家族研究年報
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39 巻
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
シンポジウム報告
  • ―これからの親子関係を考える―
    久保 桂子
    2014 年 39 巻 p. 1-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
  • ― 傷ついた子どもに寄り添って ―
    坪井 節子
    2014 年 39 巻 p. 5-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
        子どもシェルターは、虐待などのために避難を必要とするおおむね15歳から19歳の子どもの緊急避難場所である。本稿では、まず「今晩帰る場所がない」子どもたちを救うために子どもシェルター「カリヨン子どもの家」を設立した経緯とその活動を概観する。次に、シェルターへの入居に際して、親権者から子どもを保護するために弁護士が果たす役割とその法的根拠について述べる。さらに、どのような子どもたちがシェルターに逃げてくるのか、その虐待の内容や具体的な状況を紹介する。子どもの権利擁護の場面では、しばしば「親権」がその支援に立ちはだかってきた。2012年に親権制度が改正されたものの、現場での課題の解決には、まだまだ結びつかないことも多い。これからも子どもの権利保障のために制度改善の道を探っていかなければならない。そのことを通して、子どもたちに寄り添い続けていきたい。
  • ―10代ママの地域生活を手がかりにして―
    森田 明美
    2014 年 39 巻 p. 17-36
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
        日本は、長く家庭に家族の地域での暮らしの支えを委ね、どうしても家庭で暮らせなくなると病院や施設を利用して、その問題を解決してきた。1980年代施策化が進んだ高齢者福祉は、地域福祉という社会福祉の分野を利用して課題はあるにせよ展開してきた。地域で暮らしたいという障がい者もまた地域福祉施策として取り組まれてきている。
        それに対して子どもの福祉は、家族依存から抜け出られない。子どもの貧困やいじめは深刻化し、とうとう単独の法律が作られるに至っている。都道府県の児童相談所を中心にして展開してきた保護的な児童福祉施策は量的に不足し、基礎自治体での取り組みにはなかなか移行しない。そうした中で地域の中心的な事業になるべき地域育成事業である児童館は貸館と化し、保育所も都市部では待機児があふれている。この状態では、こうした地域の施設に保護が必要になった子どもの回復への支援や、保護に至る前に予防的な支援を期待することはできない。
        養育課題を抱える子どもや子育て家庭の地域生活は、危機的な状況にある。児童福祉政策の課題を自己責任として背負わされる子どもたちの苦しさを私たちはどのように解決していくのかについて、子どもでありながら子育てをするという子育て支援の対象となっている10代ママの子育てと支援課題を例に考えてみたい。
投稿論文
  • ―東日本大震災における親族里親等支援事業の意義―
    和泉 広恵
    2014 年 39 巻 p. 37-53
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
        本論文は、岩手県の親族里親等支援事業の実践を通して、震災支援における「支援者-被支援者」の関係性のあり方について追究することを目的としている。この事業は、岩手県里親会が震災以降に親族養育者となった人に対して、被災地でサロンを開催する事業である。2011年10月から始まり、現在も継続している。
        本論文では、里親会会長へのインタビューと事業のフィールドワークを元に、この事業の意義について、分析を行った。調査から示されたのは、里親が近親者の死という親族養育者の「痛み」に衝撃を受けたことと親族養育者に対して控えめな支援を行っていることであった。控えめな支援とは、震災ボランティアとも当事者同士とも異なる、親族養育者の「痛み」にただ寄りそうという支援である。また、支援の背景には、震災後に生じた「岩手」という領域の構築と支援を行う過程で示された子どもの受け皿としての「里親」の役割があることが明らかになった。
  • ―セルフヘルプ・グループに集う夫・息子介護者の事例から―
    松井 由香
    2014 年 39 巻 p. 55-74
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
        本稿は、従来の家族介護研究において不可視化される、あるいは問題化される傾向にあった男性介護者に注目し、彼らが語る「男性ゆえの困難」について考察することを目的とする。具体的には、彼らが日々直面している介護をめぐる困難について、自らを「男性」あるいは「夫/息子」であることに関連づけて言及したトピックスを抽出し、彼らにとっての「男性ゆえの困難」の内実と意味づけを分析することをとおして、家族介護をめぐるジェンダー規範のありようについて考察した。調査対象者は、「仕事と介護の両立困難」「家事役割遂行の困難」「身体接触をともなう介護の困難」「介護の『仕事化』とそれにともなう困難」を「男性ゆえの困難」として語った。それらの困難は、彼らが介護や家事を女性が担うべきジェンダー化された役割として捉えていることを逆説的に示した。
  • ―近松世話物『曾根崎心中』『心中卯月紅葉』『心中宵庚申』『生玉心中』を中心に―
    中臺 希実
    2014 年 39 巻 p. 75-92
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
        本稿では、近世中期における都市部の民衆が持った「家」に対する集合心性を、明らかにすることを目的とする。近世中期において民衆から支持された近松門左衛門脚本の世話物11作品を分析史料として取り上げ、男性主人公に共通した入聟や養子という立場に着目し分析を行った。男性主人公が共通して抱えた「家」に対する葛藤や自身の立場への否定的な態度を分析することで、近松世話物に表象された民衆の「家」に対する集合心性を明らかにすることを試みた。
        本稿の試みによって、当該期における民衆の「家」に対する心性の複雑性を提示することが出来た。さらに、近世中期における都市部の民衆が持った「家」に対する心性は肯定的または否定的であったというような二元論で語れるものではなく、複雑な感情を内包していたことを、メディアにおける表象から示した。
  • ―被介護意向とその経済的背景―
    中西 泰子
    2014 年 39 巻 p. 93-108
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
        本論文の目的は、被介護意向の規定要因を、経済的背景に着目して明らかにすることである。子による介護を受ける意向(被介護意向)を持つ人々が、経済的に余裕がある人々なのか、それとも余裕がない人々なのかを探る。具体的には、介護が必要な状態になったときに子による介護を受けるか否かという回答が、世帯収入や世帯貯蓄とどのように関連しているのかを検討する。分析の結果、女性のみに経済状態との関連が確認され、被介護意向と世帯貯蓄との関連にカーブ効果が認められた。すなわち、世帯貯蓄が一定以下の場合と一定以上の場合の双方において、被介護意向が表明される傾向にあることが確認された。
  • ―フォーカス・グループディスカッションによる分析から―
    大森 美佐
    2014 年 39 巻 p. 109-127
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/31
    ジャーナル フリー
        日本では、晩婚・未婚化現象、それと連動して起こる少子化の傾向を問題視してか、人々に恋愛や結婚を意識させるような話題がメディアを媒介に世間を賑わせている。しかし、依然として結婚前の「恋愛」を中心的に扱った調査研究は少ない。本稿では、1983年から1993年生まれ、現在20歳代の未婚男女で異性愛者24名を対象にフォーカス・グループディスカッションと半構造化インタビュー調査を行い、若者たちが「恋愛」をどのように語るのかというレトリックに注目し、その論理構造をジェンダー視点から考察した。考察の結果、「付き合う」という契約関係は性関係を持つことの承認を意味するが、「付き合う」ことが必ずしも「恋愛」と同義ではないということがわかった。特に女性からは、結婚に結びつく恋愛を「恋愛」であるとする語りがみられ、ロマンティック・ラブを忠実に体現しようとすればするほど、「恋愛」から遠ざかるということが示唆された。
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