アフリカ研究
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2009 巻, 75 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
論文
  • エチオピア南西部カファ社会に生きるマンジョの事例から
    吉田 早悠里
    2009 年 2009 巻 75 号 p. 1-16
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本稿は,エチオピア南部諸民族州カファ地方に生活するマンジョの事例から,これまで沈黙を余儀なくされてきた被差別マイノリティが,さまざまな社会・経済・政治的影響を受ける中で,新たに宗教という枠組みを通して従来の自己像を否定し,あるいは刷新するために積極的に自己表象をおこないつつある現状を記述・分析するものである。
    マンジョは,かつて狩猟を主な生業としていたが,現在では農業を中心とした生活を送っている。エチオピア正教の影響を強く受けたカファ地方において,現政権以降,プロテスタント諸派に改宗するマンジョが増加しており,これらのマンジョは自らの生活の変化をプロテスタント諸派への改宗に言及しながら説明する。マンジョの生活の変化は,マンジョが置かれた社会・経済・政治的状況をはじめとした複合的な状況のもとで起きたものであり,プロテスタント諸派への改宗もそうした諸変化のうちのひとつである。本稿では,プロテスタント諸派への改宗がマンジョのなかでどのように進んでいるのか,マンジョがどのような変化を経験しているのか,それに伴いどのように新たな自己像を形成し表象しようとしているのかを報告するとともに,被差別マイノリティによる,マジョリティとの関係性改善のための自発的実践の可能性について考察する。
  • マリ共和国のアーティスト集団カソバネの実践を事例に
    伊東 未来
    2009 年 2009 巻 75 号 p. 17-28
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本論では,bogolan(ボゴラン)と呼ばれる伝統的染色技法を用いて創作をおこなったマリ人アーティスト集団カソバネ(Groupe Bogolan Kasobane)の実践を,かれらの生きた社会的コンテキストに位置づけながら説明する。それによって,同時代のアフリカン・アート,アフリカン・アーティストと社会の関係性のひとつの在り方を明らかにすることを試みる。
    カソバネの実践の特徴として,(1) 伝統的な技法,テーマの「アート」への流用と近代西洋的技法とのミックス,(2) 伝統的な技法の調査,習得,収集,(3) 集団性の重視,(4) 同時代の社会状況への言及,(5) 自己の実践への再帰的言及,が挙げられる。かれらは内的な創作意欲だけでなく,ネグリチュードや同時代のアートの潮流,独立後の国家建設においてアーティストに求められた社会的役割,経済的制約までをも取り込みながら,このような特徴をもつ独自の「ボゴラン・アート」を構築していった。さらにかれらの活動は,1990年代以降の「ボゴラン・リバイバル」へとつながっていき,今日では,ボゴランはマリの人びとに「マリの布」「マリの文化」とも形容され,ナショナルなシンボルのひとつとして認知されている。ここに,アーティストとかれらが生きる社会との呼応関係を見出すことができるのではないだろうか。
研究ノート
  • 西北ケニアの牧畜民トゥルカナにおける事例より
    庄司 航
    2009 年 2009 巻 75 号 p. 29-39
    発行日: 2009/12/31
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    牧畜民が生活している乾燥地域では多様な植物が不均一に分布しており,家畜がどの植物を採食するかにはさまざまな選択肢があるが,同時に家畜の採食は人間による放牧ルートの選定にも影響を受けている。本稿では,ケニア共和国の西北部に住む牧畜民トゥルカナの放牧について,家畜の採食行動と放牧地の植生および放牧ルートを調査・分析し,家畜の採食選択がどのような要因によって規定されているのかを考察した。
    調査対象としたのはヤギとラクダである。ヤギは一日に多種類の植物を採食しているのに対して,ラクダは一日の放牧では1~2種の植物を集中的に採食する。そして両者はともに,観察期間全体を通してみると多種類の植物を採食していたが,これはラクダが日によって異なる植物を選択していたためである。また,ヤギとラクダが採食した植物についてタンニン含有量を比較すると,ヤギ,ラクダともに含有量が一定量を超える植物の採食量が少なくなり,含有量が少ない植物を選択的に利用していることが示唆された。このようにヤギとラクダが多種類の植物を採食し,かつタンニン摂取量を抑えることによって,タンニンなどの植物の二次代謝産物の悪影響が軽減されている可能性がある。こうした結果が,人間による放牧ルートの意図的な選択とどのように結びついているのかは,今後の課題である。
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