アフリカ研究
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論文
  • ─マリの首都で精霊憑依を実践するソンガイ移民の事例
    内田 修一
    原稿種別: 論文
    2025 年2025 巻107 号 p. 1-12
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/23
    ジャーナル 認証あり

    本論考は、北部の生活条件の悪化を背景に、マリの首都バマコに移住してきたソンガイ人がそこで実践してきた精霊憑依を対象に、「適応」の意味の再検討と事例の特徴の記述と分析をとおして、精霊憑依の実践が都市環境においてどのような適応に繋がっているかについて考察するものである。

    既存の文献では、類似した事例について、精霊憑依カルトがセラピー的機能とコミュニティへの包摂をとおして、苦悩する個人の都市生活への適応を助けていると論じられ、またこうした研究の一部を受けて精霊憑依カルトが「セラピー化」していくという仮説が提起されたが、これら主張と仮説はバマコのソンガイ移民の事例には当てはまらない。本論考では、ラディカル構成主義における「適応」についての議論を参照して、出身地が異なり精霊憑依に関して多様な知識と経験を持つソンガイたちが実践を共にし、異なる精霊憑依カルトを実践する人々と共存している環境で、移民たちがこの状況に適合的な知識・認識を(再)構成して都市環境に適応していると想定し、彼らの実践の脱ローカル化とローカル化に着目した。

    この視座から本論考が明らかにしたのは、出身地や民族を異にする人々との実践の共有を可能にする一方で、精霊を含む他者との関係性と道徳性を帯びた世界観が重要なものとして現れている適応の仕方の都市環境における創発である。

  • ―成人との比較・絵の分析より
    阪本 公美子, 人見 俊輝, 株田 昌彦, 菊地 由起子, アナ マロ, 津田 勝憲, フランク ムバゴ, 大森 玲子
    原稿種別: 論文
    2025 年2025 巻107 号 p. 13-26
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/23
    ジャーナル 認証あり

    野生食物はアフリカにおいて重要な栄養源と認識されているが、将来の世代がそれをどのように摂取し認識しているかを理解することは特に重要である。本論文は、子どもの野生食物の(1)摂取頻度(成人と比較)、(2)摂取種、(3)認識について、タンザニア南東部の内陸部(85 人)と沿岸部(91 人)の村の子どもたちへのアンケートをもとに、明らかにした。データは同村の大人と比較するとともに、絵を分析し、参加型フォーカス・グループ・ディスカッションを行った。子どもたちは大人に比べて、どの季節でもより多くの種類の野生食物を、より頻繁に消費していた。特に果物の種類が多いが、野菜、イモ類、動物、昆虫も含まれていた。フォーカス・グループ・ディスカッションでは果物が好まれていたが、Dioscorea hirtiflora等のイモ類も含まれていた。さらに、生きた野生食物の絵は、野生の食べ物を育む自然との子どもたちの日常的な関わりを反映し、野生食物に対する「生身」の視点を示している。バオバブの大樹やキノコなど、象徴的な野生食物を描く子どもが多かったが、食べ物としての好みだけが絵を描く動機ではなかった。また、頻繁に描かれた低木の枝の部分や実は細かい観察が確認でき、子どもたちの消費の好みと一致している。野生食物が森の中で多様に広く分布し、飢餓食として活用されている内陸部の村に比べ、住宅地で身近に入手できる沿岸部の村では、野生食物が子どもたちにより頻繁に消費され、絵にも描かれ、野生食物の好みに関する共通認識があり、日常的な消費を豊かにしていた。

  • 石川 博樹
    原稿種別: 論文
    2025 年2025 巻107 号 p. 27-38
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/09/23
    ジャーナル 認証あり

    現在のエチオピアの中央部はかつてショア地方と呼ばれていた。19世紀末に同地方出身のキリスト教徒であったメネリク2世(在位1889~1913年)がエチオピア帝国の皇帝となった。そして20世紀にショア地方のキリスト教徒の食文化を基盤として、エチオピアの国民料理が形成された。先行研究では、19世紀におけるショア地方のキリスト教徒の食文化の変化については十分な研究が行われてこなかった。本稿では、19世紀中葉のショア地方において、それまで民衆の食べ物と見なされていたテフ(Eragrostis tef)のパンケーキを王族・貴族も食べるようになるという変化が見られたこと、このような変化は、テウォドロス2世(在位1855~1868年)のショア地方征服後、彼の宮廷で10年間の捕囚生活を送ったメネリク2世が、王族・貴族もテフ粉のパンケーキを食べるという食文化をショア地方にもたらした結果であった可能性が高いこと、このような変化を経て、1870年代後半までに、テフを主原料とする液状生地でつくられるパンケーキが、小麦粉パンのダッボと並んでショア地方を代表するパンとして認識されるようになったことを明らかにした。

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