国際協力は期間限定であり、終了後は被援助国関係者による対応が必要である。よって、協力期間中にいかに自立性・持続性を芽生えさせるかが重要である。本稿では自立性・持続性と関係する内発的発展論に着目し、JICA技術協力プロジェクト「ケニア 中等理数科教育強化計画」及び後継プロジェクトを事例に、内発的発展及び教育借用理論の観点から分析を行った。内発的発展に着目した研究を進めることで、視点を途上国側に置き、途上国の教育開発史における国際協力の役割を明らかにし、被援助国による取り組みと国際協力の介入とを区別し、これらの関連を考察することを狙いとした。
本稿では、教育における内発的発展を「ある社会(国・地域)が、内外とやり取りをして、意識的・主体的に、自国・他国の過去・現在の知識・制度を検証し、自国の知識・制度を、改定、構築していくプロセス」と定義した。資料分析の結果、ケニアの中等理数科教員現職研修は、JICAプロジェクトを契機に、現在まで継続して、ケニア関係者による主体的な改定・構築のプロセスにあることが確認された。これは、プロジェクト専門家が協力期間中からケニア関係者に主導権を委ね、ケニアが主体的に実施してきたことが影響していると考えられる。
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