アフリカ教育研究
Online ISSN : 2436-1666
Print ISSN : 2185-8268
最新号
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特集 ケニアにおけるカリキュラム改革の現状と課題―合同フィールドワークから―
研究ノート
  • ―学習者の意思決定に着目して―
    濵 良枝
    2023 年 14 巻 p. 37-52
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

     本稿は、ナイジェリアにおいて学力に効果があった学習者中心型の指導法を、学習者の意思決定度合に基づき整理・分類し、その特徴を明らかにすることを目的とする。分析の枠組みとして、教師と学習者間における意思決定の配分に基づき11の学習指導スタイルを定義するモストンのスペクトラム理論を活用した。研究手法にはナラティブレビューを採用し、ナイジェリアで学力向上に効果があることを実証した11の研究論文を選定し分析した。その結果、ナイジェリアの学習者中心の指導法は、モストンが定義する練習型、自己チェック型、インクルージョン型、誘導発見型、収束的発見型、学習者による個別プログラムの6つのスタイルに分類された。それらの指導法には、学習者による協同学習、自己モニタリング、自己評価の3つの共通点が含まれていることが明らかになった。また、学習者の意思決定度合がより大きい指導スタイルでは、学習者の既存知識が必要であり、それが十分でない場合、学力向上への逆効果をもたらすことも示された。本研究では、ナイジェリアにおける学習者中心型指導法の開発のための有用な示唆を提示した。

  • ―ケニア中等理数科教育強化計画の事例から―
    池田 亜美, 日下 智志, 馬場 卓也
    2023 年 14 巻 p. 53-65
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

     国際協力は期間限定であり、終了後は被援助国関係者による対応が必要である。よって、協力期間中にいかに自立性・持続性を芽生えさせるかが重要である。本稿では自立性・持続性と関係する内発的発展論に着目し、JICA技術協力プロジェクト「ケニア 中等理数科教育強化計画」及び後継プロジェクトを事例に、内発的発展及び教育借用理論の観点から分析を行った。内発的発展に着目した研究を進めることで、視点を途上国側に置き、途上国の教育開発史における国際協力の役割を明らかにし、被援助国による取り組みと国際協力の介入とを区別し、これらの関連を考察することを狙いとした。

     本稿では、教育における内発的発展を「ある社会(国・地域)が、内外とやり取りをして、意識的・主体的に、自国・他国の過去・現在の知識・制度を検証し、自国の知識・制度を、改定、構築していくプロセス」と定義した。資料分析の結果、ケニアの中等理数科教員現職研修は、JICAプロジェクトを契機に、現在まで継続して、ケニア関係者による主体的な改定・構築のプロセスにあることが確認された。これは、プロジェクト専門家が協力期間中からケニア関係者に主導権を委ね、ケニアが主体的に実施してきたことが影響していると考えられる。

調査報告
  • ―クランコミュニティと教員の視点からみた課題と可能性―
    星野 和樹
    2023 年 14 巻 p. 66-78
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー

     地方分権化の影響から、教育拡充におけるコミュニティ参加の有用性と必要性、地域を巻き込んだ学校運営の在り方が模索される。そして、地域を巻き込んだ学校の民主的な運営の重要性が強調されるようになった。一方で、学校に関わる地域の人々には多様な背景があることや、学校へのアクセスが制限される地域ではコミュニティの参加を促すことが難しいという現状がある。特にアフリカの非正規市街地は、コミュニティと学校の協働がある一方、提供する教育レベルが低い学校では教育への理解が得にくいという現状がある。そこで本研究では、なぜ非正規市街地においてコミュニティと学校が協働する必要があるのか、協働するために必要なことは何かを考察する。ガーナ共和国の首都アクラの非正規市街地であるアベセ(Abese)地区を事例として、コミュニティと教員それぞれの視点から調査を行った。調査から、①アベセクランの人々はA校に、高学歴・高収入につながる学校教育を期待しているが、A校にはその期待に応えらえる学校設備などが無い、②A校とコミュニティが意見交換や合意形成をする場が不足していることが明らかとなった。解決策として、チーフを頂点とするクラン社会にあるアベセ特有の強みを活かした学校とコミュニティの関係構築が、A校の教育環境の課題を克服するために有効だと考えられた。

追悼文 内海成治先生
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