1. 熱帯雨林-サバンナ境界の成立過程及び熱帯雨林のサバンナ化のメカニズムを解明するために, 筆者は
Andropogon sp. サバンナの成立環境を, 1984年9月1日から9月26日の雨季に, 土壌学的及び植物生態学的に調査した。調査は, アフリカ・カメルーン東部のベルトアの東約18Kmに位置する Nganboula 村 (標高約680m) でおこなった。
2. サバンナ土壌は, 埴壌土~埴土, 堅果状構造, 赤色, 高い土壌硬度, 球状結核によって特徴付けられるラテライト性土壌である。拠水林下の土壌は, 溶脱層, 黄色によって特徴付けられるが, 基本的にはサバンナ土壌と同様のラテライト性土壌に属する。
3.
Andropogon sp. 群落は, 植物社会学的に5つの植生下位単位に区分された。これらの植生下位単位は, 斜面上での位置及び土壌要因-とくに土壌硬度との間に密接な関係があることが明らかとなった。この群落は, 一般に「火入れ」によって規定されているが, 下位単位を規定する要因としては,「土壌硬度」,「踏圧」,「過放牧」が重要だろうと考えた。
4. 13種の草原植物について, 根系を調査した。その結果, 一年生草本の根系は, 地表下5-10cmに分布するが, 多年生草本のそれは, 地表下10-20cmの深さに達する。このことから, この草原では, 地下構造はかろうじて2層から成っているといえるが, 地下部における種間関係はきわめて厳しい状態にあると結論できる。
5.
Andropogon sp. と
Aframomum sp. の地下茎の生育 (伸長) と土壌硬度との間には, 明瞭な関係が認あられた。土壌硬度25mmという値はそれらの生育限界ということができる。さらに一般の草原植物にも同様のことがいえる。
6. この草原には5種の樹木種が生じているが, これらは隣接する森林の構成種とはまったく異質のものである。また, 草原の土壌は, 一般に植物の生育にはきわめて悪い状態にあるが, とくに固結層がより浅いため, 高木種は定着できない。このことから,
Andropogon sp. 草原は将来森林に復帰する可能性がきわめて低いといえる。
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