主にイネ科の穀類テフ(Eragrostis tef)でつくられる酸味のあるパンケーキ状のインジェラは、しばしばエチオピアを代表する食品と称される。「インジェラ」という語はアムハラ語の単語であり、14世紀には使用されていた。しかしこの語は少なくとも1840年代初頭まで「パンを意味する総称的な語」として用いられていた。本稿では、「インジェラ」という語が「液状生地でつくられるパンケーキ状の食品」を意味するようになった時期や背景について検討を行った。検討の結果、①「インジェラ」という語は1850年代後半まで「パンを意味する総称的な語」として使用されていたと考えられること、②「インジェラ」という語が「液状生地でつくられるパンケーキ状の食品」を意味するようになるという変化は1860年代から1870年代にかけて進行したこと、③エチオピアのキリスト教徒居住地で「液状生地でつくられるパンケーキ状の食品」が一般的なパンとしての地位を獲得したことが、このような「インジェラ」という語の語義の変化をもたらした可能性があることが判明した。
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