1980年代におけるトップダウン的な計画作りへの反省などから,1990年代以降,住民組織に管理権限を移譲する参加型の自然資源管理がアフリカ諸国でも試みられるようになった。参加型住民組織の形態は地域により多様である。本論ではエチオピアを取り上げ,まず調査村において住民の日常生活に関する諸活動がどのような小地域集団でなされているかを,ソシオメトリー法を用いて分析した。次に,住民間の合意形成過程を司る農民組合(行政村を代表する地縁団体)とイディル(集落を代表する地縁集団)の二つの住民組織を主に対象にして,それらの階層構造と権力構造(リーダーシップ構造)を非計量データの統計的解析法などを用いて分析した。最後に,調査村で行われた四つの自然資源管理や小規模施設整備の事例について,どのような住民がどのような問題領域に関心を示し,どのような影響を合意形成に及ぼしたかを,多変量解析法を用いて分析した。調査村では,集落の階層構造にもとづく有力者層があらゆる問題領域に関与する「有力者型」政策決定過程が顕著に観察された。住民の合意形成に成功した事例と失敗した事例を比較して,調査地における農村開発政策決定の要件とした。
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