東海層群に挟まれる鮮新統坂東1火山灰層について堆積相解析を行い,その堆積過程の復元を行った.堆積相は8種類認定し,それらは,降下火山灰,泥流,河道,洪水,(後背)湿地の堆積環境の堆積物を示す.そして,堆積相の分布と累重関係から,この火山灰層が火山活動と関連した4つの堆積ステージ(ステージI〜IV)によって形成されたことを明らかにできた.坂東1火山灰層は,沖積環境が広がっていた地域に,2 (〜3)回の降下火山灰が降下し(ステージIとII,2回目の降下火山灰が定置した直後に多量の火山砕屑物による泥流が起こり(ステージIII),その後,河川による火山砕屑物の2次移動が起きて(ステージIV)形成されたといえる.特にステージIIIにおいては,降下火山灰によって植生が荒廃していたことに加え,火山砕屑物が多量に供給されていたことも重なり,砕屑物を山地側から短時間かつ多量に排出したとみられる.噴出火山は調査地域の北(東)方に位置したと考えられる.また,粒子の形状観察,密度測定,沈降速度の測定を行い,いくつかの堆積相についての堆積機構の検討を行った.第1として淘汰の悪いトラフ型斜交層理の河道堆積物は,多粒径の火山砕屑物の供給とともに粒子の沈降速度特性にも依存して形成されたといえる.ここで粒子の沈降速度特性とは,大粒径の軽石と粗粒砂サイズの火山砕屑物の粒子沈降速度が,あまり変わらないことである.第2として自己流動化流体の堆積物は,皿状構造を代表とする堆積構造から推定できた.それを構成する火山砕層粒子の流動化に必要な最少表面流速(V_<mf>)が粒子下方濃集によって沸き上がる媒体速度(V_<esc>)より小さいことから,定量的にも自己流動化が支持できた.さらに,第3として堆積重力流の中の高密度洪水流の位置付けを明らかにできた.高密度洪水流は,泥流と自己流動化流の中間に位置付けられること,個別(粒子)運搬プロセスよりも集合運搬プロセスの性格の強い流体であることが推定できた.
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