて情報交換を行ったり、学会や研修会での発表とともに糖尿病に関するセミナーの開催等の活動に取り組んでいる。
  • 今井 優
    セッションID: CS-1-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    医療法42条疾病予防施設(疾病予防センター)は,医療法人が疾病予防のために有酸素運動を行わせる施設として平成4年7月から運営できるようになった.また,平成7年には,それを普及する目的で規制が緩和された.我々は,平成12年4月1日より疾病予防センターを開設し,平成14年2月からは規模を拡大し運動療法を実施している.運動施設面積は約300m2である.スタッフは,厚生労働省省令に基づき認定された,生活習慣病の予防と健康維持増進のため,医学および運動生理学の知識を有した健康運動指導士(運動指導士)である.対象者は,糖尿病,虚血性心疾患維持期患者であり動脈硬化危険因子保有者も含まれている.糖尿病の参加者は,教育入院時の開始が多い.開始時は、事前に医学的検査(生化学血液検査,合併症の検査,心臓超音波検査,運動負荷心電図検査等)を受け,担当医師に運動療法の可否を確認している.施設は,月から土曜日,9:30から16:30,火曜・木曜日は21:00まで運営している.プログラムは,個人・集団があり,集団は90分のプログラムを午前,午後,夜間に実施している.糖尿病教育入院患者は,個人プログラムで運動処方を調節している.運動種目は,ストレッチ体操,軽スポーツ,自転車エルゴメータ,トレッドミル,ニューステップ,ウエイト,ビジュアルステップ等を実施している.運動強度は,トレッドミル・自転車エルゴメータ運動負荷試験の結果を元に,心拍予備能,嫌気性代謝閾値(AT),主観的尺度を参考にしている.参加者は毎回,体重や血圧,脈拍,体調を確認し,必要な者は各自で血糖を測定している.運動指導士は,プログラムを立案し,その実施と指導,進行過程を評価,参加者の観察,時にはプログラムに参加している.参加者は,糖尿病・心疾患など有疾患者が多い為,医療機関との連携が確立している.運動指導士は専門的研修を受け,安全管理・不測事態への対応の知識を身につける.運動効果は継続することにより現れる.それには,個々の運動処方を作成し,参加者とのコミュニケーションを高め,結果をフィードバックする必要がある.糖尿病療養指導における運動指導者は多いとは言えない.今後,専門的知識を習得した運動指導士の活動を期待する.
レクチャー:糖尿病療養指導に必要な知識(1)
  • 島田 朗
    セッションID: CL-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    1999年に、糖尿病の診断基準と分類の見直しがなされ、以降、糖尿病の成因によってその病態を理解するようになっている。すなわち、以前のようなインスリン非依存、インスリン依存、といった臨床上のインスリンの要否による病態の捉え方ではなく、どのような成因であっても、正常血糖から境界領域、インスリン非依存状態の糖尿病領域、インスリン依存状態の糖尿病領域、と変化し得るとされたことが大きな違いである。 この「成因」分類では、1型糖尿病、2型糖尿病、その他の特定の機序・疾患によるもの、妊娠糖尿病の四つに大きく分けられているが、今後も新たに原因を特定できたものは、全て「その他の特定の機序・疾患によるもの」に分類していこうという意味がある。ただし現状では、ほとんどの糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病の中に含まれることになる。したがって、われわれが日常、1型糖尿病あるいは2型糖尿病と呼んでいる疾患は、かなり不均一な群であり、おそらくは複数の未知の成因により引き起こされている病態であることを認識する必要がある。また、実際には、1型糖尿病なのか2型糖尿病なのかすら鑑別できない「分類不能例」も存在する。 このような現状を理解し、各々の糖尿病患者の病態を正しく把握することは、糖尿病療養指導上、極めて大切である。
  • 西 理宏
