茨城県南東部の行方・鹿島台地に分布する中・上部更新統の層序について検討した.堆積相解析に加えて,珪藻,有孔虫,貝化石の分析結果から,本地域の主に海成層からなる更新統は4つの堆積シーケンス(累層)に区分されることがわかった.隣接する茨城県稲敷台地および千葉県下総台地北部における層序区分との対応関係から,これら4堆積シーケンス(累層)は下位より,八日市場層,神崎層,上岩橋層,木下層に対比される.八日市場層上部層・下部層境界面,および上岩橋層中のラビンメント面の高度分布は,本地域の地質構造が西方への単純な同斜構造ではなく,相対的な隆起・沈降域をもつ"ブロック状"を示す.神崎層や上岩橋層の分布,層厚および堆積様式はこの構造に規制される.例えば,上岩橋層基底の大規模埋没谷(河川流路)はこの沈降域に沿い,上岩橋層上部層の層厚はこの沈降域で厚く,隆起域で薄くなる.また,上岩橋層の大型のフォアセット層理の発達する砂層もこの沈降域に分布しており,強制海退の進行とともに沈降域に向かって前進しながら形成したと考えられる.
抄録全体を表示