アフリカ研究
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2014 巻, 84 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
論文
  • ─その変遷と経済活動の比較─
    今中 亮介
    原稿種別: 論文
    2014 年 2014 巻 84 号 p. 1-16
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    マリ南西部の農村では,1990年代後半以降,「トン」と呼ばれる共同労働組織が急増している。この背景には,経済自由化などの理由から村内の現金流通量が増加したことがある。トンは植民地期以前からみられたが,近年増加している組織は子どもと既婚女性がそれぞれ新たに組織化したものである。本論では,一農村を事例にトンの歴史的な変遷を示した後に,子どものトンの経済活動の特徴を既婚女性のトンとの比較から明らかにする。両組織の経済活動は,「現金を対価として共同労働を行い,組織としてそれを貯蓄し,宴で消費する」という共通点がみられるものの,異なる論理に基づいて営まれている。既婚女性のトンが生活上の必要を満たすために営まれているのに対し,子どものトンは活動それ自体を楽しむこと,それのみに目的性をみいだしうる。こうした目的性の違いは,一方が固定的であり他方が流動的であるメンバーシップをもつ組織構成の違いにも表れている。トンがもとより有していた両義性と分化への性向,個人を構成単位とする組織のあり方が,両組織が同じ「トン」でありながらこうした対照的ともいえる特徴をもつことを可能にしたと考えられる。
  • ─ブルキナファソ農村における女性住民組織の事例から─
    神代 ちひろ
    原稿種別: 論文
    2014 年 2014 巻 84 号 p. 17-30
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    本稿では,ブルキナファソ農村における女性住民組織の事例を取り上げ,組織の女性たちが開発援助の経験を積み重ね,その経験を活用しながら生活の便宜に合わせて独自の活動を創出したことについて,マイクロファイナンス(MF)の利用を中心にそのプロセスを明らかにした。昨今,住民自身の自主性や主体性を尊重した参加型開発が提唱される中で,住民組織が地域開発に活用されるようになった。事例とした組織は互助を目的として作られ,その後複数の援助を受けながら活動を展開してきた。その過程でMF機関の利用を始め,さらにNGOにより導入された手法で内部資金を運用したMFの運営を経験すると,それらの方法を取り入れてMFの自主運営に乗り出した。そしてMF機関に対して利用条件に関する交渉を行い一定の成果を上げると,自分たちの都合に合わせて修正を加えながらMFの自主運営をつぎつぎと展開させていった。それを可能にした要因は,組織の女性たちがMFの自主運営を行うために必要な技術と知識を身につけてきたこと,結成当初からの全ての組織活動の経験を通して自信を培ってきたことであった。MFの借り手,ひいては開発援助の受け手は,受動的な存在ではなく,積み重ねてきた経験を活用して,みずから新しい活動を創り出す力をもつのである。
  • ─クク人の移動を基底として─
    飛内 悠子
    原稿種別: 論文
    2014 年 2014 巻 84 号 p. 31-44
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    避難・移住先のウガンダで東アフリカ信仰覚醒運動と出会ったククの人々は,内戦終結後故郷に戻り,神の言葉を伝え歩き,信仰覚醒運動体を組織した。第2次内戦時信仰覚醒者たちはウガンダと「スーダン」との間を行き来しながら活動を行い,運動は彼らの移動と共に南部スーダンの首都ジュバ,そしてムスリムが多数派を占める北部ハルツームにまで到達した。その活動や教会指導者たちとの関係のあり方は彼らが住んだ土地ごとに異なったが,繰り返される移動によって断ち切られたネットワークが,「神の仕事」が行われることによって,再生,刷新されていくことに人々が「神の恩寵」を見出していたことは共通しており,その拡大の理由の一つでもあった。そして内戦終結によって平和が訪れた南スーダンにそれぞれの避難地から帰還した人々は,神を多様な避難・移住の経験を持つ人々の結節点とし,正しいキリスト教徒たらんとしているが,彼らが考える正しさが変容していく過程にあることもまた事実であり,それは「スーダン」の信仰覚醒運動に変化ももたらしつつある。
研究ノート
  • ─孔子学院は中国とアフリカ間の軋轢を乗り越える手段となりうるか─
    尹 曼琳
    原稿種別: 研究ノート
    2014 年 2014 巻 84 号 p. 45-53
    発行日: 2014/05/31
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    近年,中国の対アフリカ貿易・投資の急増に伴い,中国とアフリカの間に様々な軋轢が発生している。他方で,中国政府はアフリカにおいても孔子学院の建設を推進し,その活動を積極的に支援している。筆者は孔子学院が中国とアフリカ間の軋轢を乗り越える手段となりうるかを検討する為に,2013年1月に,西アフリカのトーゴとベナンの孔子学院で対面式アンケートを行った。本稿では,そのアンケート結果からトーゴとベナンの孔子学院で学ぶ学生の属性と学習動機および満足度を示し,トーゴ孔子学院に比べて,ベナン孔子学院の回答者が孔子学院での学習状況に満足しており,中国が好きな程度も高いことを明らかにした。しかし,多くの中国人と中国系企業のアフリカ文化と法律に対する理解が不十分であるため,アフリカ諸国では,中国企業と現地企業の対立や労働者の労働争議問題も目立つ。今後,孔子学院はアフリカに進出する中国企業・中国人のアフリカ文化への理解を深める教育を行うことも重要であると思われる。
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