ダイヤモンド原石の取引とアフリカの紛争をめぐる「紛争ダイヤモンド」問題は, 近年国際社会が熱心に議論するグローバル・イシューとなった。この問題は2000年になって急速に顕在化し, 年末には国連総会において全会一致で加盟国に取り組みを求める決議が採択された。国連の報告書やNGOの運動によって国際世論が盛り上がり, シエラレオネ問題の解決を進めたいイギリス政府, あるいは消費者運動を恐れる業界や生産国が取り組みに加わったことなどがその理由である。しかし, 現在の「紛争ダイヤモンド」をめぐる議論では, ダイヤモンドとアフリカの紛争をめぐる問題が部分的にしか扱われていない。そこではアンゴラとシエラレオネにおける反政府勢力の活動を抑えることに主眼が置かれているが, コンゴのように状況が複雑な地域に対する取り組みは遅れている。さらに, ダイヤモンドを武器購入や民間軍事会社への支払いに充当するアフリカ各国政府の行動については, 深刻な問題を内包するにもかかわらず, ほとんど議論されていない。「紛争ダイヤモンド」問題が, 脆弱な国家における公的な資源の管理・開発という論点と繋がっていることを忘れるべきではない。
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