    セッションID: CL-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    糖尿病の分類:1999年に発表された日本糖尿病学会の「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」では糖尿病を成因と病態・病期の両面から分類している。病態・病期の面では成因にかかわらず,高血糖・耐糖能の程度に応じて,正常領域,境界領域,糖尿病領域に分ける。糖尿病領域はさらにインスリンが生存に必要か否かによりインスリン依存状態,非依存状態に分類する。インスリン非依存状態をさらに高血糖是正にインスリンが必要かどうかで2分する。成因による分類では1型,2型,その他の特定の機序,疾患によるもの,および妊娠糖尿病に分類されている。1型糖尿病は「自己免疫性」と「特発性」に分類される。その他の特定の機序,疾患によるものはさらに「遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの」と「他の疾患,条件に伴うもの」に分類されている。このように成因面と病態との両面から分類することにより,1型糖尿病のハネムーン期(1型であるが,インスリン非依存状態)あるいは2型糖尿病でも感染などによりケトアシドーシスに陥った例(2型であるが,インスリン依存状態)などを矛盾無く分類できる。糖尿病の成因:1型糖尿病(自己免疫性)の成因も2型同様に遺伝因子と環境因子の相互作用によると考えられている。遺伝因子で最も関与の強いものはHLAであり,1型糖尿病の疾患感受性,疾患抵抗性のHLA遺伝子型が明らかになっている。インスリン遺伝子やCTLA-4,Lyp,SUMO4など他の感受性遺伝子も明らかにされてきている。環境因子ではウイルス感染や牛乳保育などの関連も注目されるが,詳細はいまだ明らかではない。2型糖尿病の遺伝因子としてはカルパイン10,アディポネクチン,PPARγ,アミリンなどがあり,また多くの疾患感受性領域も同定されている。環境因子に関しては近年の我が国での2型糖尿病の激増の原因とされている高脂肪食,運動不足による肥満とくに内臓肥満が重要である。その他の糖尿病ではMODYを中心に遺伝子異常による糖尿病が数多く同定されたが,多くは転写因子の異常であることは注目される。今回は1999年の日本糖尿病学会の委員会報告に基づき,糖尿病の成因,分類について概説する。
  • 井口 登與志
    セッションID: CL-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    糖尿病患者の急増とともに、糖尿病の一次予防や糖尿病患者の慢性合併症重症化予防のため益々早期診断の重要性が重要となっている。また、糖尿病の診断後は、糖尿病の成因や病態および合併症の状態を的確に把握し、それに応じたきめ細かい指導法や治療方針の決定が要求される。本講演では、上記のための診断法や検査について療養指導上是非知っておきたい最新の知識を述べる。

    1.現状における早期診断の問題点
    2.早期診断法のポイント
    3.糖尿病病型や病態把握のための検査
    4.血糖コントロール状態の評価のための検査
    5.合併症の評価のための検査
  • 石田 千香子
    セッションID: CL-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    糖尿病患者にとって食事療法は生涯にわたって実施すべき治療法である。
    しかし個々の患者の社会的属性は多様で、特に食習慣や食嗜好は長年にわたり築かれたものであるためその是正は容易ではない。
    その上で患者が食事療法の意義を正しく理解し、積極的に実践できるよう援助するには、食生活に関するあらゆる情報を把握するために食事調査を実施し、問題点を明確化することが必要である。
    そして得られた情報をもとに、オーダーメイドの食事計画を立案することがQOLを失わずにコンプライアンスを向上させる鍵となる。
    (食事調査の方法)食事調査の方法には聞き取り法、食事記録法、食物摂取調査(アンケート方式)法などがあるが、その時々に応じて臨機応変に使い分けることが必要である。
    初回栄養相談時にはアンケートの情報を元に、より細部を面接して聞き取る方法がよく行われる。質問項目としては、職業(身体活動量・勤務、通勤時間)、家族構成・調理担当者、栄養指導歴・習得能力、1日のタイムスケジュール、食事時間、食事回数・速度、食嗜好、具体的な食事内容・量・頻度、嗜好飲料、間食、外食、民間療法などについて行う。
    さらに初回栄養相談時の対応は鮮明に印象付けられることが多く、対応によっては信頼関係を構築していく上での障害になることも少なくないため決して批判することなく傾聴し、患者の思いを受容、共感することも重要である。
    (食事療法に必要な知識の提供)食事調査で得られた情報をふまえ、指示された食事を実際に行うために必要な知識を具体的に指導する。またいつでも質問できる雰囲気づくりを心がけ、患者が知りたい情報をタイムリーに提供する。
