アフリカ研究
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2013 巻, 83 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
論文
  • 中曽根 勝重
    原稿種別: 論文
    2013 年 2013 巻 83 号 p. 1-16
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/04/16
    ジャーナル フリー
    ガーナ北部では,押し寄せる市場自由化の波によってそれまでの自給的性格の強い農業が変化しつつある。本稿では,ガーナ北部で実施した7年間の継続調査の結果をもとに,コンパウンドにおける作物別作付面積の推移および作物の消費・販売の変化と,コンパウンド内における個人の役割の変化について検討し,市場自由化の影響による営農体系の変化について考察した。
    その結果,コンパウンドに併存する共同体的営農と個人的営農という重層的な営農構造は,経済自由化という外部環境変化と人口増加による土地の細分化という内部条件変化にともない,それぞれがおかれた状況に応じて変化していることが明らかとなった。一部のコンパウンドでは,自家消費作物と販売作物の生産の分業化が進展してきており,現金獲得を営農目的とする農民も現れてきた。しかし,従来の自給的性格の強い農業は,コンパウンドメンバーに対する責任が強い家長や年配の農民が担ったままである。つまり,ガーナ北部では,市場自由化という外部環境の変化に対し,あくまでもコンパウンドを主体とする共同体的営農を優先させた上で,同時に個々の農民の役割を柔軟で流動的に変化させて個人的営農を進展させながら生活の中に市場経済を取り入れている。したがって,現時点において市場自由化の影響による営農構造の変化が,コンパウンドという生活の基本単位を維持することを無視して個別化が進むという方向性を見出すのは難しい。
研究ノート
  • ローカリティにもとづく医療支援に向けて
    波佐間 逸博
    原稿種別: 研究ノート
    2013 年 2013 巻 83 号 p. 17-27
    発行日: 2013/12/31
    公開日: 2014/04/16
    ジャーナル フリー
    東アフリカ牧畜社会では,公的な医療施設からの地理的な距離や頻繁に移動する生活様式が,ヘルスケアの供給の欠落と結びついている。そしてヘルスケアの欠落は,疾病に感染し症状を悪化させるリスクとなっている。ヘルスケアを利用することが容易ではない環境に置かれている牧民たちは病状の改善を求め,その都度可能な選択肢から特定の治療方法を模索する。この懸命な努力によって,ひとつの治療エピソードは異なる医療体系を組み合わせる多元的な医療行動として構成されることになる。人びとの健康への希求は,個人レベルでの能動的な治療方法の模索を動機づけるだけではない。牧野の伝統医と医療関係者の協働により,エティック・アプローチに基づく医療サービスと「伝統」から構成される多元的なシステムの構築を通じて,持続的なヘルスケアの供給を確保する新しい試みが創出されている。ヘルスケアの改善策をめぐる従来の議論に対して,本稿が報告するこのような創造的な試みは,牧畜地域においてヘルスケアを持続的に供給できるアプローチとしての別の可能性を提示するものである。特定社会が健康における不利益を強いられることのない状況に連なるローカリティへの接近により,人類学的調査にもとづく支援モデルを提示する作業の出発点として,本稿を位置づけたい。
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