石油・天然ガスの鉱床が成立するためには,根源岩,貯留岩,帽岩の3要素が必要とされる.近年これら3要素に注目して石油・天然ガスが生成され,移動し,集積される全過程を一つの系として取り扱う『石油システム』という用語が提唱され,石油・天然ガスの探鉱上最も重要な概念となっている.このうち,生成に関しては地化学理論の発達によって早い時期から理解が深められ.演繹的な前進モデルが作成された.石油の生成はケロジェンと呼ばれる有機物の分解過程であり,温度が最も大きく影響する.したがって,堆積物が過去に受けた熱履歴の推定は,石油システム考える上で最も重要である.ところで過去の熱履歴はビトリナイト等の熟成度に反映されており,熟成モデルを逆演算的に用いることにより熱流量を推定することが出来る.このように推定した熱履歴を入力として,石油・ガスの生成モデルを稼動させ,過去の石油・ガスの生成タイミングや生成量を知ることにより,石油システムの理解,探鉱効率の向上が図られる.一方,石油生成モデルを試行錯誤的に用いることにより,入力パラメータの感度分析を行うことが出来る.新潟地域で過去の熱流量の入力値を意図的に1/2や2倍にしたところ,熱流量が高いほど生成量は増大するが.タイミングは過去に移動してしまうことが判明した.このように実験的にパラメータの影響度を定量化することも前進的モデルの重要な役割である.
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