    (問題点の明確化と具体的な目標の設定)患者自身で何が問題となっているのか気づくよう、効果的な質問を投げかけながら整理する。また問題点を解決する上で障害となっているもの、行動変容を起こしたときのメリット、デメリットなども考慮し、実践可能で具体的な目標を患者自身が決定できるよう支援する。
    (目標に対する是正効果を評価)目標行動が実践され、生化学データー・体重などが改善された場合は手放しで賞賛する。目標行動を実践したにもかかわらず、生化学データー等が変化しなくても、その行動変容を認める。目標行動が実践されなかった場合には、何が障害となったか、どのような状況時に遵守困難であったかをともに振り返り、再度目標を検討する。
  • 押田 芳治
    セッションID: CL-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
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    2型糖尿病の主要な病態の一つにインスリン抵抗性が知られており、随伴する高インスリン血症や一酸化窒素(NO)合成障害を通して、高血圧症、高脂血症、冠動脈硬化症が惹起されることも周知の事実である。このようなインスリン抵抗性に対して運動療法が最も有力な治療手段と言える。その根拠について、これまで我々が得た成績を中心に概説する。1, BMIとインスリン感受性は負の相関を、全身持久力の指標である最大酸素摂取量(VO2max)とインスリン感受性は正の相関を、各々示すことを認めた。すなわち、身体トレーニングを行い減量すれば、インスリン抵抗性は改善しうる。2,有酸素運動の継続は、筋の質的変化、すなわちインスリンシグナル系のIRS-1、PI-3kinase、GLUT-4の遺伝子発現や蛋白量を増大させ、インスリン感受性を亢進させた。3,無酸素運動(中高年者には時に危険)やレジスタンス運動は、筋量、筋力を増大させることで個体レベルのインスリン感受性を高めた。なお、レジスタンス運動は低負荷、高頻度のものが望ましく、たとえばダンベル、ローイング、チューブ運動などである。4,肥満2型糖尿病患者において、食事療法単独では効果がなかったが、食事・運動療法併用により、減量とともにインスリン感受性の改善を認めた。食事・運動療法併用は、選択的体脂肪の減少に有効である。5,NOは高果糖食誘発インスリン抵抗性を改善させ、NO合成酵素の阻害(LNMMAの投与)はトレーニング効果を消失させた。一方、NOは、低濃度では血管拡張効果を通して、高濃度ではGLUT-4のtranslocationにより、糖取込を増大させた。6,AMPKは、筋収縮やAICAR投与などで活性化され、筋での糖取込を刺激する。その際、インスリンやNOとは異なる経路でGLUT-4をtranslocationさせた。7,運動療法を継続させるには、本人の強い意識づけのみならず、スタッフの熱意や周囲の理解、運動可能な環境整備も重要である。 したがって、糖尿病の運動療法には有酸素運動が有効であるが、その効果が十分でない時はレジスタンス運動の併用も考慮すべきであり、運動療法の有効性の機序としてインスリンシグナル系蛋白、NO、AMPKの関与が示唆された。
  • 河野 茂夫
    セッションID: CL-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
     糖尿病患者数の増加、罹病期間の長期化、合併症の進行などを背景に潰瘍や壊疽などの糖尿病足病変や重症感染症が増加してきている。糖尿病足病変は一般に難治性であり、長期入院を要したり、外科的切断にいたったりする例が多い。一旦、治癒しても再発率が高く患者のADLやQOLに多大な悪影響を及ぼす。 米国や英国の糖尿病足病変への対策としては概略すると3つのポイントにまとめられる。まず、拠点病院にフットセンターを設置し、重症足病変の集学的治療を行い救肢を図るというものである。第2のポイントは、PodiatristやPedorthistといった足や靴の専門家の職種を設けて、良質なフットケアサービスをプライマリーケアレベルで浸透させ、発症予防を行うことにある。第3のポイントとは、糖尿病神経障害が進行した患者群の予防的フットケアに医療費の給付を認めている点にある。しかしながら、これらの対策にも拘わらず欧米では糖尿病足病変による足切断が依然増加傾向を示している。 我が国では、この分野におけるインフラ整備が欧米に比して著しく遅れている。足や靴の専門職種が存在しない我が国では、現存の職種の幅広い結集による集学的な対応策を構築せざるをえない。その中でのゲートキーパー的な役割を糖尿病療養指導士が今後ますます担っていくことになると思われる。 本講演ではフットケアと感染症について療養指導する上でのポイントについて実際の症例を紹介して述べる。
