仙台地方に分布する新第三紀の火山岩は,日本の,ほかの地域のそれにくらべ,変質の度がひくい.また,水平層が多いため,日本で古地磁気学の研究をするのには,もっとも適した場所といえる.層位学の資料にもとついて,まず,火山岩の層位を確立し,それらの岩石の残留磁気を測定して,新第三系の古地磁気の編年を試みた.中新統には,その下部・中部・上部に,それぞれ少なくとも一回ずつの逆転残留磁化を示す岩石がある.磁化方位が逆転していくときの,自然残留磁気の強さの変化や,磁化方位から求めた磁極の位置の変化は,たがいに関係しあっているように思われる。百瀬により鮮新統から得られた磁極は,アフリカやヨーロッパ大陸を通過し,いったん東方に移動するが,その経路は中部中新統のそれとほぼ一致するし,永田らのPolar Wanderingのパスも同じ子午線上にくるようである.岩石の消磁実験の結果から,磁気の安定度は,あまりよくないことがわかる.したがって,さらに試料を集めて研究を進めなければならない.古地磁気の研究をさらにつき進めていけば,それによる,世界の,さしあたって日本国内の,ことなった地域との対比も可能になるであろうし,地磁気の変化と地質現象との関係もつきとめることができるかもしれない.
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