本稿では,ブルキナファソ農村における女性住民組織の事例を取り上げ,組織の女性たちが開発援助の経験を積み重ね,その経験を活用しながら生活の便宜に合わせて独自の活動を創出したことについて,マイクロファイナンス(MF)の利用を中心にそのプロセスを明らかにした。昨今,住民自身の自主性や主体性を尊重した参加型開発が提唱される中で,住民組織が地域開発に活用されるようになった。事例とした組織は互助を目的として作られ,その後複数の援助を受けながら活動を展開してきた。その過程でMF機関の利用を始め,さらにNGOにより導入された手法で内部資金を運用したMFの運営を経験すると,それらの方法を取り入れてMFの自主運営に乗り出した。そしてMF機関に対して利用条件に関する交渉を行い一定の成果を上げると,自分たちの都合に合わせて修正を加えながらMFの自主運営をつぎつぎと展開させていった。それを可能にした要因は,組織の女性たちがMFの自主運営を行うために必要な技術と知識を身につけてきたこと,結成当初からの全ての組織活動の経験を通して自信を培ってきたことであった。MFの借り手,ひいては開発援助の受け手は,受動的な存在ではなく,積み重ねてきた経験を活用して,みずから新しい活動を創り出す力をもつのである。
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