  • 高加 国夫
    セッションID: CL-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    血糖自己測定(Self-monitoring of Blood Glucose : SMBG)により日々変化する生活の中で変動する血糖値を患者自身が知ることは食事療法や運動療法の効果を客観的な指標により自覚でき、治療意欲を高めるためにも重要といわれる。SMBGの意義は無自覚性低血糖症の増加に伴う低血糖から生じる危険性の回避や強化インスリン療法を実施する上での必要性など多くの医療従事者が知るところである。実際、継続してSMBGを行うためにはその必要性を患者本人がよく認識し、納得した上での実行でなくては長続きしない。糖尿病療養指導士(CDEJ)として患者の糖尿病管理能力を引き出すためのアプローチ、つまり医療に参画するためのエンパワーメントをどう与えてゆくかが重要なポイントとなる。一方、血糖モニタリングに不可欠なSMBG機器・センサーの改良や開発の進歩は目覚しく、現在、新旧併せて25種類以上の特徴をもった機器が活用されている。患者が機器を選択する際、どの機種が適するか、あるいはどこで求めたらよいかなど具体的に質問を受けることも少なくない。CDEJは機器の特徴をよく理解し、年齢・性別・職業・視力、及び理解力など患者の背景を総合的に判断してどの機器が最もその患者に適しているか説明し、患者にとって有用となる情報の提供が重要である。機器の精確性については「JDS糖尿病関連検査の標準化に関する委員会」と「JSCC血糖自己測定の標準化プロジェクト」が主要なSMBG機器を用いてボランティアを対象に行った共同実験の結果を詳解するとともに、機種間差の存在に対する是正のあり方についても述べてみたい。また、実際のSMBG指導については我々が現在行っている方式や手順についてその一端を私見を交えながら解説する。
シンポジウム:包括医療の中での糖尿病診療
  • 長谷川 敏彦
    セッションID: DS-1-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    1.糖尿病の疾病モデル 糖尿病は、がんや虚血性心疾患など通常病院で提供される医療とは異なった特徴を持っている。第一に疾病を治癒することは不可能であるが、「管理可能」で極めて有効な治療法を有すること。第二に毎日「継続して治療」が必要であること。第三に次々に他の「重篤な合併症」を引き起こしうること。第四に、従って状態によっては必要とされる「診療内容が大きく変化」すること。第五に診療内容に応じて「様々な専門職」が必要であること。第六にこれらの診療行為をコーディネートし、推進していくのはほかならぬ「患者自身」であること。 「継続診療」、「機能分担」、「連携医療」は、人口の高齢化と共に多くの疾病に必要になってくるので、糖尿病診療こそ日本の診療システムを改革するためのパイオニアに他ならない。2.糖尿病の医療経済 糖尿病は、疫学的観点からも経済学的観点から見ても、今日の日本にとって最も重要な疾患の一つである。「患者数」は、2002年の全国調査によると、可能性のある人を含めて1620万人に上り、高血圧に次いで多数の慢性疾患であり、5年間に250万人の増加を見ている。 「自然史」から見ると、視神経、腎・血管疾患等を併発し、脳卒中や虚血性心疾患の発症の大きな危険因子である。近年、男性の肥満や運動不足が増加し、予防が重要となってきているが、発症後も自然史に対応したケアが必要で、生涯を通したし疾病管理が重要である。 しかし、治療を受けている「患者」は少なく、2002年患者調査によると380万人(受診間隔31日以上の患者を含む)に過ぎず、全国調査でも糖尿病が強く疑われる740万人の約50%に過ぎない。 直接の「医療費」だけで2002年には1.1兆円を使っており、8大疾患の1兆円前後グループの中では最も増加が著しい。更に、現在非治療中の糖尿病患者を全て管理下に置くとすれば、2~4倍、2~3兆円の医療費が更に必要となる。「人材」もまた、現在の2~4倍が必要となる。一人当たり管理費も高血圧に比して約2倍近くを要し、より費用対効果の高い管理技術の開発と定着が望まれる。
  • 中島 直樹
