セネガル共和国のレブーと呼ばれる人々の間では, 子供が生まれて1週間が過ぎてから行なわれる命名式において, 子供の名が公表される。子供の名は, 父親があらかじめ決定しており, 父親の親戚や知人の名から取られる。名が取られた親戚や知人をトゥランドーという。ある子供のトゥランドーはひとりだけであり, その人が子供に贈り物をし, 援助をする。その人は子供の精神的な支えでもある。
2005年3月と4月に, 私はレブーのある家族を対象にして, 彼らのトゥランドーの調査を行なった。この家族は夫方居住を基礎とした複婚拡大家族である。男性の場合, 名付けられる本人から見て, 父の父, 母の父, 父の兄弟, 父の従兄弟といった血縁と, 父の同父異母の兄弟といった複婚制度に特徴的な家族と, 父の友人やセネガルのイスラーム教団の指導者がトゥランドーになる場合が多く, 女性では, 父の従姉妹, 父の母, 父の姉妹といった血縁と, 母の妻仲間 (僚妻), 父の母の妻仲間といった複婚制度に特徴的な家族がトゥランドーになることが多い。このように, 親族や複婚家族の成員の名が子供に付けられるというトゥランドーを通じての名付けは, トゥランドーから物質的・経済的・精神的な利益を引き出し, 複婚家族制度内の対立・軋轢・緊張を緩和する手段となっている。
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