焼岳の現在の地殻変動をあきらかにするため,1992年から1996年の期間において,GPS精密測位が10回おこなわれた.観測点は焼岳の頂上付近に1点(焼岳観測点),山麓に2点(中尾および上高地観測点)の合計3点を1992年設置し,さらに1994年,西穂高山腹に1点(栗尾観測点)を加え,計4点で観測をおこなった.使用した受信機はTrimble 4000SL, 4000SD, 4000ST, 4000SST, 4000SE, Ashtech Z-XIIである.その結果,焼岳の山体は定常的に年間5〜10mmの速度で北東方向へ移動していることがわかった.本観測の期間中,京都大学防災研究所地震予知研究センター上宝観測所と共同で地震観測もあわせておこなった.その結果,焼岳の地震活動は,1992-1996の期間中,大変静かであった.焼岳地域のGPSおよび地震観測により,現在の変動の要因は,焼岳火山直下のマグマ活動ではなく,基盤岩の広域的な構造運動であると推定できる.
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