    セッションID: DS-1-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    平成15年度から入院における包括評価支払い方式「DPC」が始まり、16年度には144の病院で施行され、1727分類(平成16年度)の疾病グループ別のベンチマーク評価が可能となった。糖尿病に関連した疾病グループに紐付けた様々なデータの整理と比較評価が全国規模でおこなわれる基盤が出来たわけである。この事は、糖尿病診療の標準化の促進とともに糖尿病医療経済の解析に寄与する。これは、データの収集、解析が可能な病院が優位に立つことを意味し、診療の電子化が促進される。従来の出来高支払い方式は別名「濃厚医療/青天井医療」と言われたのに対し、包括評価支払い方式には「希薄医療」の素地があり、それをカバーするために入院において最低限施行すべきプロトコル(パス)が必要となる。一方、米国でも証明されたように入院のみの包括評価支払い方式施行は、外来への医療のシフトを促進するため、特に糖尿病のような慢性疾患に対しては、入院外来間の情報連携および病診連携をトータルに管理することが重要となる。これは、かかりつけ医や専門医に通院する頻度やその診療の中身を病態別に支援する「連携パス」でカバーされうる。なお、これらのパスは、診療の標準を規定する基盤のおよび評価手段を提供するものであり、診療の個別性や柔軟性を阻害するものではない。このようなパスの効力は「紙」システムでも発揮しうるが、電子化によってはるかに増強される。包括評価支払い方式においては、従来の電子カルテに用いられている単なるテキスト情報に比し、これらのパスの電子化による整理された入力情報は、診療の評価、医療安全管理、患者サービス、経営適正化等に資するに値するデータを効率良く出すツールとなりうる。パス上の情報はオーダーシステムに連動可能であり、計画情報や実施情報は、電子カルテ(看護記録を含む)に適正に自動記述され、電子カルテの入力を正確化、効率化する。これらの仕組みをさらに広く、すなわち医療施設と糖尿病患者間のコミュニケーションにも取り入れることにより、Disease Managementと呼ばれる新たなシステムを構築することが可能となると考え、現在実証実験を施行している。米国のDPPでは、境界型糖尿病に対して生活習慣介入を行うことで糖尿病への進展が58%低下できたが、生活習慣病患者にとっては月に1-2回程度の通院のみで生活習慣を改善することは厳しく、日本においても何らかの日常的支援が必要な状況は明らかである。上記の連携パスよりも、さらに日常的に用いるべき、「診療情報提供」による病診連携に際しても、単なるテキスト情報では、データベース化や情報の再利用は困難である。そのため、昨年度から糖尿病診療連携のためのミニマムデータ項目セットを提唱してきた。静岡県が浜松医科大学を中心に県版電子カルテを開発しているが、その中で用いる診療情報提供書に糖尿病症例紹介目的で「糖尿病診療連携のためのミニマムデータ項目セット」を実装する予定であるので、是非早期に日本糖尿病学会によるその項目整備を行っていただきたいと考える。これが整備されると、静岡県版電子カルテにとどまらず、今後開発される診療所向け、病院向けの電子カルテから自動的に出力される糖尿病用紹介状上の項目が標準化され、データベース化、情報の解析が容易となる。なお、連携パス、診療情報提供書ともに複数の医療施設間をまたぐ情報の流通であるため、その電子化に際しては、標準的情報交換規格であるHL7を用いて開発する必要がある。
  • 武井 泉
    セッションID: DS-1-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    糖尿病などは、現在多くの患者が罹患し、国の財政面でも影響力のある疾患であり、その対応として、検査治療方針が今後、一定の思案の中に組み込まれていくことが予想される。そのような目的で、「DRG/PPS(Diagnosis-Related Group/Prospective Payment System)対応臨床検査ガイドライン」第一次案が1999年に出版され、毎年改訂を繰り返し、2003年が発刊された。
    日本臨床病理学会(現日本臨床検査医学会)と厚生省(現厚生労働省)の研究班の共同作業で、DRG/PPSに対する臨床検査の使い方のガイドラインの作成を行っている。
    平成10年に日本臨床病理学会では「日常初期診療における臨床検査使い方小委員会」を発足させ、現状のニーズに応える医療効率を意識した実践的な臨床検査の使い方のガイドラインを確立することにした。現在、糖尿病を含め38疾患に対して医療の標準化に向けて診療群別、臨床検査のガイドラインが提示されている。
    日本臨床検査医学会の編集の下、DRG/PPS対応臨床検査のガイドライン(第三次案)が提示され、糖尿病についてのガイドライン、包括支払制度の下での検査のあり方がどのように検討されているかを示す。具体的には、その中には、1.「確定診断に要する検査」、2.「病型や合併症の診断」及び3.「フォローアップのための検査」が記載され、検査の方向性が成り立っているかを要約し、今後の包括医療の中での糖尿病検査のあり方を述べる。
