地球科学
Online ISSN : 2189-7212
Print ISSN : 0366-6611
71 巻, 2 号
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フォト
原著論文
  • 嵯峨山 積, 井島 行夫, 藤原 与志樹, 岡村 聡, 山田 悟郎, 宿田 浩司, 赤松 周平
    2017 年 71 巻 2 号 p. 43-61
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2018/01/14
    ジャーナル オープンアクセス
    石狩平野下の上部更新統~完新統の層序や年代を明らかにするために,札幌市の新川地区のSB-1 とモエレ沼周辺のMB-4,MB-5 およびMB-11,小樽市樽川のISK-1 の5 本のボーリングコアについて火山灰,珪藻,花粉の分析を行った.約113 ka 降灰の洞爺火山灰はSB-1とMB-4 ,MB-5,ISK-1 で,約41 ka 噴出の支笏軽石流堆積物はMB-4,MB-5 およびMB-11 でそれぞれ確認された.分析結果に基づき,沖積層の基底標高やMIS 5e 期堆積物の堆積面を明らかにした.平野下には約120 ka の堆積物(もみじ台層相当層)により形成された堆積面が広がり,その上面をToya が覆う.更に,MIS 5d 期~最終氷期の堆積物が累重し,最終氷期極相期(約30 ~20 ka)以降に堆積した沖積層が石狩低地を形成していると推定される.
特集
原著論文
  • 岡村 聡, 稲葉 充, 足立 佳子, 新城 竜一
    2017 年 71 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2018/01/14
    ジャーナル オープンアクセス
    北部フォッサマグナ周辺の新第三系玄武岩類について,同位体組成と微量元素組成を検討した結果,マグマの起源物質とマントルウェッジの熱構造が漸新世から鮮新世にかけて変化することが明らかとなった.前期中新世玄武岩は,一部の玄武岩(切明玄武岩)を除き,HFS 元素に富み低176 Hf/ 177 Hf 比,低143 Nd/ 144 Nd 比を示すエンリッチした組成からなり,大陸縁辺を構成していた大陸下リソスフェアマントル起源と考えられる.中期中新世~鮮新世玄武岩は,HFS 元素に乏しく高176 Hf/ 177 Hf 比,高143 Nd/ 144 Nd 比を示す枯渇した組成であり,中でも中期中新世玄武岩は,インド洋MORB に類似の最も枯渇した同位体組成を示す.これらの枯渇組成マグマは,背弧海盆である日本海の拡大をもたらしたMORB 様アセノスフェアマントル起源だったらしい.漸新世~前期中新世のエンリッチしたマグマは,湧昇してきたアセノスフェアマントルの加熱によって,リソスフェアマントルが部分溶融して造られたと考えられるが,同時期に活動した枯渇組成の切明玄武岩の存在は,北部フォッサマグナにおいて,中絶リフト軸部に沿ってアセノスフェアの部分溶融メルトが生じたことを示す.各時代の玄武岩質火山岩類の化学組成は,異なるマントル物質の部分溶融に加え,スラブ堆積物の脱水作用や部分溶融メルトの影響を受けている.漸新世~中期中新世玄武岩類は,スラブ堆積物の高温部分溶融メルトの汚染を受けており,後期中新世~鮮新世玄武岩類は,ジルコンを残存固相とする低温部分溶融メルトによって汚染されたことを示唆する.
  • 川野 良信
    2017 年 71 巻 2 号 p. 75-86
    発行日: 2017/04/25
    公開日: 2018/01/14
    ジャーナル オープンアクセス
    北部フォッサマグナには新第三紀に活動した深成岩類が広く分布している.これら深成岩類には,南西部の美ヶ原-霧ヶ峰地域から,須坂-上田地域を経て,巻機-谷川地域にかけて帯状に配列し,南西部から北東部へ向かうに連れ活動時期が若くなる傾向が認められる.深成岩類は主としてトーナル岩や花崗閃緑岩からなり,部分的に花崗岩を伴う.美ヶ原-霧ヶ峰地域の深成岩類は,巻機-谷川地域のそれらよりも高いSr,Nb,ΣLREE/ ΣHREE,La N /Yb N を示し,須坂-上田地域の岩石は両方の性質をもっている.このことから部分溶融程度は美ヶ原-霧ヶ峰地域で小さく,巻機-谷川地域で相対的に大きかったと推定される.また,Sr 同位体比初生値はSn 含有量と正の相関を示し,起源マグマが地殻物質と反応したことを示唆している.εSrI –εNdI 図では,美ヶ原-霧ヶ峰・須坂-上田両地域の深成岩類は伊豆弧火山岩類とハンレイ岩質捕獲岩との間の領域を占め,巻機-谷川地域の岩石は大陸地殻物質と反応した,あるいは下部地殻物質を起源とする東北日本の新第三紀火山岩類と同じ変化傾向を示した.これらの結果から,伊豆弧火山岩類を形成した起源マグマが主としてハンレイ岩質岩, あるいはハンレイ岩質岩由来のマグマの影響を被って美ヶ原-霧ヶ峰・須坂-上田両地域の深成岩類を,それが大陸地殻あるいは下部地殻物質の影響を被って巻機-谷川地域の深成岩類をそれぞれ形成したと考えられる.
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