地球科学
Online ISSN : 2189-7212
Print ISSN : 0366-6611
71 巻, 4 号
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総説
  • ―複雑系科学としての地質学 その4―
    志岐 常正
    原稿種別: 総説
    2017 年 71 巻 4 号 p. 157-166
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル オープンアクセス

    流体,つまり水や大気にしばしばカオスが発生する.固態の物質や地殻さえも,ある種の流動性を持つ.この性質は,とくに非常に長い時間において顕著である.カオスは人間社会にも現れる.自然と社会のカオスの複合効果は極めて複雑である.自然における“法則”には二つの種類がある.一つは証明を要しない“原理(公理)”,もう一つはこれから導かれる“法則”である.他方,‘科学的’作業に用いられるある種の“法則”は,実際には 散らばりをもつ分布の示す“一般的傾向”である.これについては,カオス発生の可能性も無視されてはならない.しかし,自然現象に見られる一般的傾向が,地球科学や社会科学で,しばしば決定的法則であるかのように扱われている.活断層の長さと地震動の強さとの相関関係が,安易に原発周辺の地震動の予測に適用されてきたことなどその典型例である.見かけの回帰直線が,データの散らばりの地質的要因の検討なしに用いられてきたのが実情であった.

原著論文
  • ―紀伊半島四万十累帯の研究(その16)―
    紀州四万十帯団体研究グループ丹生ノ川礫岩層班
    原稿種別: 研究論文
    2017 年 71 巻 4 号 p. 167-184
    発行日: 2017/10/25
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル オープンアクセス

    “丹生ノ川層”は紀伊半島の四万十累帯白亜系日高川帯の最南部に分布し,かつて「日高川層群丹生ノ川累層」と呼ばれ,放散虫化石からその年代はカンパニアン後期とされた.しかし,その後,南に隣接して分布する古第三系音無川層群と,その層序,砕屑岩組成,地質構造が類似することから,本層は古第三系音無川層群に帰属し,白亜紀を示す放散虫化石を産する岩体は断層により挟みこまれた竜神層のレンズ状岩体と解釈された.しかし,それを裏付ける時代の確証に欠けていた.今回,“丹生ノ川層”最上部の礫岩に含まれる泥岩礫より,初めて暁新世の放散虫化石が発見され,本層の一部が,白亜系ではなくて,古第三紀暁新世以降の堆積物であることが明らかになった.また,この礫岩中の礫には陸上浸食に由来するもの,海底谷での古い付加体からの浸食によるもの,さらに海溝の海底扇状地における同時浸食礫,の3 種の礫が存在することが明らかとなった.

地学者列伝
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