本稿の目的は、ボツワナ共和国で2022年に起こされた埋葬裁判と、2024年の総選挙(国民議会および地方議会選挙)をめぐる再定住地のサンの反応を考察することを通じて、彼らの日常におけるわだかまりが、土地問題などの政治的な意見に変化しつつあることを明らかにすることである。ボツワナ共和国ではこれまで、長年にわたり政府とサン活動家が土地の権利をめぐって争ってきた。それは、再定住地におけるごく一部のサン活動家と彼らを支援する国際的な先住民支援団体によって争われ、再定住地におけるサンの多くは周囲から静かに見守るのみであった。しかし、あるサン活動家が埋葬場所をめぐって起こした裁判と選挙への立候補によって、土地問題をどこか自分事としては捉えていなかった再定住地のサンの人々も、日々の生活のなかにおける不満と重ね合わせるかたちで政治的な意見を持ち始めた。本稿では、再定住地におけるサンに注目し、より人々を土地問題の議論に巻き込むことになった背景と人々の意識の変化を、近年の埋葬裁判と選挙から論じる。
中国アフリカ関係をめぐる研究は、中国とアフリカ諸国の国家間関係や、中国による対アフリカ援助や中国国営企業の活動がアフリカ諸国の政治経済に及ぼす影響を考察するという限られた視座から捉えられてきた。中国アフリカ関係を重層的に捉えているとは言い切れない従来の研究に対し、本稿では、多くのアフリカ諸国の地方統治に欠かせないアクターである伝統的権威に着目し、ウガンダ中部のブガンダ王国および同国西部のブニョロキタラ王国が、どのように中国アフリカ関係の構築において主体的な役割を果たしているのかを検討する。そして、主に2024年から2025年にかけて実施したフィールドワークから得られた一次資料の考察をもとに、伝統的権威が中国ウガンダ関係の輪郭を形成するうえで不可欠な役割を担っていることを示す。
2024年10月にボツワナ共和国(以下、ボツワナ)で行われた国民議会選挙で初めての政権交代が起きた。ボツワナでは1966年の独立以来、ボツワナ民主党(Botswana Democratic Party: BDP)がすべての複数政党制選挙を制してきたが、2024年選挙で野党連合の「民主改革のためのアンブレラ(Umbrella for Democratic Change: UDC)」が勝利した。政権交代の要因としては、(1)貧困格差、高い失業率、経済低迷といった経済社会状況の悪化、(2)国民の現政権への失望、大統領と前大統領の決裂による与党内の分裂、(3)野党連合による効果的な選挙キャンペーンが挙げられる。
2024年12月の大統領選挙によって政権交代が生じたガーナでは、ジョン・マハマ(John Mahama)新大統領が、2025年4月にガートルード・トルコルヌー(Gertrude Torkornoo)最高裁判所長官を停職する異例の処分を下した。これは長官の罷免を求める請願書3通が提出されたことをうけた対応である。その後の調査委員会の勧告により9月1日付で同長官は罷免された。表向きは長官による越権行為に対する司法の健全性維持を理由とした処分だが、背景には同国の二大政党による勢力争いがある。さらに、この勢力争いは大統領が有す様々な公的ポストの任命権によって助長されている。このような勝者総取り制度と、近年特に高まりをみせている国民の司法への不信感が、今回の処分を後押しした。
アジア経済研究所の研究部門には部に相当する3つの研究センターがおかれ、各研究センターには課に相当する複数の研究グループがおかれている。2025年4月に行われた組織改編では、研究センター間での業務負担の均等化と研究センター内での連携の強化を趣旨として、研究グループの再編が行われた。これにより、地域研究センターに従来おかれていたアフリカ研究グループとラテンアメリカ研究グループが統合され、新たに「アフリカ・ラテンアメリカ研究グループ」が設けられた。アフリカ研究者とラテンアメリカ研究者をひとつの研究グループにおく態勢は、アジア経済研究所の長い歴史のなかでもはじめてのことである。このような新しい機会を捉え、アフリカとラテンアメリカをともに視野に入れた研究の可能性を模索してはどうかという機運が生まれ、2025年9月に一般向けの公開の専門講座に結実した。本フォーラムでは、発案ととりまとめにあたった網中昭世と上谷直克が同講座の模様を紹介する。
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