アフリカ研究
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2014 巻, 85 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論文
  • ─ナイジェリア出身者の経済活動を通して─
    松本 尚之
    原稿種別: 論文
    2014 年 2014 巻 85 号 p. 1-12
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2015/02/06
    ジャーナル フリー
    本論文では,在日ナイジェリア人のライフストーリーを,特に来日から現在に至る就業の変遷に注目しながら詳述する。特に,在日ナイジェリア人のなかでも多数派であるイボ人を事例とし,彼らの経済活動の多角化,トランスナショナル化の傾向を明らかにする。それによって,日本に暮らすアフリカ系移民の定住化とトランスナショナルな移動の関係性について論じたい。
    来日したイボ人たちの多くが,工場や建設現場で働く非正規労働者として日本での就業を開始する。しかし,「出稼ぎ外国人労働者」としての生活は,ナイジェリアから日本にやってきた移民たちの一面を表すに過ぎない。本論で取り上げるどの事例からも,在日イボ人たちの就業が一種に集約することなく,複数業種を跨いで多角化していく傾向が見て取れる。さらに,就業の多角化は,日本国内だけでなく複数のローカリティにまたがってトランスナショナルに展開していく。本論文では,経済活動の多角化,トランスナショナル化の傾向が,在日イボ人たちの滞在期間の長期化,高齢化と結びついた現象であることを論じる。それによって,日本人配偶者との結婚や永住権の取得といった,一見すると「定住化」ともとれる現象が,トランスナショナルな移動を促す契機となっていることを明らかにしたい。
研究ノート
  • 黒崎 龍悟, 岡村 鉄兵, 伊谷 樹一
    原稿種別: 研究ノート
    2014 年 2014 巻 85 号 p. 13-21
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2015/02/06
    ジャーナル フリー
    本稿では,タンザニア南部高地の農村において,近年になって地域住民が独力で進めている小型水力発電に着目し,こうした取り組みがどのように実現しているのかについて紹介する。タンザニア人口の約80%は無電化地域に居住し,そのほとんどが地方である。そのような地域でも電灯やラジオの利用といった基本的ニーズを満たす他,とくに近年では携帯電話の充電など,電力へのニーズは高まっている。本稿が対象とする小型水力発電は出力が数十ワット~数キロワットとごく小規模であるものの,照明やテレビ,養鶏,携帯電話,床屋などへの利用というように電力の用途は多様であり,経済機会の創出や農村の生活の活性化に寄与している。担い手は農民や大工,教員などであり,専門的な技術を学んだ経験があるわけではなく,近隣の教会関係者や,同じ取り組みを進める職人から実践的な技術や知識を得ていた。彼らは農業や職人仕事で得た収入をもとに,廃品や中古部品を最大限活用しながら,時間をかけた試行錯誤のなかで発電に成功している。また,そのために発電システムは持続可能性や再現可能性が担保されている。小型水力発電の特徴は,現代的ニーズを満たしつつもローカルに展開できる技術に根差しているところにある。また,こうした取り組みは住民にとって身近な共有物(コモンズ)である河川を利用するため,必然的に地域社会の理解や環境保全が求められる。アフリカの現代的ニーズに端を発した小型水力発電は,地域の内発的な発展につながる可能性がある。
  • 藍澤 淑雄
    原稿種別: 研究ノート
    2014 年 2014 巻 85 号 p. 23-31
    発行日: 2014/12/31
    公開日: 2015/02/06
    ジャーナル フリー
    本論では,タンザニアにおける地方分権の実体化を阻害している行政構造的・政治構造的要因について議論する。タンザニアでは,90 年後半より国策として地方自治体に中央政府の権限を委譲すべく地方分権改革が進められてきた。しかし地方自治体が果たすべき地域開発支援の役割の重要性は認識されながらも,中央政府の権限が十分に委譲されているとは言えない。地方自治体の予算配分や人事における権限が部分的にしか委譲されておらず,地方自治体がその裁量で住民自治を支援すべく機能しているとは言えない。
    そこには地方分権にかかる関連法規の未整備・不調和があり,その状況が中央政府の権限移譲を遅らせている。加えて,一党優位体制により村まで及ぶ政治的な影響力は,必ずしも中央行政主導の地方分権化の取り組みと調和しているわけではない。地方自治体がこうした外部要因に変化をもたらすのは困難であり,地方自治体の自己裁量による地方自治を実現するための革新的な取り組みが期待される。
学界通信
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