アフリカ研究
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2012 巻, 81 号
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論文
  • ガーナ北東部の輸出向け手工芸品ボルガ・バスケットの事例
    牛久 晴香
    原稿種別: 論文
    2012 年 2012 巻 81 号 p. 1-15
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    ボルガ・バスケットは,ガーナ北東部ボルガタンガ周辺で生産される天然素材の手作りバスケットで,日本や欧米でファッションバッグやインテリア用品として販売される。本稿では,生産者と企業の意向を仲介する地元の流通関係者(仲介者)に着目し,ボルガ・バスケット産業を動かす村レベルの生産・売買の仕組みを明らかにした。調査村では,村の手工芸協会,米国のフェアトレード企業,個人経営の仲買商人がそれぞれ異なる方法でバスケットを買い取っており,1)全体としては,質のよい製品や新しいデザインに高価格が提示される仕組みになっていることで,品質の向上とデザインの多様化が促されていた。一方で,2)地元の仲買商人が低品質な製品を含むあらゆるバスケットを頻繁に買い取ることで産業の裾野の拡大に貢献していた。そしてさらに重要な点は,3)すべての仲介者が生産者の生活リズムを尊重し,彼らとの親密な関係を保ちつつバスケットの製作を促しており,この産業が農村社会になじむような体制を整えていたことである。仲介者たちが,先進国企業の厳格な要求とアフリカ農村の生活事情の間に生じがちな軋轢を緩和するインターフェイスの役割を果たし,ボルガ・バスケットの国際的な流通を支えていたのである。
  • 關野 伸之
    原稿種別: 論文
    2012 年 2012 巻 81 号 p. 17-30
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    アフリカの資源管理分野において,近年,環境NGOの活躍がめざましい。セネガルの環境NGOであるオセアニウムは同国の環境保全活動に大きな役割を果たしてきた。1990年代の地球環境問題の高まりとともに,海洋汚染問題に強い関心を示し,水産資源の過剰利用について普及啓発キャンペーンを展開してきた。同国で初となる海洋保護区の設置に尽力し,大規模なマングローブ植林事業によって,国際的な名声を手中にしつつある。国際的名声の高まりとともに事業は肥大化し,2006年に6万5千本ではじまった植林は,CO2削減を目指す海外の企業からの資金を得て2010年には6,000万本と1,000倍に膨れ上がった。さらにオセアニウムの指導者は2012年に発足した新政権に入閣し政界への進出を果たした。環境NGOの躍進はセネガルにおける「市民社会」の萌芽とみなすこともできるであろうが,地域住民は環境保全に理解を示し,共感しているのだろうか。そして,オセアニウムをどのように受け止めているのだろうか。
    本論文では急激に成長する環境NGOが,関係するアクターにいかなる影響を与えているのかを分析し,「北」の資金に依存する「南」の環境NGOが抱えるジレンマを提起する。環境NGOの資金の受け皿としての役割が強化されると,資金をめぐって地域社会に新たな権力関係が再生産されることになる。マリンスポーツ愛好団体にすぎなかったオセアニウムがカリスマ的指導者を得ることによって環境NGOに変貌し,イメージ戦略の採用や企業との連携を図りながら政治のアリーナに進出するにいたるまでのプロセスを明らかにし,環境NGOが自らの組織の正統性確保のために権力関係を生み出す危険性を指摘する。
研究ノート
  • 南スーダン,ヌエル社会における予言の語りの分析
    橋本 栄莉
    原稿種別: 研究ノート
    2012 年 2012 巻 81 号 p. 31-44
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    南スーダンに住まうヌエル社会の人々は,度重なる内戦を経験し,平和構築や住民投票,新国家の誕生という歴史的出来事に立ち会ってきた。多くのヌエルの人々は,これらの出来事をかつてなされた予言が成就したものとして捉えている。本稿の目的は,首都ジュバに住まうヌエルの人々が,南スーダンの分離独立という歴史的出来事を,19世紀末になされた予言という「神話」的枠組みを通してどのように捉えていたのかを報告することにある。人々は住民投票のプロセスの中で偶発的に出現する数々の要素を,かつての予言の中に見出すことによって分離独立の正しさを語っていた。本稿では多様な予言の解釈に注目し,語り手各々が抱える現実的な問題が予言を介して国家レベルの問題に接続されてゆく過程を描く。これを通じ,多様な背景を持つ人々が集うアフリカ都市社会において,戦後復興の一環である「民主化」への取り組みと,多様な解釈を通じて刷新される「神話」とがいかに人々の重層的なリアリティを形成してゆくのかを提示する。
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