東北地方およびその南方地域に設置されている一等三角点は1893〜1904年の測量開始以来,第2回(1960〜1964年),第3回(1973〜1985年)の改測が行われ,一等水準点の測量は1892年以来今日まで逐次改測が行われてきた.これらの資料を基に当地域について,観測期間を前期(1898〜1962年),後期(1962〜1979年)に分け,変動解析を行った.その変動様式から,当地域は仙台平野-山形盆地-新庄盆地-横手盆地-酒田周辺の帯状地域の境界,それより北方の北半部,南方の南半部の3地域に区分される.面積歪み(膨張/収縮)は垂直変位(隆起/沈降)と正の相関をもつ.すなわち北半部においては,前期の収縮域は後期には膨張域に変わり,その変動に符合するように垂直変動は,沈降域から上昇域に転ずる.他方南半部においては,前期の膨張域は後期の収縮域に移行し,垂直変動は上昇域から沈降域に変わる.こうした変動地塊の規模は数10kmから200kmである.これら各地塊は膨張・隆起運動と収縮・沈降運動が交互に進行し,脈動する.そしてその境界地域はほぼ一定しており変動の要因は地下深部にあることを示唆する.一方,各水準路線の変動様式の不連続点は継続的に現れており,変動地塊の構造を示唆している.この地塊の単元は数kmから20km程度である.1.0×10_-5を超える最大せん断歪みは,膨張域,収縮域のコンターが密な地域,すなわち変化率の大きい地域に分布する.また10×10_-5を超える最大せん断歪みは分布していない.この値が歪みの集積値の上限を示唆している可能性がある.M6.0以上の被害地震は1.0×10_-5以上のせん断歪みの分布域に発生している.被害地震が頻発する領域はそのようなせん断歪みの分布域である.
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