江若花崗岩体は,滋賀県琵琶湖北方の野坂山地に沿って,美濃帯の中・古生層を貫いて,東西10km,南北15kmの南北方向に伸びて分布している.江若花崗岩体は等粒状の粗粒黒雲母花崗岩と中粒黒雲母花崗岩,そして細粒斑状花崗岩の3つの岩相からなる.細粒斑状花崗岩は角閃石を含み,前2者に貫入している.粗粒黒雲母花崗岩は,断層運動と河川の開析により露出した中粒黒雲母花崗岩の深部相である.中粒黒雲母花崗岩はルーフ状の中・古生層の接触部に産する.江若花崗岩は,琵琶湖南部の花崗岩類に比べて,鉱物組成において,斜長石に乏しい特徴を示す.化学組成においてはSiO
2に富みFe
2O
3/FeO比が際だって高い特徴がみられる.江若花崗岩の帯磁率の平均値は山陽帯のものに相当するが,局所的に帯磁率が高い岩相を含む.
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