    また、2004年4月よりの診療報酬改訂に伴うHbA1c及び尿中微量アルブミンの包括化についても一部触れ、概略を説明する。
  • 小野 百合
    セッションID: DS-1-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    クリティカルパス(パス)は、多数の工程に分割した作業を管理する工程管理法から発生した概念で、工程を分析し製造工程の最適化をはかり、作業終了までの最短をみいだす方法である。ここ数年、包括化など日本の医療を取り巻く環境は急速に変化し、糖尿病治療・指導も例外ではない。医療機関は生き残りをかけてこれまで以上の経営努力を要求されるとともに、患者の医療の質への期待も高まっている現在、コスト削減だけでなく医療の質の向上も同時に要求されるであろう。この様な流れのなかで最重要項目への適切な介入を予め明示することにより早期の介入開始を可能とし、限られた資源・スタッフ、決められた在院日数のなかで、医療の質の向上、治療の継続、患者・スタッフの満足感を得るパスは今や必須のものである。包括化は糖尿病診療に関していえば、今まで検査などでしか認められていなかった点数体系に対して、教育などのコメディカルの指導が点数として包括して認められる様になったと考えられる。しかし、将来、この包括点数が下げられるのは必須であり、教育などのコメディカルの指導にどの位の時間と労力を割いているのかの記録もパス上に残すべきであると考えている。今回はまだ過度期ではあるが、包括化される前後の教育入院カルテから、検査の増減、パスの達成度などに関して比較検討する予定である。また、外来(200症未満病院および診療所)ではすでに糖尿病の総合的な指導及び治療管理が生活習慣病指導料として包括化可能であるが、外来で行われているパスについても紹介する。米国の例をみるまでもなく、包括化の中でコストの削減のみならず、医療の質を向上させなかった施設は淘汰されている。クリティカルパスがその中から生まれてきたことを考え、今回の検証としたい。
  • 戸塚 康男
    セッションID: DS-1-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/03/24
    会議録・要旨集 フリー
    740万人と推定される糖尿病患者が標準的な医療を受けることができる体制を整備するためには、糖尿病専門医の在籍する基幹病院、糖尿病専門医が運営する診療所、糖尿病は専門外であるかかりつけ医の間での連携が必要であることは明らかである。これまでにも多くの地域で糖尿病診療のネットワーク作りへの取り組みが行われてきている。現実には依然として大規模病院への患者の集中傾向がみられるが、200床を超える病院での外来診療報酬には包括化が拡大しており、入院診療と外来診療の機能分化をはかる動きが進められている。NTT東日本関東病院糖尿病・内分泌内科では、医療連携の充実による地域における糖尿病管理の向上を目標として、近隣医師会との連携を強化し、病院から診療所への逆紹介の推進に取り組んでいる。ネットワークの構築上最も重要なポイントを病院医師と診療所医師の間での信頼関係の樹立と考え、逆紹介受け入れ診療所医師と当科医師とによる症例検討会、診療ガイドラインづくり、紹介・逆紹介フォーマットの作成を行っている。当科の電子カルテ端末には各地域別の診療所の情報が収められており、逆紹介時には診療所の地図や医師のプロフィールがハードコピーで患者に手渡される。また診療所医師からの入院による糖尿病教育に関する日数短縮の要望にこたえ、従来の7日の糖尿病教育入院パスを3日に短縮した。地元品川区医師会会員との間では、DM-2(Diabetes Mellitus, Disease Management)という専用の患者紹介・フォローアップシステムを構築し、かかりつけ医による医療水準向上への取り組みを行っている。糖尿病診療においては、生活環境が発症、治療効果、予後に大きく関与する。かかりつけ医における糖尿病の医療水準が向上すれば、地域における糖尿病管理体制の強化につながり、基幹病院の糖尿病専門医との密接な連携によって糖尿病治療のより有効な戦略も見出されてくることが期待される。地域かかりつけ医による糖尿病患者の外来管理が順調に推移することが、病院の糖尿病専門医がその期待される業務に一層の時間を費やすことを可能にすると思われる。
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