アフリカ研究
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2016 巻, 89 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
論文
  • ウスマーン・ブン・フーディーの著作の分析から
    苅谷 康太
    原稿種別: 論文
    2016 年 2016 巻 89 号 p. 1-13
    発行日: 2016/05/31
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    19世紀初頭,現在のナイジェリア北部一帯に相当するハウサランドにおいて大規模な軍事ジハードが開始された。このジハードは,数年のうちに次々と同地のハウサ諸王権を圧倒し,一般にソコト・カリフ国と呼ばれる,イスラームを統治の基盤に据えた国家の建設を実現した。ジハードと国家建設の中心にいたイスラーム知識人ウスマーン・ブン・フーディー(1817年歿)は,複数の著作の中で,ハウサランドもしくはスーダーンに住む人々を信仰の様態に基づいて分類し,更に,その分類において不信仰者と見做した人々の捕虜・奴隷化に関する規定を論じている。本稿では,国家の基盤建設期にあたる1808年以降のウスマーンが,ウラマーの多くが認めていない法学的見解に依拠することを容認する「寛容の思想」を導入し,上述の信仰の様態に基づく人間の分類を操作することによって,捕虜・奴隷化し得る不信仰者の範疇を如何に拡大したのかを明らかにし,更に,その背景に如何なる理由が存在したのかを考察する。
  • ウガンダの首都カンパラにおける若者文化「カリオキ」の大衆化の過程
    大門 碧
    原稿種別: 論文
    2016 年 2016 巻 89 号 p. 15-27
    発行日: 2016/05/31
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    21世紀初頭,ウガンダの首都カンパラにおいてエンターテイメント「カリオキkarioki」が開花した。カリオキは,夜間のレストランやバーのステージで,若者たちが音楽を使用して披露するショーである。もともとアメリカ音楽に夢中になった高学歴エリートの大学生たちの楽しみであったパフォーマンスが,数年ののちに盛り場でおこなわれる大衆的な人気をほこるエンターテイメントとして確立した。本論では,このカリオキという一部の若者たちに受容された文化がいかに大衆に共有されるポピュラー・カルチャーとして栄えるようになったのかを明らかにする。まずカリオキのパフォーマンス内容,公演場所や客層について検討し,カリオキの流行を支える時代背景があったことを確認する。次に若者たちの実践を追う。若者たちが学校から盛り場へと公演場所を移すことによって公演がビジネスとして行われるようになり,カリオキが単なる娯楽から現金収入の手段にもなるとともに担い手の若者たちが多様化し,大衆的に人気を誇るカリオキへと変貌していった過程を検討する。最後にこの発展を可能とした技術的環境の変化にも触れる。これにより,大学生以外の若者たちが従事し,また幅広い年齢層や所得階層の人びとを惹きつけるエンターテイメントとなった背景を明らかにする。
研究ノート
  • 小野田 風子
    原稿種別: 研究ノート
    2016 年 2016 巻 89 号 p. 29-35
    発行日: 2016/05/31
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル フリー
    タンザニアのスワヒリ語作家ユーフレイズ・ケジラハビは,1990年代の二作の小説により,スワヒリ文学界に実験的小説をもたらした作家として知られる。本研究では,1974年に出版されたケジラハビの二作目の小説『うぬぼれ屋』Kichwamajiに見られる奇妙な結末に着目する。
    本作の主人公であり語り手でもあるカジモトは,最終章で自殺するに至る。しかし本作は通常の一人称小説とは異なり,語り手の死の時点では物語は終わらない。カジモトの死の直前に正体不明の別の語り手が語りを引き継ぎ,カジモトの死とその後の出来事を語るのである。小説の最後に語り手が交代するという構造はそれまでの語り手の相対化という効果を持つため,読者はカジモトの語りの再評価を強いられる。
    カジモトの語りを見なおすと,彼の自分についての語りは,彼や他の人々の実際の言動と矛盾していることがわかる。例えば彼はみずからを故郷の村から疎外されるエリートとして描写しているが,実際には村人と積極的に交流し,濃密な人間関係を築いている。
    本研究では,このような性質を持つ語り手カジモトを,現代文学理論で用いられる「信頼できない語り手」という用語で説明できることを示し,ケジラハビの初期作品に見られる実験性に光を当てる。
学界通信
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